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copponponponさんの蛟の巫女の長文感想

ユーザー
copponponpon
ゲーム
蛟の巫女
ブランド
Liar-soft(ビジネスパートナー)
得点
73
参照数
465

一言コメント

伝奇的設定は良いし、長い間紡がれてきた想いだったり、キャラクターの行動や胸の内を明かす場面に惹かれるところもあった。ただ、戦闘演出が雰囲気を乱しているように感じたり、情緒不安定でクズなキャラに笑ってしまったり、あまり没入できなかったのがすごく悔しい。シュールギャグのように感じてしまった。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

殴り書き。


現代の関係性がやっぱり好きで、次点で昭和。平安は妙なコミカルさが受け入れ難かった。
現代組というか、まあ一番はシンプルに志津香の快活な性格が可愛くて惹かれた。何故そう振る舞うかの背景も好きだ。美純の強かさもまた後半になるに連れどんどんはまってきたし、それは梨子もそう。特に梨子は序盤で縁を切られて以降フェードアウトしていたので、こんなに好きになるとは思わなかった。

昭和組に関しては、やはり妹が大好きで外に出してやりたい一心な錦戸宗に惹かれた。他のことは受け身一辺倒、しかし、透のことは慣れないことをしてでもなんとかしてやりたい。少なくともそんな人だと、自分は解釈した。もしかしたら本心は別の思惑があるかもしれない。そんな不明瞭さまで彼の魅力に思えた。
宗の出番は極端に少なかったが、要所要所で透を想って溢す言葉が堪らないんだ。

平安組……なんであんなチャラいんだよ……これが現代人向け伝奇なのか。伝奇モノにはあまり触れていないのでアレだが、コレジャナイ感がすごい。
もっと古き良き日本での奇妙な伝承に触れられるものと期待していたため、衣装ばかりを和風にしたように感じられるライトな世界観とはミスマッチを起こしてしまった。


冴白にはもうちょっと本気を出してほしかった。美純の密告を受け、我を忘れて志津香に乱暴を働こうとした際は本当に鬱勃起しかけた。処女取られるんじゃないかって心臓バクバクした。お尻に逃げやがった。
初めてを奪われなくて良かったって心底ホッとしたし、アナルセックスは大好きなのでそれはそれで良かったのだけど、もっと本格的に彼女を穢して欲しかった、というモヤモヤは残ってる。一応、美純選択肢のバッドエンドで志津香は冴白に犯され、唇も奪われるが、彼女の自我はそこで空にされるので、後を引く興奮がなかった。
どうせならバッドではない本筋で前の穴も穢されて欲しかったが、その手のことを本格的に求めるならジャンルが違う、とか言われると何も言えない。



アスカの役回りが悉く貧乏くじ引かされているというか。
対象を取り逃がすだとか、攫われるだとか、力不足だとか。情緒不安定な奴にキレられるとか。展開のせいでポンコツ感マシマシだったのはちょっと悲しい。今は人間、しかし腐っても元神霊だ。もっと活躍の場が欲しかったという想い。

「あーもう、なんだって俺の周りにゃ自己完結した暴走超特急みたいな奴しかいねぇんだ!」

この台詞、まさにである。本当に苦労人で振り回されてで同情する。また、現代の人格達を前に今更上書きを躊躇ったり、一番人間らしく好感が持てる人間は誰だったかといえばアスカだった。
本当に親友想いな兄貴分なのだ。伊緒の非道さを目の当たりにするたび、寂しげに悲しげにするのも切ないのだ。……まあ正直、昔話の出し惜しみ方は伊織よろしくイラッとしてしまったが。

梨子との縁も本当に尊くて好き。千年を重ねていなくても想いの強さで劣らない人間がいる、というのがまた良いのだ。彼女自身アスカの因縁を信じはするが、元神霊であろうと今自分の目の前にいるのは幼馴染で好きな男子のアスカでしかないと、彼を必死に繋ぎ止めるその力強さが堪らない。


伊緒が面白すぎる。作品に対して本当によくない楽しみ方だと自覚するが、それでも彼が出てくるとシュールな場面が生まれがちなのだ。千年素質ガチャ回しメンヘラ悪鬼。
最初の生から情緒不安定気味、自覚しているにも関わらず千年変わらない、何なら重症化してアスカ等によくキレ散らかす。妄執の果てに人の精神を逸脱したとかそんなところだとは思うが、もっとわかりやすく精神面でも学ぶことのある千年を過ごしてほしかった。この子供っぽさ、精神的未発達感が姉のようで最愛の人である静珂(と一応アスカ)しか見えていないことの表れと思えば、それはそうなのだが。
不快に思うか笑うか、大体はこの二択になりそうなムーブばかりをかましてくれた。虚ろな目が余計に笑いを誘う。
島へ向かった昭和編、浜辺で透と揉み合うシーンに至るまで、緊張感をあまり感じることができなかった。
これについては正直自分の作品を読む時の心構えというか、そんな問題な気もする。伊緒の執念を茶化してしまった。本当によくない。


戦闘演出。カットインや主人公の掛け声や、噛む引っ掻く貫く切り裂く等のエフェクトのこじんまりとした規模感。その数々がどうにもチープに思えてしまったのが、最も残念。
これなら、戦闘の一枚絵を貼り付けて後は文章で説明する方がまだ良いのではないか、と思えた。所謂サウンドノベル的なものである。あまりごちゃごちゃ演出するより、シンプルな方が古の時代やそれに連なる超常現象を表現する上で"らしい"のではないかと思った。あくまで個人の感想である。


設定と説明をこねくり回してオチに持っていった印象は否めないが、予想していた終わりとはまた違ったものにしてくれたのは、すごく嬉しかった。