ダ・カーポシリーズとは思えない程よくまとまった優等生的な作品。しかし無印とⅡにあった拙いけれども強烈な印象を残すようなパワー。そういったものが薄れてしまっており、プレイし終わって少し淋しさを感じてしまいました。自分は無印(の音夢)に陥落してエロゲ世界に浸ることになった人間なので、得点は客観性を欠くかもしれません。
始めた当初強く感じたのは
あ ざ と い
ということでした。
ヒロイン達がちょっぴり(?)Hなイベントを順繰りに繰り出してくるその様はまさにテンプレ萌えゲーべったべた。
これぞD.C.
これぞ萌えゲーのあるべき姿(笑)
テンプレと書きましたが、ここまであざとく開き直ったかの如く萌えHシチュエーションを連発してくる萌えゲーは
昨今珍しいのではないでしょうか?
正直途中からHなハプニングが起こる度に、萌えるより笑っていたような気もしますが
桜吹雪の舞う中、可愛い女の子たちとイチャイチャしながら過ごす風見学園での生活がとても懐かしく
ちょっとばかし感傷に浸りながらプレイしておりました。
ところがここからが予想外。
えらく美人になったさくらが出てきたと思ったら
まさかの過去編。
まさかの魔法学校編。
もちろん過去編があることはHPを見て分かっていましたが
あくまでも現代編をメインにして、そこに過去がちょこちょこと関わってくるくらいの感じだろうと考えていました。
だから、過去編メインで展開していく流れには正直かなり面食らいました。
しかも雰囲気もガラリと変わります。
ライトで能天気なキャラ萌えの世界から
意外と深刻な事件や出来事が頻発し、その解決に奔走する(萌えゲーの範疇でですが)シナリオ重視の世界へ。
いや思い切ったなと。
ダ・カーポシリーズの人気の要因はやはり
・『萌え要素が優秀』
・『キャラクターが魅力的』
ということで、それがまず始めにあって、その上でちょっぴり切なかったりちょっぴり泣けたりするお話が展開される。
そのあたりのさじ加減というか、バランスの絶妙さが作品をより良いものにしていたと思うのです。
しかしⅢの過去編は、明らかに萌え要素は控えめにされています。
現代編のあざとさと比べればその差は歴然。
無印やⅡで評価されてきた長所を捨て去ったとまではいいませんが、重視する部分の比重を変えてきた。
ファンの支持に支えられているシリーズものでこういう変更をするのは勇気のいることだったのではないでしょうか。
さてそれではその結果作品の出来はどうなったかですが
よくまとまっているけど、こじんまりとしてしまったな、というのがワタクシの感想です。
本当に、お話はしっかりまとまっていてスキがない印象です。
所々に無印やⅡへと繋がっていく設定や小ネタをちりばめながらも
シリーズを盛り上げたり結びつけたりする為だけに使われてしまう、踏み台のようなシナリオになることなく
きちんとⅢのヒロイン達個々のお話として成立していて、しかも終盤には意外な展開も用意されていたりする。
おかげで途中で飽きることもなく、最後まで興味深く読むことができました。
しかし、ではこの作品が素晴らしい出来栄えだったのかと問われると…………首をかしげざるをえません。
それなり以上に良いお話が揃っているにも関わらず、終わってみるとどこか物足りない感じが残りました。
ないんです。強く印象に残っているようなシーンが。
いないんです。これだというほど気に入ったキャラクターが。
無印とⅡは、正直かなり粗のあるお話も混じっていました。
しかしそれでも一つの話が終わった時、心に残っているものはⅢより多かった気がします。
無印とⅡをプレイしたのは六年以上前ですが、心揺さぶられる感覚と共に覚えているシーンの多い事。
桜の花びらが敷き詰められたようになっているベッドの上で微笑む○○とか
枯れない桜の木の下で、魔法が解けて元の姿に戻ってしまった○△とか
夕暮れの、同じく桜の木の下で緊張した顔で告白してくる△□とか
クリスマスに降り出した雪にはしゃいで、庭へ出て空へと手をかざす□○とか
音夢や音姉は未だに『俺の嫁』です。
CGや音楽そのものの素晴らしさに加え、それを使うタイミングの良さ。
重要なシーンから何気ない日常まで、こちらの心に刻み付ける話の持っていきかたと演出との巧みさ。
ヒロインはもちろん、脇の男キャラまで魅力的にみせるキャラクターの創り方の上手さ。
自分はこういう部分をまとめて、魅せ方がうまい、という言い方で表現しているのですが
その魅せ方のうまさが、前二作には確かにありました。(回顧厨乙と言わば言え)
しかしこのⅢではその部分が薄れてしまっていました。
音楽もCGも、単品では良いのですが、お話とリンクして心に残っているようなものがありませんし
お話は無駄なく進む感じなのですが、山場まで淡々と流れていってしまってイマイチ心に残らない。
キャラクターもいい意味でも悪い意味でもいい子ちゃんばかりで、大騒ぎが出来ない感じ。
特にキャラの弱さに関しては、桜風のアルティメットバトルでⅡのキャラクター達が登場して
短いシナリオの中でドタバタと大暴れしてキャラの濃さを見せつけたことで、露骨に差を感じてしまいました。
Ⅲはとても優等生的な作品だと思います。
無印やⅡよりも出来がいい!と仰る方がいても何ら不思議はありません。
ですが、ワタクシにとっては前二作に比べるとパワー不足な、ちょっぴり物足りなさの残る作品でした。
☆★☆蛇足☆★☆
・もっとさくらに力をいれようよ!(切実)
帰ってきてからがあっさりしすぎだよっ!
『桜風のアルティメットバトル』は最大限感動方面でもっていけるとっても美味しいお話になれたはずなのに。
いや嬉しかったですよ、Ⅱは大好きなのでⅡのキャタクター達がⅡの雰囲気の中無茶苦茶やってくれるのは。
でもね、ここでやることないじゃない。
義之がさくらを「母さん」と呼んだ√の続きでしょう?
義之の背中にさくらが「愛してるよ」と語りかけた√の続きでしょう??
てゆーか純一どこ行った!?
何だかねー。この部分を筆頭にイマイチ力の入れ場所、入れ方を間違っている作品ですよねー。
・ワタクシが攻略したいのは森園立夏であってリッカ・グリーンウッドじゃない。
同じく、瑠川さらであってサラ・クリサリスではない。
すっかり攻略する気になっていた娘たちを攻略できず、そっくりさんを攻略させられてしまった。
こういう風に思った方は他にいらっしゃらないのでしょうか?
・音夢好きのサガとして、姫乃目当てだったのですが、終わってみれば葵ちゃんとサラかなぁ。
何?ロリ○ン?
・散々な扱いを受けた挙句、攻略もできない美琴。
ついにここまで堕ちたか白河一族。
ことりの栄光も今は昔となってしまいました。
・ラニーニャ・ライナ(頼奈)とジル・ハサウェイの声、桐谷華さんですよね?
クレジットでは違う名前が出てきましたが……裏で別名義って持ってましたっけ?この方。
・唐突に『みんなのゴルフ』と化したグニルックの表現方法に吹いた人挙手。
・画質はねぇ……さすがに許容範囲外でしょう。バグかと思ってパッチ探しちゃいましたよ。
全体的にユーザビリティの足りない本作ですが、きちんとプレイする人の事を考えたのでしょうか。
・なんだか思った以上に悪口ばかりになってしまいましたが、基本好きなんですよこの作品。……………………ホントだよ?
・初音島に咲き誇る枯れない桜。
純一や義之の使う和菓子の魔法。
夢見の魔法の元々の使い方。
大切な人と心を繋ぐ魔法。
etc etc ……
それぞれの原点や、それに込められた想い。
こうしたものが伝わってくるのはいいですね。
前二作を違った見方で眺めることができそうです。