予想に反してかなりの良作。それ散る的な主人公がダメでないのならお勧め。
全く期待してないゲームで長らく積んでいましたが、予想を良い意味で裏切ってくれました。
CGは、まあいつもどおりのかわいいけれどもイマイチキャラの描き分けができていない絵です。髪型と色で判別するしかないですが、今回はかなり独特の髪型が多いのが救い。ロボットはリアルロボット的なのを期待するとダメですね。実際にリアルロボットだったりすると、バカゲー炸裂な世界観を壊しかねないのでやむを得ないですが。
音楽は亜子様(なぜ様をつけるかはプレイすればわかります)ルートでの音楽はインパクト大ですが、あまり印象に残るものは多くないです。ただ、世界観には合っていると思いました。
シナリオについては、最初から最後までひたすらにおバカなテキストで駆け抜けます。ちょっとシリアス気味になることはあっても、やはり何かすっ飛んだテキストです。このノリがダメだとかなり厳しいゲームになるかもしれないです。
感動とか泣きも、一部を除きほぼ皆無です。いちゃラブもあまり多くありません。ひたすらコメディです。コメディといってもお色気肌色たっぷりなエロコメでもありません。主人公の周りには女の子がいっぱいですが、ほとんどの子は別に主人公が好きで寄ってきている訳じゃないという点でハーレム系なコメディとも違います。ただ、主人公がヒロインを好きになっていく過程や、ヒロインが主人公を好きになる過程については他のゲームよりもかなり丁寧に書いており、なかなか好感触でした。
個別のキャラ・シナリオについては、桜子と椿子の一般人二人が個人的には良かったと思いました。
特に桜子は、なんというか、非モテ諸氏にとっての「憧れの君」をすごくリアルに描写できています。夢子がいなければ彼女がメインヒロイン的な立場だったのかもですね。実は桜子自身は他のキャラと比べるとこれといった特徴が無いのですが、笑顔で挨拶してくれる、同じ出身校、偶然一緒に遊びにいったことがある・・・。非モテにとってはこれだけでも破壊力抜群で、十分勘違いして惚れてしまいますし、作中の主人公もやはり同じような理由で好意をもっています。若さゆえの勘違いや思い込みといったものを表現したシナリオというのは結構珍しいかと。現実だとこういった子はちょっと悪そうな奴、有態に言えばDQNな感じの奴といつの間にか付き合っていたりして非モテ系の幻想をぶっ壊してくれちゃう訳ですが、本作はそんなことがない安心仕様(笑)。
椿子は、オーソドックスなトラウマ克服型のシナリオです。でも、こういったオーソドックスなシナリオを丁寧に破綻なく書いたゲームって意外に少ないです。トラウマの原因が何なのか途中ちょっとハラハラしましたが、ケータイ小説でありがちな鬱展開ではないのでこれも安心してプレイできるとだけ述べておきます。
亜子様も悪くはなかったのですが、やはり思想的に病んでいるイメージが強いです。ただ、人によってはツボに入ると思うので、こればかりは実際に体験してもらうしかないかと。年明け後は強烈な個性が少し収まって外見どおりの黒髪お嬢様なんですが。
菜子はシナリオ自体は無口・無表情っ子との恋愛を静かに書いていて好感触だったのですが、終盤がスーパーロボット大戦になってしまって、それまでの静かな印象が完全に塗りつぶされてしまったのがちょっと残念。40歳独身の八十島一佐のヘンタイぶりは一見の価値ありではありますが。
そして、とりわけ異質なのはメインヒロインの夢子。いわゆるギャルゲーで出てくる幼馴染は、大概主人公にとっては都合の良い子です。多くの場合、才色兼備で子供の頃から主人公を一途に想っていてくれて、それでいて主人公が他の女の子とくっついたら潔く身を引いてくれる…。文字通り、「それなんてエロゲ?」といったテンプレートですね。
本作では、才色兼備で子供の頃から主人公を一途にというところまでは一緒ですが、面倒くささと重さはすっ飛んだ設定のおかげもあり超弩級。ベクトルの違うヤンデレ。主人公と他の子がつきあう場合は常にラスボスとして立ちはだかります。ヒール役幼馴染とてでもいうのでしょうか。ヒールとしての輝きが強すぎて、個別シナリオは2周させられる割にはイマイチな印象を受けました。このシナリオだけは主人公が夢子を好きになる過程を描いたというよりも、主人公が自分が夢子と付き合うことを無理矢理納得しようとしているイメージが強かったです。ある意味結婚を迫られた男の悩みみたいで、すごくリアリティがあるのですけれども。
前作の俺翼に比べ、導入部で放棄するようなことにならないのはよくなった点です。ライターの方がそれ散るの爆笑テキストDNAをちゃんと引き継いでいるのも良かったです。というか、Navelはshuffle!、Soul Linkとしばらく路線を誤っていた感もありますが。
この感じであれば、次回作も期待できそうです。