ErogameScape -エロゲー批評空間-

cyokin10wさんのSINCLIENTの長文感想

ユーザー
cyokin10w
ゲーム
SINCLIENT
ブランド
BOOST5
得点
81
参照数
514

一言コメント

B級ハリウッド映画の設定や展開をこれでもかと言うほど詰め込んで、最後まで衒い無く走りきった快作。楽しみ方さえ間違えなければ、必要充分のカタルシスを得られること請け合いです。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

たとえ犯人を追いかけたい主人公の前に必ずバイクが転がっていようと
主人公を追い詰めた敵役が突然語りに入って逆転されようと
コープス……一体どこの汐○凪なんだ……と思おうと

それを理由につまらないとかくだらないとか言ってはいけません。

まぁその都度ツッコミを入れ続けるという楽しみ方もあるかとは思いますが
とにかく、何も考えずに、目の前で起きている事象をありのままに受け入れ
登場人物たちと一緒に泣いて、笑って、右往左往しましょう。

そうするだけでこの作品、かなり面白くなります。

さすがに派手さでは映画に数段劣ってしまいますが
緊迫した雰囲気の作り方や、お約束の魅せ方が本当に上手い(あざといとも言う)ので
こちらに乗っかる気さえあれば、物語に没入という境地まで引っ張っていってくれます。

日本刀を手にしたユリアヌスやガスマスクをしてナイフを構えるコープスのCGはとても格好いいし
声優さんたち(特に男性)の熱演はキャラクターの魅力をより引き出しているし
立て続けに襲い掛かってくる事件の数々は、登場人物たちにもプレイヤーにも息つく暇を与えません

特にハリウッド映画だったら4~5本作れてしまいそうな設定と事件をたった一つの√に詰め込んで
最後まで破綻せずに走り抜けてみせた展開の上手さには、手放しの賞賛を惜しみません。

敵や味方が目まぐるしく入れ替わったり
雫暗殺に女王誘拐に細菌テロ等々を同時進行させたり
一見何とも関係なさそうな単独行動や言葉が後々の展開と繋がっていたり

本当によく、お話が崩壊しなかったなと。



・明らかに仕上がり具合が、男>女になっている人物絵
・おまけでしかなかった舞やシャーロットのHシーン
・そもそも存在しない選択肢

等々、力を入れるべき方面に手抜きというか力不足を感じることがあったりはしましたが
最後までエンタメとして楽しめる、良作だったと思います。










)))蛇足(((

・ミィィィナァァァ!!!(絶叫)

 
・でも生きてるって信じてます。死んだっていう直接の表現ないし。
 物語序盤の、徹に額をくっつけて優しく包み込むシーンで、あまりにも目つきが怪しすぎて(←絵が下手なだけだったようです)
 あっこの娘悪者や!とあっさり決めつけてしまったのですが、案の定でした。
 その後も絶対徹のピンチに現れて身代わりになって死ぬ役や!と思っていたらあの展開で。とことんベタな娘です。
 そんな娘だからこそ、ベタだろうがご都合主義だろが生き残ってますよ、きっと。

・そんなミーナを筆頭に、役に立たないことに定評のある七賢者たち。
 事実上4人が裏切り、1人はファザコンを発症し、1人はただの数合わせ(どれが誰かの答え合わせはいらないですよね)
 BABELの人材の払底っぷりには同情を禁じ得ません。

 
・しかしそのような状態で、唯一の忠臣である沖田を内調へ特攻させるマザーの無能さ加減に弁解の余地はないものと思われます。
 あんたがその程度だから、真面目に働いてくれる部下が少ないんですよ。
 演説も下手っくそだし(有栖川さんのやる気を感じない)人を惹きつける魅力に欠ける人物でした。

・女の子たち……時々目つきが怖いです。要修行。

・<<七つの大罪殺人事件>><<背教者ユリアヌス>><<21グラム>><<薔薇十字会>>ときて<<魔帝>>でついに噴き出したワタクシ。
 よくもまあこんな恥ずかしワードばかり並べ立てたものです。
 でもこのセンス、嫌いじゃないですよ。

・上記のように、ただでさえ芝居がかった語句やセリフが多い中で、一人飛び抜けて厨二していたユリアヌス。
 ですがその口調にはしっかりと理由があったことが最終盤に説明されてビックリ。
 いやーお見事。恐れ入りました。ずっと厨二アヌスとか言っててすんませんでした(土下座)

・この作品最大の萌えキャラはモアiもとい池森玲一で決まりです。
 学生崩れのADAMメンバーにあっさり全滅させられる薔薇十字会の御大将にして主人公のお兄様。
 
 「ブロックワードだ」(ドヤァ)→ドシュッ→「な――」「――がっは……」→死亡

 登場する度に笑いを届けてくださったお兄様の最期に、敬礼!