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cloud623さんの肢体を洗うの長文感想

ユーザー
cloud623
ゲーム
肢体を洗う
ブランド
シルキーズ
得点
85

一言コメント

これは医学部合格を目指す少年が魔の手に引かれる謎多き物語...そもそも難解な部分が多いので、ある種哲学的という意味で謎が多いのかもしれません。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

※狂気ルートを主な考察感想とします。

ある日突然の病院アルバイト職を失い、副院長から肢体清掃員を任される所から始まります。
2週間働きの1か月契約で30万円。学生からするとかなり高額な給料じゃないのでしょうか。
そこでまず死体洗いについて少し調べてみましたが、これは都市伝説が元ネタのようで、そういった類の仕事はない(裏ではあるかもしれませんが)そうです。ですので死体洗いなんて表に出る仕事じゃないので主人公(以降Aとします)はどのような仕事か想像できなかったのでしょう。結局副院長へ厚い信頼をかたむけるAはこの話に乗ってしまいます。ここで一度は冷静に考え否定しますが副院長が体をはって頼んできたのでAは断れませんでした。

初めてこのシーンを見た私は、なんでこんなに執拗に頼んできたのか疑問に思いました。しかし狂気ルート以外のルートではっきりと答えを言っていましたのでここについては納得しました。
6人もの人にこの仕事を頼んでいたのですね。全員契約期間中に失踪したそうですがどうなったかは謎に包まれたまま...この事実を知ったAは他4人のそれぞれのルートで脱出(副院長の改心)を試みて見たのです。
ここまでで一度も副ではなく院長を見ていませんね...そこはあまり言いません。

唐突ですが副院長は幻覚、幻聴が聞こえてたみたいなんです。全ルート終えてもこの謎がわかりませんでしたが、私が思うに彼女は薬を作っていたのでその薬を<自分も>服用していたのでしょう。自分もというのは狂気ルートではっきりしますがAは副院長にいつの間にか実験薬を飲まされていたんですね。普通よくわからない薬を渡されたら受け取らないと思いますが、Aからすると副院長は絶対的な存在でしたので安心だろうと飲んでいたのでしょうね。その薬は抗ストレス剤というものだそうで、院長がかつては開発していたのですがある出来事をきっかけに副院長が研究することになったんですね。院長は副院長にとって絶対的な存在でしたのでどんな薬だろうと引き継いでいたでしょう。で、結果的にそれが引き金で狂気ルートにつながっていきます。

研究をするうえで実験用のモルモットが必要でした。抗ストレス剤というだけあって、人間でないとはっきりとした結果が出ないと思っていたのでしょう。そして肢体清掃の勧誘が始まったのだと思います。そしてAが抗ストレス剤にいつの間にか手を染めてしまっていたのです。肢体清掃ではかなりのストレスが貯まるでしょうから尚更でしょう。しかしながらただ肢体を清掃しているだけでは慣れが来てしまうので数々のギミックを肢体に忍ばせて実験体にストレスをかける、というのがとてつもなく怖いんですね。狂気でないほうでこれがはっきりと出てくるのでたくさん驚かされました(ビックリ的な意味で)。まさかこんなものが序の口だったなんて...

しかし副院長もうすうす気づいてきたはずで、そういう表現がいくつかあったので。要するに抗ストレス剤どころかストレスを与える薬だったのだと思います(ここからは推測が結構混ざります)。つまりは覚せい剤ですね。その薬には依存性があるなんて病院の先生ならわかってると思いますが次第に飲む数が増えるにつれて副院長も怖くなってきたのだと思います。そしてAは幻覚、幻聴が聞こえるようになり、...。

最後は登場人物がほぼ全員死んでいたんですね。ここでかなり大きな疑問が生じるんです。どうして余りかかわっていない人物まで死んでしまったのでしょう。大量殺人を犯してしまったAは捕まりend。人の見分けすら付かなかったのでしょうか。あまりにも場面の移り変わりが速かったのでかなり謎です。Aは幻覚で話し相手がちょくちょく死体に見えてしまっていたんです。多分それで何でしょうけど。薬物は怖いですね。


全体を通して感想を述べますと、話の筋が通っていてそして結論がはっきりしているので非常に読みやすいが、難解というか考えさせられる場面が多々あるので謎解き要素だと腹をくくって読むのが理想だと思います。
音楽とCGと話の調和が素晴らしい。演出も凝っていて特に脅かし場面での恐怖はお化け屋敷行くよりも怖かったです。

このゲームを一番最初に起動したときに出てくる、
Is to give their body to science for research after their death.
医学の発展を願って、死後自らの肉体を無償で提供すること。

多く出てくる死体についてあまり語られていなかったので、憶測ですが。つまりはあの洗っている死体はドナーになるためのもの、だったのかもしれませんね。