少年がヒーローになるまでの長い長い物語 読みにくいテキストという部分は存在するがそれを埋めてもなお有り余る構成の上手さとメッセージ性、世界観の雰囲気と緻密さ、音楽のクオリティといった長所が魅力。平成最後に生まれた傑作。
雰囲気:20点
夜の国という独特な雰囲気を持った世界観の構成は流石はいろセカを書いたシナリオライターとしか言えない出来。背景と相まって非現実的な雰囲気を上手く演出することができている。また明確な悪意とその理由、それに立ち向かう隣人を上手く描けているため、辛い展開が多くても特定の人物にヘイトがいきにくくなっている。
音楽:20点
公開されているOP「さくら、Reincarnation」は勿論のことEDの「終わらない物語」
、挿入歌である「さくら、もゆ」のいずれも名曲となっていた。そして2ndOPの「輪廻」やグランドEDの「花あかりの時」も共に最後のルートを彩るにふさわしい素晴らしい曲となっている。
またBGM部分も一切手が抜かれておらずアレンジも含め何度も聞いていたいと思えるものとなっている。シーンを食うようなものにはなっていないが上手く寄り添う物になっているだろう。
人物:20点
モブ達は確かに悪意がもろに突きつけてくるがそれにもしっかりと原因が存在し、その後悔を描き切っていたのは非常に良かった。
そして立ち絵持ちのキャラクター全員にしっかりとそのキャラクターにしかできない役割を持たせ、だれ一人かけるべきではないと断言でいるような物語となっている。
演出:20点
背景からくる画面の美しさは流石としか言いようがないもの。
そして伏線に次ぐ伏線とミスリードの巧みさ、そのために配置したCGなどどれも素晴らしかった。
特に最後のCGはお気に入り。
シナリオ:18点
展開に無駄がない。ヒロインルートもしっかりとそれぞれどこまでも幸せな姿を描き切り、そのルートごとに配置されたサブキャラクター達のシナリオも上手く組み込めている。
またオーラスルートもそれまで見てきたヒロインルートの存在が大前提な上に語られた設定や出来事、原因などを上手く語ることができている。さらにミスリードを張り巡らせることで展開が一切予測できないものとなっており、その理由づけも上手くできている。
ただテキストに癖があるのと日常パートのテンポの悪さが目立ち、退屈に感じる可能性はある。
総評
何度も延期を繰り返した今作だが本当に見事な作品となった。
主人公達を取り巻く世界の悪意とそれから守ろうとする人たちの優しさの描写は本当に見事だった。
多くを語るとくすんだものにしかならない、そんな思いを持つほど感情に訴えるものを受け取ることができた。