諸々の秘密や正体は容易に推測できるが、それでも読ませる力がある。キャラの役割、抱える仄暗いもの、やはりこのライターさんは似た話型の作品が多く、そのどれもが自分は大好きだ。長文はカタシロです。ライター過去作への言及あり。
お嫁さんお嫁さん言ってくるのに種付けできないので、血涙流しました。アトリはロボだし婚姻等踏み込んだ話題がほぼ無かったからセックスなくても平気だった(むしろ無いから好きだった)けれど、ギンカは無条件に無垢な好意を振り撒いてくるロリだったのでやっぱり本音は18禁化してほしかったよ。ギンカ&銀花の3Pだとか、叶わずとも膨らむ夢がある。とはいえ身の丈に合わない願望なので、カタシロへ込めてお役目様に持ってってもらいます。
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今作の舞台は太平洋に浮かぶひめ島。夏休みに島とくれば割とサマポ◯っぽいけど流石にこじつけだな……で冒頭読んでたらバイク出てきて蝶も出てきて……考えることをやめた。道中や結末がまるごとサマポ◯そっくりだったら流石に怒り狂ってたが、まだまだ共通点がある、の範疇だ。
それから共通点があるといえばATRIの存在だ。そもそもGINKA自体がATRIを強く意識して生み出された作品である、というのはスタッフさんへのインタビュー記事※を見ても明らか。明らかではある。
しかしまあ、水中キスとかATRIでもかなり印象的だったもんだから、流石にそこまで寄せてくるはちょっと違うよなと思ったり。サマポ◯に似ているとは書いたが、夏休みに海辺が近い町で過ごすというのはATRIにも近い。むしろ寄せているならこちらが本命。アスタ氏は海辺で育ったとのことだし、海が大好きで、過去作にも「海」を取り入れているという話も納得だ。納得ではあるんだけれど……モヤモヤはする。
ATRIのような成功を、という願いを込めたら呪いに転じてしまった感、ATRIに縛られてる感。評判良かった過去作を意識するのは分かるし、取るべき戦略だとも思うけど、やり過ぎだったんじゃないかというのが正直なところだ。
流星に付けられた「侵略的外来種」という渾名が好き。改めて、アスタ氏の描く主人公はコミュニティーの外からやって来た人間である場合が多いよなと。主人公が他所から現れたことで周囲に影響をを及ぼし、物語が動き出すのはもはや定番の流れ。傷心系主人公だったり、疎遠系幼馴染だったり、教師辞めて飲んだくれてるお姉さんだったり、氏はキャラを生み出しシナリオを作る上である程度得意な型があるのかもしれない。
流星が商店の2階を借りて業務まで手伝っている姿を見て、みあげての宙見暁斗が思い浮かんだ。思わずにやにや。設定の部分部分で似た『パーツ』が過去作から再利用されている。書く人間が同じだから、どうしても似てしまうだけかもしれないが。
つまりは沢山の「似ている」がある作品だったということ。嬉しい類似、嬉しくない類似、それぞれの良し悪しは本当に様々だった。
不満らしい不満はあと二つ。
一つ、正直鏡の世界が随時都合良く設定を盛られ続けていたように見えて引っかかりポイント。主人公が生き返るまでに見ている夢だったり、みんなの願いの拠り所だったり、それも全部夢で。選択された世界は現実になり、されなかった世界は夢として消えていく。そうした役割全てを持って存在する神様と島なんだろうけど、流石に便利空間が過ぎるかなとは思った。欲張り過ぎて輪郭のはっきりしない不思議ワールド。異界なんだしそんなものかもしれないが、もう少し設定を手堅く固められたんじゃないかと思ったりもする。どうにもふわふわしてる、更に上位の概念で容易に上塗りできてしまいそうな後出しジャンケン。
二つ、NEXTで銀花が護衛してきたあたりから引き延ばし感はあったかな。ヒルコ様の掘り下げが絶対必要で、面白かったかというとそうでもなかったというのが個人的なところ。掘り下げというより前述の通り設定の上塗りに感じたというべきか。NEXT入りたての部分で、諸々の事象に一応の結論をつけてまとめ、銀花とゼロから始めていくでも自分は良かった。ギンカの方が好きではあったけど。
彼岸補正の流星だったり、彼岸常中のバケモン母さんだったり、超次元バトル要素はそこまで求めてなかったのかもしれない。作品情報が発表された時点で自分がGINKAに求めたのは、「神隠しでいなくなってしまった初恋の少女との安らかなやり直しの時間」だったのかもしれない。
けれどもまあ、最後の最後で「安らかなやり直しの時間」は取り戻すことができた。散々苦労し通した五年間の果てに手にした大切な時間の訪れは、多少強引だろうと嬉しいもので。
終着点及びNEXTまでの物語が、自分のGINKAに対する「好き」な部分の大半だ。
不満ばかりだが、逆にいうと批判しなかった他の事柄は満足だった。嘘じゃない。本当に本当に。特に序盤なんて、当初思っていた通りの平和な時間を眺めることができて大喜びだったんだから。
恋をしたロボットとの永く大切な45日間を描いたATRIに対して、伝奇モノの装いで欠けた五年間と恋心を取り戻すまでを描いたGINKAはまた別方面の作品として自分の中に沁み入るものがあった。大好き。ゴン太もポメラニアンも恋のキューピット過ぎて愛おしいよ。
最後に。
美晴先生とキャサリンとなずな先生はみんな一緒に呑んだくれればいいと思うよ。
※GAME Watch「今の時代にノベルゲームで勝負をするために必要なこととは。「GINKA」開発者インタビュー」https://game.watch.impress.co.jp/docs/interview/1539335.html