他者(世間)の評価と自己評価の乖離に苦しむ少女達が、主人公や周りの友人達の助けを得て成長していく物語……なのですが、昨今の「萌ゲ(に限らずエロゲ全体?)にシリアス要素は不要」という風潮に押されてか、どうにも掘り下げ不足の物足りないキャラクターが織り成す、物足りないお話になってしまいました。好みの問題ではありますが、もう少し踏み込んだ描写や展開が欲しかったかなと思います。
演者の私と本当の私は違うと言い、普段の自分に役者『十川真優』のイメージを押し付けられることを恐れている真優
すでにプロとして食っていけるくらいに評価されているにも関わらず、自分には才能が無いと嘆く千奈
本音はもっと色んなことをやってみたいと思っているのに、病気で迷惑をかけるからと諦めてしまう百花
自分が求められている役割。その枠内に望んで収まろうとするアリス
共通√で示される各ヒロインの抱えた問題はベタではありますが興味深いもので
個別√でどう解決していくのか楽しみになるようなものばかりでした。
で、実際その問題に向き合って解決していくお話が展開されていくのですが……
すごく淡々、粛々と話が進んでいってしまい盛り上がることがほとんどありません。
しかも、個別√の最初から最後まで全てを一つの悩みの解決に費やすので、お話がなかなか進まず。
おんなじことをダラダラダラダラと、ちょっとシチュエーションを変えるだけで繰り返していきます。
こんな日常に浸りたいと思えるような日常描写もない
もっとヒロインを追い詰めて(ぇ)掘り下げるようなこともない
話の転換点になるような劇的な展開もない
設定された枠内からはみ出すことなく無難に動き続けるキャラクター達と
起承転結ならぬ起承承結という感じで進んでいく物語は
見事なまでに睡眠導入剤として機能しました。
何でしょうこの中途半端な感じ。
せっかくガッツリ描いてやるぞ!言わんばかりに問題を提示したのに
もっと踏み込めばもっと深いお話を紡げた雰囲気があるのに
そのはるか手前で立ち止まって、用意した筋をなぞるだけで終わらせてしまったように見える、この感じ。
特に真優なんかはとても癖が強いキャラで、社会的な影響力も強くて
あんなに平和な展開でラストに辿り着くようなシンプルな人物じゃないと思うのですよ。
一見、一悟一悟言ってるだけの視野の狭いダメ人間ですが
彼女にはちゃんと他の事も見えていました。
別段演劇を好きなわけではない自分が、演劇に人生賭けてるような人たちを踏み台にしてきたことを
しっかりと自覚しているんです。
そんな彼女が、一悟がいれば大丈夫♪だけで演劇に復帰できるとは到底思えません。
もう一度真摯に演劇と向き合い直して
もっともっと(一悟と共にでいいから)自分が演劇をやることの意味を考えて
その上での復帰でなければいけなかったはずですし
(実際、本格的な復帰に5年かけているという事実を見る限り、彼女はその過程をキチンと踏んだものと考えられます)
その上でのあのエピローグだったはずです。
なのに、描かれない。
もう、意図的に忌避され、省略されたようにしか見えません。
何故そうなったのか。
おそらくは一言感想に書いた昨今の風潮が原因なのでしょう。
そこで労力をかけて踏み込んで、人を選ぶようなシリアス展開にしてしまっても
そんなものには「需要が無いだろう」という制作者側の諦念(言い訳?)。
そういったものを、この作品のお話からは感じてしまいました。
……「誰得シリアス」「萌えゲーにそんなものは求めていない」「キャラにブヒれてエロければそれで良し」
こんな声の渦巻く中で、キャラクターを私達と同じように悩み、苦しむ一人の『人物』として描くのはとても難しい事のように思われます。
ですが、本当に萌えられるキャラというのは
『記号の集積とその表現』だけでは収まらない、人間臭さを感じさせる『人物』としての魅力を持っているものではないでしょうか。
で、その人物としての魅力を輝かせる手段として
魅力的な日常描写なり
グッと引き込まれるようなお話なりがある。
そしてそれがあればこそ、そのヒロインに感情移入が出来て、好きになって、好きな女の子と恋人になって、Hな事をしたいと思う。
二次元キャラクターに萌える(あるいは惚れる)って、そういうことではないでしょうか。
……何だかこの作品の内容云々からかけ離れてきてしまったような気がしますが
この作品をプレイしていた時に
カントクさんがこんなに可愛い絵を描いてくださってるのに
声優さんがこんなに甘い声を聴かせてくださってるのに
その絵・その声で、Hシーンも他の作品よりかなり頑張ってくださってるのに
何で自分は萌えてないんだろう
何で自分は興奮していないんだろう
などと、かなりアイタタタな自問自答に囚われてしまったので
このタイミングで、とりとめもないような形ででも、自分の中の解答を残しておこうとか思っちゃった次第です。
どうかご容赦を。
絵も音楽も悪くなく、システムも色々出来ていい感じ。
プレイヤーに過度なストレスを与えず、適度に萌えられることを目指す。
『恋する彼女の不器用な舞台』は
実に今の『萌えエロゲ』を象徴するような内容の作品だったと思います。
+++蛇足+++
・……うわ、読み直したら途中から自分の恋愛観(一応二次元限定)の暴露みたいになっていてものすごく恥ずかしい……(でも消さない)
最近のエロゲは心底惚れさせてくれる女の子が減ったよな~、などという老害のたわ言の具現化な上に
量産型萌えヒロインにブヒブヒ言っている未来の自分が苦も無く思い描けてしまう程度の覚悟で書いたものなので
生温かい目で見守っていただければ幸いです…………
・カントクさんの絵は『your diary』の時にも思ったのですが
ご本人のサイトにある絵や同人用の絵、ラノベ絵の方が魅力的な気がします。
今回も、横顔が少し崩れている感じだったり、立ち絵で妙に目つきの悪い表情が目立ってどうもイマイチ……
いや、結局カントクさん好きなのは何も変わらないんですけどね。
・Hシーンは各ヒロインの初Hのみ、いただけない内容・展開でしたが、他は概ね良好。
回数も多いですしシチュエーションも豊富(そういえば屋外がなかったか?)。
射精カウントダウン機能やBGVも搭載。
さらには回想モードも、一つのシーンで体勢(体位)を変えたりしたら、そこからも始められるという優れもの。
お気に入りのキャラがいれば、何回でも使用に耐えそうです。
・Hシーンだけでなくコンフィグ関係は優秀ですねー。使いやすい。
特にバックログからのジャンプや、イベントシーンのカメラワークの有効・無効はかなり重宝しました。
他の作品でも、セーブしたちょっと前のシーンから見たくなる事ってよくありますし
広い視界を保っておきたい時にカメラがアップになっていたりしてもどかしい!なんてこともこの機能が解決してくれました。
是非他のブランドさんにも、デフォルトで搭載していただきたい機能です。
・風鈴堂出てきてましたね。
他にもCUBEの過去作に出てくる場所がチラホラ。
同じ世界、同じ(近くの)町ということでよろしいでしょうか。
してみると榎本先生ってやはり榎本香穂(@『your diary』)の姉か何かでしょうか。
・キャラソンも聴きましたが真優の歌、音痴じゃないじゃないですか(笑)
あと、案外綺麗に歌い上げる百花ちゃん。
作品内で綺麗な声だー綺麗な声だーと絶賛されていたのに、ピンときてなかったのですが、ここでちょっと持ち直しました。
・真優は容姿・声ともにストライクで共通√時点では嫁候補だったのですが、伸びず。
中の方、好きな声質なので今後に期待しております。
・おっぱいが素晴らしい!(この感想内で最も大事な部分)
下から、貧乳(ペタンコではない)・普通(やや小さめ)・普通(やや大きめ)・巨乳(奇乳にあらず)とこのバランスの良さ。
さらに形の美しさ。
最近流行の、女の子の胸板におっぱいの絵を描いたゴムまりを張り付けたような、着脱可能にすら見える丸いおっぱいではなく
なだらかな流線型を保った、ごく自然な形の美乳。
美少女のおっぱいはこうでなくては(力説)