夢でも現実でも本質は変わりませんでした。
結愛の物語がメインディッシュなシナリオ構成上、ミッテベルでの日々に終始する他√はどうしたって添え物。核心に近い紬√ですら主役にはなれない。
それでもありすは歌姫として邁進していきます。深織先輩も夢を追いかけながら病院で働いていきます。貴美香もなんか頑張ってた気がします。
彼女らの想いも費やした努力も偽物なんかじゃありませんし、例えその後目覚める時が訪れようと、胸のうちのどこかにきっと残る財産です。
紬アフター√終盤はキャラ同士の会話が非常に好ましく、特に彼女と結愛が抱擁を交わす一枚絵の場面、結愛と燕くんの放った台詞がお気に入りなんですよね。
結愛「今、ここにあるもの……その一瞬一瞬が全てじゃダメなの?」
燕「好きな人と、いつか笑顔で振り返れるような人生を一緒に生きていきたい。それに現実も夢も本当もウソもねぇよ」
この信条は紛れもなく各個別√の肯定にもなると思うんです。 ミッテベルでの日々が無意味ではないのなら、結愛以外の彼女たちも少しは報われる気がします。
○余談
主人公、メインヒロインズのモチーフについて。
揺り籠のカナリアはボーナスステージであるとして、少なくともソムニウムに関してはこうであったらいいな、なんて。
深紅の薔薇を思わせる髪色の眠り姫は昔、世界のために深く深く夢を織り続けていました。
鏡合わせの少女は夢の先を走り続けます。
外を知る幼馴染の少女は、けれども燕と夢をつむぎ続ける覚悟を決めます。
織って紡いで結ぶ流れ。
そうして少女達との夢を旅したその鳥は、やがて最後の少女のもとへ渡ります。
その少女は知っての通り、他人の悪夢に巻き込まれ、苦しんでいました。
それはまるで空高くそびえ立つ円柱に据えられ、街のあらゆる惨めさ醜さを直視させられ続けた王子の像のように。
鳥は彼女を巻き込む悪夢を取り除くと誓います。
鳥は彼女のもとへ足繁く通うようになります。
二人は友達以上の関係へ。やがて愛し合いました。
しかし彼は渡り鳥。本来、彼女達と共にあれる存在ではありません。別れが訪れるはずでした。
奇跡が起こります。
天使は神に遣わされ、地上で最も尊いものを探してきました。
少女達と街の人々の為、飛び続けた鳥。
街の為、天使の役割を担おうとした少女。
鳥の死骸に鉛の心臓。それはきっと燕と結愛のこと。
尊いものはようやく見つかったのかもしれません。
ともあれ真実、燕は愛した彼女と再会し、夢は結びへと至ったのでした。
こじつけにも等しい言葉遊びです。正解ではないでしょう。ただ、こういった由来なりネーミングのキッカケが名前に込められていたら嬉しい。そんな想いです。
しかし……眠り姫=『いばら姫』、ありす=『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』、燕に結愛=『幸福の王子』と考えるとして……紬だけわかんない……うーん、あの母性の塊は何者だったのか。
まぁ、アナルプレイNGだと聞くWhirlpoolさんがわざわざ主人公の手によってありすのお尻に座薬を入れる描写をわざわざ組み込んできたことになんてきっと全くこれっぽっちも意味も意図も意義もありはしないに違いないのと同様に、物語や人物の何にでも意味がある、明確なモチーフがあるなんて考えるのは、中々間違っている気がしますが。