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cltさんのハロー・レディ!の長文感想

ユーザー
clt
ゲーム
ハロー・レディ!
ブランド
暁WORKS
得点
95
参照数
2329

一言コメント

楽しめました。シナリオから推測すると、ライターはかなりの文学的素養を持って(が、妙な筆癖も何箇所ある)この物語を織り成しました。少なくとも、シェイクスピアの名作は殆ど読んだと思います。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

遥そらと桜坂かいの演技に感服、全く文句なしです。
Meis Clausonの作ったOPも実に素晴らしいでした(Piano ver.は今でもループしてます)。

これからの感想はあくまでも個人的なものでしか過ぎませんので、意見がそれぞれ違う場合はご容赦ください。



世界観:
自分でもライターの意図を全部把握したわけではありませんが、基本的にライターはシェイクスピア、特にハムレットの物語、を原点にし(設定やハローの命名とか、詠唱とか)、シェイクスピアと違う展開を書き続けているだと見えます。
ハムレットと大違いの点は主に:
1.成田真理というキャラの決意。ハムレットは長い間をかけてようやく自分の成すべきことを確信しましたが、成田はいつも「成すべきことを為す」と口にしていました(正直、なんで二つの「なす」を違う漢字にしたのか全くわかりませんでした)。その決意こそ彼のイメージを昇華したと思います。
2.全能なホレーショ。攻略キャラを除き、結局成田に対していつも忠実でいられる人はたった一人です。菱屋が攻略不可になるのはこれゆえではありませんか?でもなんというか、このホレーショたるメイドはあんまりにも強すぎますwww
3.エンディング。まぁ言うまでもないでしょうか?

テーマも多分いう必要の無いでしょう?最初から成田は少数精鋭主義を否定しまくりました。最後に見せたのも英雄主義たる展開でした。
あぁ、あとひとつ、身近にいる人こそ裏切る、です。

シナリオ全般
繰り返しはしませんが、短いながらコンパクトなシナリオが個人的に好物です。
ちょっと残念だと感じるのは珠緒√のみです、理由は後で。
間違ってるかも知れませんが、自分は終盤の戦いが気に入りました。最初からきっとみんなすべて敵になるのでしょうと思いまして、更にコンフィグ画面にいつも謎の一人がいるゆえ、御門瑠璃が出る時も全く驚きませんでした(が、彼女の狂気さに確かに驚愕)。正直の所、ハムレットの終幕と比べて超展開とでもないレベルです。

でも、妙な筆癖は改善する方がいいだと思いますね。難読漢字はさておき(何度も辞書に頼りました)、変な表現はやめておきましょう(例えば、空子とエッチする直前にある「黄金でできた雫のようだ」という言い方さぁ、想像して見たら黄色い液体しか出てませんでしたね。または、「眼鏡違い」の濫用ですね)。まぁ、自分も特に日本語が得意というわけでもありませんので、多分発言権がないですよね。

ちなみに少々疑問がありますね、<オウル>って、フランス語のauroreのことなんですか?そのほうが英語のallより意味が通じますね。

成田真理
ハロー起動時:There are more things in heaven and earth, Horatio, Than are dreamt of in your philosophy.

原文はそういう意味ではありませんが、もしかしてこのセリフは自分の強さを指しているかもしれません。
そもそも、誰に向かってホレーショとか言っていますか?
ちょっと本題から離れますが、時々、このライターはいくつかのクォートを誤用しましたように感じますが、意図的にやっていますのか?
やっぱり変ですね。

所持ハローが復讐者たるハムレットで、復讐まくって信念を貫き、英雄主義の代表としていい主人公さんです。

音無朔
ハロー起動時:The weight of this sad time we must obey. Speak what we feel, not what we ought to say. The oldest hath borne most. We that are young Shall never see so much, nor live so long.

なんですかそのクォートは?わけの分からない関連性でもあるというのか?
自分でも納得できる、このゲームの解釈は(具体的な話は覚えてませんが多分それです):
「人を作るのが過去だが、人が生きるのは未来だから。」
それでも、朔とリア王のキャラがまったくこれっぽっちも似てません・・・と思っていますか?
角度を変えましょう。
御門瑠璃が「リア王I」で、自分の力を朔の「リア王III」と御門大義(ハローではないが、プラントで瑠璃を解放するときにリア王を詠唱しました)に一部分けたから、・・・

朔は素晴らしいでした。成田より、もっと純粋な存在で、自らの踏む道を歩む人。
多くの動揺や迷いを超え、正しさに異を唱え、(成田による)本物の人間になりました。
まさに「創造」の力に相応しい人でした。

鷹崎エル
ハロー起動時:And maidens call it “love-in-idleness.”

「love-in-idleness」は多分エルのことですよ。夏の夜の夢を読んだら分かります。
推測ですが、多分その花は愛情ではなく、朔との絆を象徴します。

強いて言えば、成田は途中から復讐を諦め、朔を助けに行くと決めましたが、それが正しいと思っています。シナリオもそこに終わってよかったです。
恐らくライターさんも気付いていると思います、エルとでは、黒船を倒すことが自然的な流れに出来ないということを。何故というのなら、朔は正気に戻らない限り、<クラウン>の戦力が全くありません。

桂木空子
ハロー起動時:If I profane with my unworthiest hand・・・And palm to palm is holy palmers' kiss.

なんでロミオとジュリエットが同じ人物に好きになりましたのか?スミマセン、ワカリマセン。
しかも二重人格。

成田一筋、ひたすら恋をするオトメです。
基本的に良いシナリオと見えますが、もっと家族話とか過去の話とかしてほしいです。しかも、なんで自分の父親が殺されることに一瞬納得ですか?

赤人珠緒
ハロー起動時:忘れました。

テンペストは読んでいませんので・・・

そうだね、とにかく不満です。最後で復讐したのは時乃だったらいいのに(でも確かに、珠緒√に、時乃が三人目の仇とは一言も言ってませんでしたね)。
そもそも、なんで黒船がこんなにも弱かったですの?矛盾していますよ。とっても矛盾していますよ。
本作最大の失敗点というのなら、ここですね(実は最初やってた時に特に変な感じしてませんでしたが、物語の展開に伴ってますます不自然さが湧いてきます)。

兜山美鳥
ハロー起動時の言葉もテンペストのクォートなので・・・

でも、彼女はテンペストより、オフィーリアだと強く思っています。もし成田に惚れたら尚更だけど残念ながらそういうわけには行けないそうですね。
自分にとって全劇に一番悲しんだ時はオフィーリアが自ら死を選んだと知った瞬間でした。
イノセントな人はなんで理不尽ゆえに死んでしまいますの?初めてハムレットを読む時にそう思いました。
そう考えて、美鳥のことも何とか納得出来ます。


久々に劇たるエロゲーに出会ってよかったと
自分はそう思います。

でも果たして、シェイクスピアに反するライターに賛同するべきか否か?