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cyokin10wさんの乙女が奏でる恋のアリアの長文感想

ユーザー
cyokin10w
ゲーム
乙女が奏でる恋のアリア
ブランド
ensemble
得点
68
参照数
366

一言コメント

キレイ系の絵と真面目な文章で構成された女装モノ。足りなかったのはあざとい可愛さと日常場面の面白さ。全体的にもう少し1つの場面や1人のヒロインを深く掘り下げる描写が欲しかったように思います。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想




キレイな絵と真面目で比較的読みやすい文章は確かに武器だと思うのです。

でも結果としてこの娘可愛い!と思える程のヒロインはいませんでしたし
この中に混じりたい!と思えるような楽しそうな日常も有りませんでした。

そうなった要因としましてはおそらく
かなり短めな共通√と、ボケ役もツッコミ役も不在のキャラクター構成。


共通√では
ボーイミーツガール→ヒロイン紹介→各ヒロインイベント発生→皆でワイワイ
といった感じに萌えゲのテンプレの流れは一応抑えてはいるのですが、そのどれもが薄味。
しかも1回なぞり終わったらもう怒濤の選択肢攻勢で個別√へ。

これではヒロインへの理解は深まりません。

加えて描かれるその一連の日常シーンのほとんどが退屈。

『気高さと高潔さを尊ぶお嬢様学園』という設定は
キャラクター達が羽目を外すことを許さなかったようです。

従って描かれるのは

アリアへ向かって一生懸命頑張るヒロイン達の
真面目一辺倒の長所と短所

女の子同士でお出かけしても
普通にお買い物して普通にご飯食べて帰ってくるだけ。
しかも実際に買っているシーンや食べているシーンはほぼ描かれません(当然CGも無し)

要はやるべきテンプレを意識してはいるのだけれど
本当にその表面をなぞるだけで一向に場面が盛り上がっていかないのです。

ダイジェストのような日常を見せられても、その日常を楽しそうとは思えませんし
キャラの個性も掘り下げらず、ヒロインに愛着が湧くこともありません。

そしてこれは個別√も同じような感じで

ヒロインの個性を表現しようとはしているのだけれど
この娘はこういう娘ですよ、という表面だけの紹介にとどまっていて
その個性が全く深まっていかない。

一応、個別√で発生する(ささやかな)問題に関わるような部分に関しては、それなりの描写が成されるのですが
そこまでの描写が弱いので、悩むヒロイン達にイマイチ感情移入が出来ません。


結果として最後の最後まで、主人公とヒロインの織り成す物語を他人事のように眺めていただけ。

そんな終始蚊帳の外な読後感を味わう作品となってしまいました。




















♪#♭ 蛇足 ♭♯♪



・初めに書いた通り絵はキレイ(上手いとは言わない)ですし
 最低限やるべきことはやっているので、なんとなく読み進めることは案外出来ます。

 しかも全ての個別√でクライマックスになるアリアは、これが意外と面白い。

 特にワタクシは美琴√のアリアの試合展開が好きでして
 まさか牽制の弓矢を放ったことりちゃんがその後すぐその場を離れているとは……
 二本目の矢がなかなか飛んでこないなぁとか思っていたらあのアナウンスですよ。

 綾香共々すっかり騙されてしまいました。



・テキスト枠を一番透明に設定しても枠の装飾が消えないのはマイナスポイント。

 キレイな絵を売りにしている以上
 その絵を隠してしまうような仕様は避けるべきです。



・主人公は歌姫役ということでしょっちゅう歌うわけですがその中の

 『おとぎの国はあなたのもの』 

 は Vocal.月野きいろでビックリ。
 こういう歌を歌える方だから選ばれたのでしょうか。



・その月野きいろさんとは今年は縁がありまして
 汐お姉ちゃん(@ましまろ)咲さん(@メイラバ)に続いての演技拝聴となりました。

 どちたかというと落ち着いた低音の響きが強い方という印象ですが、まあ今回は男性役ということで。
 男性としてHシーンを演じるのってどんな感覚なんでしょう(セクハラ気味?)



・そのHシーン

 これまたキレイキレイし過ぎている印象。
 雰囲気重視の初Hシーンなんかには合いそうな気もするのですが
 特に文章が淡泊でサラッとし過ぎていて、結局盛り上がらない感じでした。

 卑語も一切無しですし、作風に合わせたと言ってしまえばそれまでですが
 上品なお嬢様が相手だからこそ、そのお嬢様が濃く乱れるのをもう少し見たかった気がします。



・あ、でもことりちゃんの初Hシーンは性癖ドストライクだったので高く評価(自己紹介参照)

 自分は全ヒロインの初Hシーンがこんな感じであってほしいのですが
 さすがにそれは難しいだろうなー(自己完結)



・さてそのことりちゃんですが、中の人のズルさ(ぇ)もあって作中唯一あざとい可愛さを振りまいていました。

 ぐるぐる目でパニクる
 スカートをチョンとつまんでくる
 桐谷華ボイスで甘えたように拗ねる

 そして最後にはキチンと成長して主人公を送り出す。

 締めのCGへの持っていきかたも綺麗に決まっていますし
 一番お気に入りの√、ヒロインとなりました。



・おっとそういえばもう一人お気に入りのヒロインがいました。

 その名もツカーサちゃん。

 作中他には居ないフワフワ系美少女で
 楓√で颯爽と現れてワタクシを魅了しておきながら、すぐに居なくなってしまいました。

 彼女の√に入るための選択肢はどこですか?



・絵がキレイで好みなんだけど、女装ゲーには興味が無いし、エロスケの評価は低いことが多いし……
 
 てな感じで敬遠していたensemble作品初プレイと相成りましたが、正直次を買ってみようかは迷う出来。
 
 ただやっぱり本作以前も以降もヒロインは好みの容姿している娘が多いですし
 「ルックスが好みの女の子とラブラブHがしたい!」という欲望丸出しの本能に従えば迷わず買いなのですが。

 というか好みのヒロインが多い作品ほど評価が低いのはどんな罠なんだろう、、、、、、、、、、、、