惜しむらくは……
惜しむらくは一本道であったことだと思っている。
いきなりマイナスから入ってしまったが、全体を通してまず言えることは
ヒューマンドラマとしては全然読めるし面白い。
蓮司の内面描写という点にしっかりとスポットを当てて見てみれば、これはなかなか悪くない。
人と人はどう関係を積み重ね、何を持ってして崩れるのだろうか、そして立て直すのだろうか。
王の意思一つで関係性が戻るシーンは、やたらあっさりしているしもちっと引っ張ってもいいのではと思ったが、
いやはやなるほどとさえ思ったものだ。
しかしまあ思うところがあるとすれば、ヒューマンドラマであるのならば…
複数ルートでるみ以外を攻略するべきだったとぼくは断じる!
会という舞台において関係性を盾に取られている以上、
蓮司はるみを失い他の女と生き延びるという選択肢が見たかった。
それは自己本位的な意識の中で幾度か思っていたことだろうが、そうではなく、るみを失って欲しかった。
そうすることで見えるものもあるだろうし、なによりそれはエロゲーとして、だ。
だってしのぶとか結花とかお前あれよ、別のゲームだったら超メインヒロイン級よ?!
あー!くっそ可愛い!!!
会はあくまで人の関係性を断つ悲劇としての意味合い程度でしか語られなかった点は
確かに個人的にも少し残念だった。
まあいきなり会とか始まって厨二臭くなってどうしたおい大丈夫かと思ったのは事実としても、
せっかくなのでルートを重ねるごとに会の核心へと迫っていき、るみを最後は救うというありきたりではあるのだが
尺的にもキャラクターを活かすにしても欲しかったなあと思ってしまう。
ちょっと駆け足過ぎた印象は拭えない。蓮司は走れないけど。
上述したが、会というのはあくまで悲劇そのものであり今回の主題ではないようだ。
会とはなんぞや?という謎はもやっと放置しているあたりからもそれは間違いないと思う。
現象としては不思議そのものであるので、やはり設定の裏が欲しいところではあったがそれはおそらく書きたいものから外れるのではないだろうか。知らないけど。
個人的な見解のみ述べると、会とは現象であり手段であり仕組みである。
会で人を殺すもよし、談合するもよし、考えるもよし、発明するもよしの万能世界。
ただしその代償として自身の心と関係性を差し出しているだけなのだと思う。
よって長門の言う世界の王とはその奇跡の仕組と代償をコントロールすることだろう。
なんせ王の骨と当人の意思のみで会は発現するのだから、勝利とゴールは存在し得ない。
まあ長門さんもちょっと目的がよくわかんなかったですけどね。本当に青年いじめたかっただけなような気もするし。
それこそ理不尽そのものの体現といえるだろうしね。
まとめると、ヒューマンドラマを書こうとしたのはもちろんわかる。それはよく書けていたと思う。
ただし、会という舞台装置をもっと活かすことが出来ればもっとエロゲーらしいヒューマンドラマが描けたのではなかろうか。
どうしてもそう思ってしまうのである。
でもよく考えればちょっと安かったんだよなあ…