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cyberkさんの僕はキミだけを見つめる ~I gaze at only you~の長文感想

ユーザー
cyberk
ゲーム
僕はキミだけを見つめる ~I gaze at only you~
ブランド
インレ
得点
98
参照数
325

一言コメント

欠点らしい欠点は見当たらない、非常に良く出来ている完成度の高い作品。もっと評価されるべき

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

「風早永遠のライブ」の成功を目指す中、様々なドラマが生まれる非常に熱い作品。


仲間を失った拓実は復讐のために永遠のボディーガードを務めるものの、永遠たちと触れ合っていく中で徐々に変わっていく。そんな拓実の心境の変化を実に上手く描けていたと思う。
永遠を支える仲間「莉亞、郁乃、美夜、七里、アル」も非常に魅力的であった。
向日葵のような永遠に影響を受けた仲間たちは、ライブの成功に向けて必死にサポートしていく。
永遠をサポートする理由もしっかりと描かれており、各人が「永遠に何を見出しているのか」がきちんと説明されていた。永遠のライブに対する想いがこれでもかと伝わってきた。

だからこそ、ライブを邪魔し、永遠の命を狙う「アーマン」の存在が際立っていたように思う。
アーマンは拓実の仲間を殺した宿敵とも言える相手。拓実はかつての宿敵から永遠を守り、永遠たちがひたむきに目指してきた「ライブの成功」を果たすため、単身アーマンに立ち向かう。これに熱くならないわけがない。
アーマンを退け、諸悪の根源たるマフィアの首領を殺し、永遠を狙う魔の手を断ち切ることに成功した・・・かに思えた矢先、永遠は一人の狂ったファンに襲われてしまう。
美夜が死んでしまったことには驚いた。まさかあんなキモオタに殺されるとは思わなかった・・・。
ただ、この「美夜の死」がアフターストーリーへと続く重要なポイントとなってくる。


アフターストーリーは選択肢を選ぶことで、その後の物語が描かれる方式。
莉亞と郁乃ENDに関しては正直手抜きと言わざるを得ないが、まあ永遠の√が正史だと思うので・・・これは仕方ないかもしれない。
永遠の√に入ると、その後の物語がしっかりと描かれる。
声の出なくなった永遠がどこでそれを取り戻すのか。そのシーンに関しては正直「そのタイミングなのか・・・」と思わなくもなかった。
「美夜の夢を見た拓実が、美夜の気持ちを代弁する」というのも・・・永遠の「美夜に対する自責の念を払拭させるため」の力技に思えた。
振り返ると、この場面はほんの少しだけ残念だった。まあ死人に口なしという言葉もあるので、ファンタジー要素のないこのゲームでは致し方ない解決法だったのかもしれない。

ただ、ラストシーンに関しては文句なし。
仲間が駆けつけてくれるのはやっぱり嬉しいし、校庭に咲き誇るファンの向日葵も、永遠の復活を全力で祝福してくれているようで、莉亞の粋な計らいに胸が熱くなった。
EDに入る流れも自然で、EDラストのみんなの敬礼は素直に最高だった。


山場でふんだんに使われるセンスのあるCGや、非常に細やかな演出の効いた立ち絵の振る舞いも大きな評価点。
特に立ち絵の演出は本当に凝ってるので、この部分は手放しで称賛したい。
総じて非常に完成度の高い、素晴らしい作品だった。


追記:公式サイトからミニシナリオがDLできるので、完走した方には是非こちらもプレイしてもらいたい。内容は後日談と言って差し支えない。