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chuckmanさんの蒼色輪廻の長文感想

ユーザー
chuckman
ゲーム
蒼色輪廻
ブランド
美遊
得点
90
参照数
847

一言コメント

並行世界もの。完成度高し。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

◾シナリオ
主人公が心身共に類稀なクズ。清々しいクズじゃなく、ブサイクで運動出来なくて、頭も悪くて、不運でグジグジした完全無欠のクズ。そいつの自殺シーンから物語は始まるが、クズだから死なないというパーフェクトクズっぷり。「何度でも言う……僕は君の死を望んでいる!」のはインフィニティだけではない。私もだ。

そんな彼が「涅槃の目」を持つことで、死んでも人生を繰り返せるようになってしまったわけだが、何かしら大仰な目的があるわけではなく、不幸を抜け出したくて生き足掻く。
インフィニティを救いたいとか、誰かを幸せにしたいとかではなく、自分が死にたくないから繰り返してる。
この辺はとても好感が持てる。なんというか、平凡なのである。
とはいえ彼の不幸は酷いもので、ヒロインは輪姦されるは家族は殺されるはでもうほんとグチャグチャ。たまりませんねえ。

異世界との因果のつながりは、うまくシステムとシナリオが融合しており素晴らしい。

シナリオ自体は一本道で、いくつかルートというか幸せに死ぬこともあるが、結局転生してしまうのでやり直し。美樹エンドで幸せな死を迎え、「また迎えに行きます」はグッとくるよねえ。

テーマは輪廻転生。
もちろん主人公が死にまくる。
転生だが、主人公には脳裏に残る記憶程度でしか引き継がれない。
選択に際し、「その道は僕がもう行った。君は別の道を歩め!」と現主人公に鍵(死んだ主人公の記憶)が声を掛ける流れなんかは、なかなか憎い演出。
主人公が圧倒的クズなだけに、頑張れと応援したくなるね。

最近ので言えばスマガや古色迷宮輪舞曲が近い。
最も当作の方が昔のものだが、まったく古さを感じさせない。
2004年の作品なので言うほど古くないけども。
いや、2000年前半だから結構前か

◾システム
走馬燈システムによりフローマップを確認しながら人生をやり直す。
YU-NOの宝玉システムを彷彿とさせる。
死にゲーで、主人公が死ぬ度に「鍵」となり転生後の新たな道の手掛かりを手に入れ、人生をやり直す。

転生はフローマップのほぼ任意の場所(分岐点まで)戻れるため、攻略難易度は基本的に高くない。
ただし、ニルヴァーナ(世界移動)が可能になると少し厄介になる。
世界移動のタイミングが案外シビアなので、総当たりゲーの様相を見せることも。
ただし、しっかりとシナリオの流れ(別世界ではどうなっているか)を考慮に入れながらプレイすることで軽減可能。
フラグ管理ならぬ、シナリオ把握が大切。

◾CG
キレイで見やすい。
結構多いと感じたが、総じて見るとそうでもないか。
ただシナリオの長さから言えば多い方かもしれない。
主人公にCGが用意してあるのもいいね。
ブサイクなのがよくわかる。

◾エロ
多数!これほんといいね。素晴らしいです。
ただ、主人公がクズなのでNTR、凌辱が基本。
さらには蟲プレイまであるのだから驚きである。
絶望感がよく出ているので、グギギびくんびくんとなること請け合い。

◾その他所感
台詞回しも面白く、絶望感、悲壮感がよく出ているが、しかしダークになりすぎない愉快さもある。

主人公がヒロインには好感を持ってもらえるわけだが、
その理由がまったくなかった。
なぜだと思いつつシナリオを進めてみるとなんとこの世界さえ現実とは言い難いものだったのには、いやはやびっくらこいたね。
しかしある意味納得の解答だった。
ちとデウスエクスマキナな感じも否めないが。

走馬燈世界の問題とか、諸所様々考察中。