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copponponponさんの彼女のセイイキの長文感想

ユーザー
copponponpon
ゲーム
彼女のセイイキ
ブランド
feng
得点
81
参照数
122

一言コメント

自分勝手なヒロインだったけれど、かわいければよかろうなのです。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

 ……その後も陽平くんの相談相手となり続けるだろう店員ちゃん。彼と話せるだけでも嬉しそうではあったものの、惚気の捌け口にされかねないのが地獄だなぁ。


 誰かと結ばれることで他の誰かが選ばれない。明確に失恋する存在がいるというのは中々どうして、心を締め付けられるような気持ちになります。今作でいえば店員ちゃん確定、マイカちゃんもほぼ確実で、ゆかなだってそうでしょう。その辺り、ルートに入らなければ主人公への恋心が芽吹かないタイプのヒロインと違っていて……だからこそ、選んだヒロインのことは大切に幸せにしてやって欲しいと強く思います。
 自分は先に『妹のセイイキ』をプレイしていたものですから、陽平くんと結ばれない冬華ちゃんを知っていました。特に虚勢で損をする姿が印象的で。ですから今作では冬華ちゃんが陽平くんとしっかり結ばれてくれて、幸せそうで嬉しかった。


 

 以下、ヒロインと主人公について簡単に。

 秋吉冬華ちゃん。見栄っ張りなので空回りしますし、そもそも痴漢疑惑で(故意ではなかったと気付いていながら)主人公を縛りつけようというのも割と酷い話。脅し文句に「警察」と入って、正直冗談じゃ済まされないレベルに酷い脅迫だったなぁ……繋ぎ止めたい幼馴染、初恋の相手であったとしてもだいぶ利己的に操ろうとしたなぁと。
 そうして強制的に結ばれた歪な主従関係、こんなことする自分を主人公は嫌っているだろうと思い込む冬華ちゃん。面倒くさい。
 えっちなお仕置き等を経て、徐々に柔らかな態度で触れ合えるようになっていくものの……ただの自分ではなくえっちな自分しか主人公は好きじゃない、えっちでなければ嫌われると思い詰めて振る舞うように。本当に面倒くさい。
 それでもまあ、素直になれない自分を嫌悪する面倒くさヒロインというのはとっても可愛らしくて(限度はあるものの)、そこに元お嬢様という属性がつくのも堪らない。貧しくなってなお虚勢は止まず、むしろ拍車がかかって抜け出せなくなっているのも個人的にポイント高いです。

 そのように外面を無理矢理埋め立てて孤独に喘ぐ彼女を助けてくれるのは、いつだって主人公だというお話でした。UFOキャッチャーのぬいぐるみを彼女自身に見立てて、心理を描写するのも何だか素敵。プリ機のシールは、檻の中にあるようだった心を救い出してもらった証。そりゃあ大事にしますよね。学生証に挟んで携帯するくらいですからお守りのようなものでもあったのかも。



 冬華ちゃんを見ていて印象的だったのはメイド服を着ている姿。
 苦学生にはバイトが付きものということで、主人公との大切な思い出の地・アキバにてメイドカフェ店員をしています。お仕事の際に声が結構ノリノリなのは愛想よくする為というのもそうでしょうが、お店には秋吉冬華としての自分を知る誰かがいなかった分、多少伸び伸びとできていたからなのかなぁなんて思ったりもします。
 ほぼ毎日のアルバイト、合わない職場なら瞬く間に疲弊するはずで。長続きしてそうなのは天職だったからかも……?
 見栄とは似て非なる、楽しく演じるロールプレイと言いますか……常日頃から周りの目を気にして生きている彼女にとって自分ではない誰か、キャストを演じるというのは結構な息抜きになっていたんじゃないかと愚推したりする訳です。はい、妄想です。

 また、店内での冬華ちゃんは結構大胆です。特別メニューを利用して主人公に専属し、テーブル下でパイズリしてきたりします。コスチュームだけでなくスリルも楽しむという、エロゲだからこそできるバイトテロ。普通に人として最低な行いだと思いますが、エロゲなのでね。セーフ。えっちだし。

 背徳的な場所での性行為は絶えなくて、この作品のHシーンは結構な頻度で舞台が夜の神社。冬華ちゃんには青姦好きの疑惑があります。
 一応彼女にもヤバいことしてる自覚はあったらしく、恋人ENDでは財布の小銭を全てお賽銭にしていました。なら神様もきっと許してくださいます。たとえ境内でおしっこしてようがきっと許してくださいます。
 神社セックスでは特に巫女服アナルセックスがお気に入り。お尻が弱くて乱れてしまう姿が非常に唆りました。
 背徳的というと電車での痴漢プレイもありましたが、それはまあ、エロ同人でもよくあるシチュエーション。挿れるまではいかなかったのでそこまで滾りませんでした。

 常識的な範囲(?)でのエロについても、フェラや足コキ手コキ、69、騎乗位といった具合でシーンの数もバリエーションも多く、バスルームでの対面座位スク水プレイ(最初に罵倒付き)まであって概ね良好。69のイカせ合いが素晴らしい……お尻に指出し挿れするからね。
 コスパ良く、イキまくりなので喘ぎ声に余裕が無い。ほんと笑っちゃうくらいよく絶頂します。総じてシコリティ高かったです。
 ただぶっかけ多めですよね。フェラで出すならお口にして欲しかった、せめて選ばせてほしかった……なんて思いました。一度のプレイで複数回射精しがちだったから余計に。ロープライス作品ですし、限られた層の嗜好に応えていたらキリがないので仕方ないよねと一応の納得はしつつ。




 好きな結末順は
『恋人の関係になりたい』>『主従関係を結んでいたい』>『立場を逆転させたい』


 立場逆転ENDは『えっちな子でないと好かれない』という冬華ちゃんの思い込みをひたすらに助長する形でその後が描かれていたので、あまり好きじゃないです。全裸首輪境内散歩は正直興奮しますが、その後抱くって流れで本格的な行為シーンを描かずに終わったのもあって不満です。
 バッドエンドではないでしょうがそのうち破綻しそうな関係。もし壊れてしまったら、調教され切った冬華ちゃんはめちゃくちゃ思い詰めるだろうなと胸が苦しくなります。この道を選んだ責任は主人公にあり。是非とも、盲目的な冬華ちゃんのことを愛し続けて欲しいと思います。ちゃんと責任を持つなら、こんな形でのラブラブもまぁ良いんじゃないかと思わなくもなかったり。








 主従続行ENDは、その関係性を歪と称する割に仲良さげで何よりです。ノーマルエンド感。
 冬華ちゃんは命令口調の中に優しさを滲ませていますし、執事ぶっている主人公も素で話せと言われればラフに接します。サディストな嬢さんに責められているような絵面で終わりましたが、プレイ自体は軽い言葉責めを交えた騎乗位でまだまだノーマルなイチャラブの範疇。
 最後のセリフ(「そばにいられて幸せだよ、冬華……。」)に、主人公が自らへ幸せを言い聞かせているような含みを感じたのはちょっとモヤモヤします。結局恋人という訳じゃあないんですよね。一歩届かない。
 ぶっちゃけこの関係ならそのうち恋仲へ進展しそうではあります。正式な主従でもなくあくまで本人らの心構えの問題ですし。そこまで嫌いじゃない締め方です。
 






 恋人ENDは一番ボリュームあったので、TRUEはやっぱこれだよなと。冬華ちゃんのSの素質とMの素質の両方を育てる教育。時に攻めて攻められて、ベットの上でも対等な関係みたいです。
 関係性の名前に囚われすぎじゃないかとは思いましたが、より良い形に纏まって他ENDよりずっと後腐れなく幸せそう。見ているこちらも笑顔になれます。

 あまりよくない執着の兆しを見せる冬華ちゃんへ、陽平くんが主従関係の解消を言い渡すのが結末を分ける大きな違い。
 関係を結び直す為にゲームセンターでの思い出を再現しようとするの好きです。ただ、その直前まで傷心状態の冬華ちゃんには何も言わず、放置プレイ決め込んでた陽平くんはちょっとどうかと思ったり。
 誕生日プレゼントの為にバイト頑張ってたとのことですが、そんな四六時中暇が無かったのかなとかモヤッとしました。まぁ、色々心の準備もあったのかな。
 それから、
・陽平くんは『進学先が違くてもまた一緒に遊ぼう』という約束を守ろうとしていたということ
・その後も暫く連絡を取ろうとしてくれていたこと
・手を飛ばせば届いたかもしれないのに、先に諦めてしまったのは自分だったこと
冬華ちゃんがこれらに自力で気付けたのも良かったところ。折角彼から連絡が来ても、彼女の親御さんは伝達せずにいた、だから関係は途絶えた、というのが真実でした。庶民を相手にするなってヤツですね、元々家柄よろしい訳で想像に難くない話です。

 さてそんな冬華ちゃんのご両親、いざ二人が交際する、籍入れるって挨拶しに行ったら一体どんな反応するんでしょうね。冬華ちゃんのプライドの高さは親譲りであり、没落しても父母共に弱みを見せず、別居して借金返済に奔走しているという現在でしたが少しは丸くなったかな。例え反対されようが、今の冬華ちゃんなら言いなりにはならないと思うので存分に食ってかかって欲しいですね。親子喧嘩とか見てみたかったな。


 それからそれから、結局陽平くんが思い出のツーショットを今でも所持しているのかどうか。冬華ちゃんは確かめずじまいだったと思いますが、もう確認する必要は無くなったということですよね。約束は果たされましたし、今の二人には新たなツーショットがあります。陽平くんめっちゃイケメンだった……。
 とはいえ昔のツーショットも鍵付きの引き出しに保管してると発覚したら、冬華ちゃん絶対喜ぶじゃないですか。それは一層イチャラブするということじゃないですか。想像するだけで微笑ましくて、幸せな気持ちになれるじゃないですか。最高です。


 アパート暮らししていることはまだ秘密なもののアルバイト先くらいは学友に教えたりと、見栄っ張りなりに冬華ちゃんが成長できていた点でも他より好印象なENDです。








 そんな具合で、fengがおくるロープライス作品『セイイキ』シリーズの第一弾は自分にとって満足のいく作品でした。恋愛モノの短編はヒロインに対する好感度が作品評価に直結しかねず……だからこそ、秋吉冬華ちゃんに恋したプレイヤーにはたまらないゲームに違いない訳で。
 彼女が好みに合わないユーザーなら言わずもがなですが、自分は大好きなので。らぶらぶ萌え萌え、おいしくなーれー、愛しいです。

 こんなところですかね。

 まだ春休みなのに夏のことを考える二人に、海での解放的なエッチを思い浮かべる冬華ちゃんに、この先の人生をいつまでも眺めさせてくれと名残惜しさを覚えつつ。
 来年はバイトに休みも入れて、一緒にお花見できたらいいね、なんて思いながら。

 心地よい余韻をくれたこの作品に感謝して、感想を締めます。



 ……あ、あとあと!全く触れてませんでしたが、OPED共にめっちゃ良い曲ですよね!フルコンプ後改めて噛み締めると五臓六腑と脳に沁み渡り、冬華ちゃんが大好きヒロインリストにその名を連ねたことを理解しました。紛れもなく、『彼女のセイイキ』を表した歌詞ですもの。