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copponponponさんのジュエリー・ハーツ・アカデミア -We will wing wonder world-の長文感想

ユーザー
copponponpon
ゲーム
ジュエリー・ハーツ・アカデミア -We will wing wonder world-
ブランド
きゃべつそふと
得点
84
参照数
430

一言コメント

人は変われる。問題児クラスが世界を救う。壮大なお話だったと思います。戦闘描写が単調ではあり、終わり方に関しては全く好みに合わずで一番の減点要素。しかし全体的な面白さは中々のもので、男性陣とルビイちゃんなんて大好きでした。良作

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

思いつくまま、個人的に良かったところと、悪かったところを交互に列挙。しばらくは書いたり消したりで文量の増減が見られます。悪かったところに関しては、閲覧注意。

良い点
序盤のオリエンテーションでペガサス組の個性を印象的に描いていたこと。正々堂々もクソもない、ルールで禁止されてないからOKのマナー違反っぷりは清々しくて好きなムーブなので、めちゃよい掴みだった。マークス弄り、良い。

悪い点
戦闘の単調さ、ワンパターン感は目立ってしまっていたかなと。登場人物たちは戦争をしている訳で、戦闘描写が非常に多くなるのは当然として、同じ演出の繰り返しはどうしても中盤終盤飽きが来てしまう。そこが個人的にはかなりマイナスポイントとなってしまった。終盤悪い意味でクリックが加速した。

良い点
死ぬと思っていなかった人が死んだこと。ノアちゃんとヴェオには仲良しこよしでいて欲しかったな。命を落とした者は甦らない、味方主要人物もちゃんと死ぬ。敵主要人物だけが死ぬなんて理不尽なことで、こちら側にも痛撃が入るのはとても良いこと。半分孤独の宝石と化した闇堕ちマークス、厨二全開の能力でカッコ良かったと思います。ヴェオもつらかったつらかった。

悪い点
シャルロット先生を殺すのが早かったんじゃないかということ。中盤以降だったらな……。
学園に対してそこまで感情移入し切れていない状態で隕石おじさん襲来だったため、泣きゲージがまだ溜まってない。2ndOPが始まっても、「佐咲紗花さん!いい曲!」という気持ちの方が強く、絶望感はあまり無かった。冒頭、入学から五ヶ月後のペガサス組『有機的特異点』を見ていたので、どうせこの子達立ち直るだろうしな……という思いもあった。でもヴェオ、心折れてから復活するの簡単すぎやしないか。
感情の変化には過程が大事だと思う。アリアンナ闇堕ちとかも、やや唐突に感じたかなと。

良い点
どんでん返し。常識が覆った例の章。みんながヴァンパイア、ソーマは人間、というアカデミアでの主人公らの立ち位置が明らかになった瞬間。
魔眼の対象に入っていたアリアンナ、内臓をやられて高いところから落ちているのに長時間治療なしでしぶといアリアンナ、翼があるとはいえ重たい人体を同時に複数運ぶアリアンナ、石しかない地域を2週間飛んで移動しててアリアンナたち食料どうしてるんだ、とか、色々不可解な点は多くて
トム氏のシナリオでは常識を疑えと言われたことがあったため、アリアンナとかはひょっとして人間じゃない他種族なのかなと思っていたら、その正体は遺志の影響下で日光を克服したヴァンパイア。まずこれは当てられないなと。違和感に気づいても、その正体までピシャリと当てるのはほぼ無理なのでは。分かった人いるのかな。

悪い点
奇跡が流石に起きすぎなのではないかと感じた。
負けそうになったら覚醒…。

良い点
人種差別、人と人の諍いを描いていたこと。
学生時代に上海租界のことを調べるのにハマったことがあって
支配される側する側、生まれた人種の違いで差別・行き違いが生まれる話はすごくツボだったので、面白かったなぁと。映画『太陽の帝国』とかすごくすきな作品で。敵じゃなくて友達なんだと拳を振るう。あれは良い作品。
生まれじゃなくて共に過ごした環境と関係を尊重するべきだと自分も思います。
閑話休題。
「種ではなく罪を憎め」「人は変われる」は終盤のキーワードだよなと。一つの大陸を舞台に、さまざまな立場のヒトが入り乱れて意見の食い違いを露呈させていく様はまさに好物。ノアちゃんはよくがんばった。
パルクール戦犯裏口入学クソ王子が民を統べる者として成長していったのが感慨深い。あの手の親の七光り感あるツンツンした思い上がり系のキャラは一度身の程を知って成長するのがお約束。民を無闇に死地へと送り、脳死で王家に従え!とか無能ムーブしなかったのが本当にえらい。民に誠実。至らなさを自覚するからこそ自分の頭で考えて反省できる。よくがんばったマークスも。

良い点と悪い点
終盤。実験体ミスリード隕石おじさんが敗れた後、ケイト完全体と戦闘になった辺り。情報の詰め込みが激しく、正直必要だったかな、と思わないでもなかった。蛇足感が強い。EDでヒビが入る演出の後、アルティメットアリアンナとでもいうべき人外が現れて、味方にバフかけまくって宝石おばさんをボコボコにした展開は……なんといっていいものか。だいぶ複雑な心境となってしまった。

物語がしっかり着地点に到達したのはヨシ。しかし、その直前で宝石おばさんと戦う展開はあんまりいらなかったかもしれない。隕石おじさんとセシリアちゃんカップルの余韻を宝石おばさんで塗りつぶされたのが恨めしい。ラスボスに相応しかったのは、大切な少女への想いを胸に黄金の剣を解き放ったおじさんだったと声を大きく高くして言いたい。あそこまで過去を掘り下げられた人だからこそ最後に倒す価値があったのだと叫びたい。

今年プレイした新作の中でも、ヘンプリに迫る勢いで心揺さぶられるところがあった作品だとは思う。ゴーレムとか、ああいう非人道的な行為、とてもいいと思う。
ケチをつけまくってしまったものの、書きたいことと語りたいことが沢山湧いてきた作品だった。
ありがとうペガサス組、ありがとうペガサスウィング、卒業おめでとう、というやつです。