本質は擬似的な三角関係にあったと思います。
ensembleさん自体プレイ数はごく僅か、SWEETさんに至っては初めましての体たらくです。
しかしそんなことが幸いしてか、中々楽しめたように思います。女装モノとしてはあまりハマりませんでしたが、擬似的な三角関係モノ、それを乗り越えた先の二人の物語は素直に面白かった。
攻略3人。愛さん→千鶴姉さん→清佳ちゃんの途中下車方式。清佳ちゃんが一等賞、それに愛さん、千鶴姉さんと続く順位が個人的な好みです。
それぞれのキャラについて簡単に。
◯春樹くん=蛍
優柔不断野郎だったものの不思議とそこまで嫌いじゃありません。色々言い訳して清佳ちゃんを騙し続けていたのはまぁギルティ。その嘘に優しさを感じないこともありませんでしたが、その場しのぎに過ぎません。長引かせた分だけ将来、清佳ちゃんを傷つけるかもしれないのに……と考えれば当然主人公への不満は溜まります。けれどもまぁ、一瞬去勢すら覚悟する程に終盤は清佳ちゃんの幸せを考えようとしていたのと、清佳ちゃん自身怒らなかったのとで不問です。
春樹くんの時の声は最初ちょっとムカつきましたが慣れです。蛍の時の声はとっても可愛い。
お屋敷を中心に比較的限られた環境下でしか女装していなかったのもあって、基本的に人格は男のままだったなぁと。イメージするのは常にカッコいい自分。男らしく()あろうと、男の"俺"が清佳ちゃんと結ばれるんだと意識的でした。実際男らしかったかはともかく。
四六時中の女装生活によって心も半ばメスと化すのはお約束なんじゃないかと思いますが、今作ではそんなこともなく。共学だったのも大きいか。
なんとなく思い返すと、"カッコつけ"と"俺"を張り続けて結ばれたのが清佳ちゃん√で、比較的等身大な"僕"の受け入れ先になったのが愛さん√に千鶴姉さん√だったように思います。
◯愛さん
声優さんの演技がいっとう輝いていたのは個人的にこの子だと思いました。着せ替えしようと服を脱がせてくるロリコン女に抵抗する時の壮絶な声がそうですし、その最中で蛍へ助けを求める必死さもそう。春樹への猫被りな甘え声に、毒を吐く際の見下した態度に、冷淡な無表情メイドモード、ちんちんシコシコしてくる時の煽り、怖いからおしっこしてる自分から目を離すなと焦った様子や、デレた時のいじらしさ。感心すること頻りでした。
ルートへの入り方としては、怪談でお手洗い行けなくなった愛さんの付き添いからのお小水チョロチョロ大興奮、迂闊にも股間ムクムク、性別発覚といった流れでの選択肢。
分岐直後のフェラがえっち。愛さんが出す音もそうですし、蛍の喘ぎ声作中トップクラスにかわいいです。精巣を空っぽにすることと女の子らしくいることを同時に強要されて、無意識に「わたし」って言っちゃうの好き。まあ、その後完全にメスと化すことはありませんでしたが。
「俺の──ううん。僕の分も淹れてもらえる?」
好きなセリフです。
このルートは愛さんに愛を教える回。二人ともかなり急拵えで取ってつけように湧いてきた愛情だった気がしますが、愛さんが幸せそうなのでまぁもうそれでいいんだと思います。
メイドとして清佳様に仕える以外の喜び、自由な愛を知った愛さんはより魅力的でした。
ボリュームは、少ない。
◯千鶴姉さん
清佳ちゃんとの待ち合わせ前、蛍姿に着替えた後で改めて姉さんに構うと分岐。姉が自分のことを好きだと知ってしまいます。
清佳ちゃんとのお祭りデートにも集中できなくなり、その後、姉のオナニー遭遇イベント。
「おねえちゃんのつくったふくがせかいでいっちばんかわいいんだって、ぼくがしょーめーしてみせるからっ」
千鶴姉さんが春樹を好きになったのは自分の衣装をひたすらに評価してくれたから。悪意で引き裂かれた衣装を継ぎ接ぎに修繕し、どんなにみすぼらしくたって、嬉しそうに自慢げに、笑顔で着てくれたから。
多分これも清佳ちゃん√で言われるような、性別に囚われない男らしさですかね。
弟じゃなかったら好きになってもおかしくない状況かもしれませんが、弟なんだよな……。
春樹も姉から打ち明けられた好意に対し、自分もきっと好きだったんだと、禁断の想いに蓋をしてきたのかもしれないという具合に応えます(!?)
春樹くんとりあえず自分に性的な刺激をくれる相手、自分を好きだと言ってくれる相手なら誰でもいい説ありますよ。
姉さんも肉親相手にチョロすぎるといえばそうですが、多分この作品の人間皆チョロいので誤差かな。力作の衣装をダメにされて精神的に参っていたのも大きいのでしょう、きっと。
ルートの感想は可もなく不可もなく。本筋ではないですし。
ただ終盤、姉さんのメンタルがよわよわでちょっとゲンナリはしました。コンテスト当日、そこまで来て衣装隠すんじゃねぇよ……。
逃げたくなる気持ちは分からなくもないけれど、自分の為に動いてくれた周囲を蔑ろにしています。それは本当に良くないことで。ましてや社会人で年長者、あと姉です。
春樹くんが予期して衣装を確保しておくという謎フォローが無ければ、物置の奥に仕舞われて詰みでしたし、コンテストは台無しでした。
トラウマ上書き成功!ありがとう……でなんかイイ感じ風に締めることができて本当によかったですね。ゆるせねぇよ……。
Hに関してはアナルがあってよかったです。自慰の際にほじってたからまあ予想はつきましたね、ありがとう。喘ぎ声の濁点助かる。前へ挿れた後に後ろへ挿れるという順番も言うことありません、逆だったらブチギレました。
他で不満があるとすれば、髪を下ろした千鶴姉さんとセックスできなかったことです。全裸に髪を解いた状態で寝ている姉さんを目撃した作品冒頭……波打つロングヘア……大変美しく、心躍らせたものでした。なんでないんや。
ボリュームは、少ない。
◯清佳ちゃん
「──ほ、ほーっ、ホアアーッ!!ホアーッ!!」ってほっちゃんのオタクみたいな声出してるシーンがお気に入り。
目下、春樹くんが最大級の罪悪感を抱かずにはいられない相手であり、長年の恋の相手。本人は蛍が好き。
あまり品は無く、愛さんとしょっちゅう口喧嘩して、時に互いを蹴落とすようなこともします。その実わかり合っている風なのが険悪な雰囲気にし過ぎず塩梅のイイ主従関係です。
自治体にパートナーシップ制度を導入(ゆくゆくは官僚に働きかけ同性婚実現も視野)、遊園地でゲロイン化、学校を買収、屋敷への宿泊の見返りとして姉さんのブランドのパトロン化、祭りで悪どいクジ引き屋台を成敗、射的の屋台は自前、料理の為に大さじ数杯のお酒をわざわざ酒屋へ貰いに行く、エトセトラエトセトラ……と浮世離れした権力者故の奇行が目立つ子でしたが、春樹くん的には多分そこも好きポイントなんでしょう。
√及びこの作品で一番良かった所は、清佳ちゃんが春樹くんを好きになった理由が「蛍だと気づいたから」ではない所でしょうか。
大好きな蛍と印象が重なることはあっても、清佳ちゃんはあくまで自分を手助けしてくれる春樹くん自身を見ていました。
蛍の正体を知った後に春樹くんに懸想したのでは、彼に想いを寄せたというより、蛍を愛していてその付属品として春樹くん"も"好き、くらいなものになってしまうと思うのです。
春樹くんのことも蛍に次ぐくらい気になり始めてしまった。あまつさえ告白まがいのことを行いかけたところで首元の『マーク』に気がついて……なんて、本当に丁度良いタイミングで申し分ないというか。
春樹くんへ告白した後に蛍の正体を知ったとて、結局清佳ちゃんは一度浮気者になってしまうわけで。
蛍が好きなんだと自らに言い聞かせようとしていたからこそのキスマークに『I LOVE蛍』、自然と正体を露呈させる良い手段で、素敵な葛藤だったと思います。
面倒な性分を自覚しますが、これらの順序を大事にしてもらえて心底嬉しかった。
「恋人になれたと言っても、まだまだ僕は彼女に釣り合うような男になれてないから」
「ふて腐れないの。『僕』って呼んじゃってるわよ? 格好付ける気力もなくなっちゃってるの?」
格好付ける春樹くんを清佳ちゃんが尊重している様子だったのも嬉しいです。ああして見え見えの虚勢で男らしさを演出しようとするのも含めて、彼らしさですよね。
女装物としての良さはそこまででした。女子校に潜入する訳でもありませんでしたし。
「清佳ちゃんが言ってくれたんじゃない
わたしにはわたしなりの男らしいところがあるって。大切なのは性別でも、姿形でもなく、心なんだって」
ただ、予てから格好良さや男らしさを求め続けた彼が"わたし"や"俺"に囚われない、彼自身の心根の格好良さ・男らしさ・彼らしさという答えを得た事はやっぱり喜ばしいことで。
幼き日、花冠に込めた約束の上書き。それはきっと花嫁二人にとって結婚指輪にも近しい意味合いがあって。
ブライダルコンテストの出来レース化も正真正銘の優勝で上書きし、
『ゆーびきりげーんまん、うそついたら、はりせーんぼんのーますっ。
ゆーびきったっ!』
今度は永遠の愛を契ります。
審査員チョロいですし、盛大な拍手で何故か笑っちゃいましたが、上記した通り登場人物はチョロい人ばかりなのでこんなものかなと。
最後まで蛍と春樹と清佳の物語でした。
これからも二人が幸せでいられますように。行為シーンは清佳ちゃんと蛍のプレイが正直一番滾りました。逆アナルも、いいですね。