薄味。絵は綺麗だし、ヒロインは皆真面目で良い娘だし、声は強いし、テキストは生真面目だし、物語はやるべきことはちゃんとやっていると思うのです。でも響いてこない。おそらく足りなかったのはあざとさやわざとらしさ、そして熱量。
とにかく淡白。
シュールフェスト、クヴァルテットに向けて頑張っているのは分かるのですが
何が何でもクヴァルテットに選ばれてやる!という気迫。
絶対にシュールフェストで野外フェスを開催してやる!という情熱。
そういったものがイマイチ伝わってきませんでした。
例えば千夏は自分の√では不祥事でメンバーから外されますが
あれ、身から出た錆とは言え、理不尽さを多分に含む出来事と裁定だったと思うのですが
千夏はその裁定をわりとすんなり受け入れて裏方に回ってしまいます。
(ついでに主人公も女装までして追い求めた夢をたいした葛藤も見せず諦めます)
他の娘たちも学園側の決定に対してろくすっぽ反対も反発もせずに
あっさりメンバー組み直して再出発。
あれ?クヴァルテットってそんなもの?
そこに選ばれるために、血のにじむような努力をして
ライバルを押しのけてでも上がりたい舞台じゃないの?
夢だの憧れだの目標だのと言う言葉が聞こえてくる割に
それへの執着心、石にかじりついてでも選ばれてやる
というような強い意志は、ついぞ感じることが出来ませんでした。
で、それを目指している娘たちから、その程度の熱量しか感じ取れない舞台が
物語のクライマックスとして用意されているのです。
いや、それは盛り上がらないでしょう。
上に書いたような感情の動きや行動は
言ってしまえば『熱血青春モノ』のそれです。
そんなノリは、お嬢様揃いのこのリーリエ女学園には似合わないのかもしれません。
(小梅ちゃん「ドンとこいです!」)
でもその雰囲気を大切にするあまり
肝心の物語が全く盛り上がらないのではやはり困りもの。
多少わざとらしくても、お嬢様が感情を爆発させるようなシーンを見てみたかった。
真面目な良い娘であることから逸脱することのできないヒロインたちが織り成す物語は
その真面目さ故に面白みに欠けるという、何とも残念な読み応えになってしまったのでした。
さらにこの淡白さは、恋愛方面の描写でも発揮されていて。
あなたたちはいったいいつの間に
目の前の教師が女装変態野郎でも許してしまえるほど彼に惚れていたんですかねぇ。
特に瑞穂・千夏・琴音の三人。
男バレの後、責めるどころむしろ攻めてくる展開になってビックリし(むしろ笑っ)てしまいました。
(特に琴音ちゃんの「チャンスだ、わたし」とその時のあの表情は忘れない)
これに関しても
彼女たちの感情の機微は実はある程度表現されてはいるのですが
そこに熱がこもっている感じ(必死さ)が無いので、伝わってこないのですよ。
主人公は主人公で
窮地に陥って、動揺したまま色仕掛けに惑わされて
保身も兼ねつつなし崩し的に関係持っちゃって後戻りできなくなったようにしか見えないのです。
(文字にしてみると想像以上に下衆いなコレ)
物語同様、描写自体は一応あるのです。(感情の動きも行動も描かれてはいる)
でもそこにプレイヤー(というかワタクシ?)が感情移入が出来るような情熱を感じない。
淡白。
この作品の欠点は、ひとえにこれに尽きるような気がします。
♪♯♭ 蛇足 ♭♯♪
・ただし、一人だけ成功している娘がいます。
美亜です。
メンバーの中で最も感情の起伏が激しくて、その表現力も強い女の子。
主人公をライバル視して向かっていく姿
相手の凄さを認めつつ、それでも諦めずにメンバーに選ばれようと奮闘するその姿勢
蘭の離脱で戦わずして負けそうになった時の悲しみや落ち込み
クヴァルテットに対する執着心を最も感じる娘で、最も共感できる娘でもありました。
そして恋愛方面でもこの娘は強い。
恋心を自覚した後に男バレが来るのですが
その後、頭を抱えてひとり煩悶する彼女の葛藤と
その葛藤の末に出した結論と言うのは、他に無いくらい納得が出来るもので。
あざと可愛い系のツンデレですが、これくらいやっちゃっていいんですよ。
あざとく、可愛く、分かりやすく。他ヒロインから一歩抜けたキャラクター性だったと思います。
・Hシーンのあのカメラワークは大NG!
女の子の見たい部分はワタクシが決めます制作側が決めないでください。
だってアップにしないでも表情は見えるし
キスしたかったらこちらで勝手にするし(ん?)
体をなめるように眺めたかったらこっちで勝手に視線移動してなめまわしますて(んん?)
完全に余計な演出です。
しかもアップになっている間に画面外で差分が進んでしまって全体を見られなかった差分がある(ギャラリーで確認)んですが
いったいどういう判断でそんなことをしたのか問いただしたいくらいです。
(使ってるのにプレイヤーに見せないって、何だそれ。当然この差分も絵師さんに金払ってるだろうに、これじゃ無駄よね)
・絵が綺麗と書きましたが、その綺麗な立ち絵を巨乳で台無しにしかけてますな。
細く、繊細な綺麗さなのに、ボンと胸の部分だけ不自然に出っ張って全体のバランス崩してるんだから。
巨乳信仰に染まる業界に合わせなきゃいかんのもある程度は理解しますが
せめて自分トコの絵に巨乳が似合うかどうかくらい考えて作るべきだと思うのです。
もっとも沙耶香の大きさで普乳扱いされて弄られている時点で目盛りそのものが狂ってるので
いまさら言っても詮無いことかもしれませんが。
・テキスト枠が消え切らないこの仕様は過去作もそうでしたが
上記二つの要素も含め、何故このブランドは自分たちの最大の長所であるはずの『綺麗な絵』を大切にしないのか。
この絵をプレイヤーにしっかり魅せることこそが、もっとも心血を注ぐべき点であるはずなのに隠してどうする。
気付いてないのか?センスの問題なのか?
ホント、分かりません。
・声が強いとも書きましたが、良かったかというと、、、、、、(上手い方ばかりのはずなのに!)
特に秋野花さんはいったいどうした??
この方は、どんなキャラを演じても隠し切れない声の愛嬌こそが、最大の武器で
『癖のあるロリ』を、その愛嬌で包み込んでしまうのが得意(夕桜しかりレンちゃんしかり)な方だと
今でも勝手に勝手に思っているのですが
今回の演技は、そのせっかくの愛嬌を表に出さないように注意しながら演じていらっしゃるような感じがして。
確かに沙耶香は愛嬌系のキャラでは無いですが
最大の長所を押し隠したような演技を、もったいなく感じてしまいました。
そういう指示があったのかしらん。
・ついでに月野きいろさんも、あのキャラにあの声は甲高過ぎではなかろうか。
時々声が低く出る時があったりしてその時に、ああこれくらいがいいのに、とか呟いておりました。
演技の引き出しの多い方だから、オーダーすればやってくださると思うので
おそらく制作側からのああいうオーダーだったのではと推測しますが、うーん。
(やはりセンスか?センスなのか??)
・で、そういう些末な勘繰りをものともしないのが、小倉結衣ボイス。
どんなキャラを演じようと、小倉結衣は小倉結衣でしかない、と言わんばかりの強い声正面突破。
そしてそれでもちゃんと可愛くなる。
今更ながら、恐れ入りました。