ギャルゲーの持つ可能性を見た気がした
確か、同じ年にエロゲでは『君望』が出てて、それに埋もれた感はあるけれども、方向性は違えど
同じくらい真摯に『今カノと新しい女の子』っていうコンセプトで作り上げているので、非常に感心した。
直接的なエロがないので、肉欲絡めた悲惨な展開は書けないにも関わらず、うまくまとめている。
三角関係モノというには少し弱いけれども(女子同士のバトルとかほぼないし)
まず、キャラ背景含めた導入が良い。
高三までずっと必死になっていた部活動が夏の大会に敗退して終わってしまい、いきなり受験だと
言われてもいまいち実感が沸かない主人公。
昔色々あって大好きになったはずのカノジョほたるは、今でもよろしくやっているし好きなんだけども、
身も心も焦がすような存在ではなく、当たり前の日常の一部になりつつあるという設定。
情景描写や雰囲気が凄く地に足をついたしっとりとしたもので、キャラデザや髪色(銀?がいるけど)からも
わかるように、作品の空気が良く言えば落ち着いていて、悪く言えば地味である。
逆にほたるのキャラ造形はちょっと電波ないかにもなギャルゲキャラっぽいんだけど、その娘と繰り広げる
恋人関係の描写はすごく等身大というか、ちゃんと中高生のガキ同士の恋愛っぽくて、非常に良い。
萌え萌えキュンで押しまくるアッパー作品も嫌いじゃないが、本作のこのノリには一気に引き込まれた。
この辺はスタッフも狙っているところだろうし、自分はそれに見事にハマってしまった口なんだろうと思う。
シナリオは前述の通り、今カノと新しい女の子どっちを取る? って話なんだけど、ドロドロするのは一部の
ルートだけで、後は別れのシーンが切なく美しくまとめられていて、これも悪くない。
ドロドロするのは中々悲惨な事になるけどね(個人的にはつばめBADのシーンが一番好き)
ほたるシナリオ以外は、全部今カノであるほたるとの別れのシーンがシナリオの一つの山場なので、
彼女を好きになれるかどうかで、このゲームの評価がぐっと分かれてくる。
ああいう修羅場というか、別れのシーンで、フラれる側にカワイソウと思えないとつまんなくなるので。
可愛いし、言われるほどアタマオカシイキャラでもないと思えたので、個人的には好きだった。
だからこのゲームが面白いと思えたのかもなぁ。
ほたるシナリオ終盤、ヘタレる主人公に対して信が犬(前作主人公と同じ名前)を引き合いに出して
発破を掛けるとこなんかスゲーうまいと思ったし(前作やってないとアレだけど)
グラフィックは、キャラも背景も素晴らしい。
ささむーはこの頃が全盛期じゃないかなと個人的には思う。
BGMもしっとりした名曲が多く、またクラシック曲の使い方も非常に秀逸である。
一つ欠点があるとすれば、複数ライターによるシナリオの出来の不揃いさか。
ほたる、つばめ、巴辺りは非常に面白かったが、他は……
特に鷹乃はひっでー出来だと思う。
コイツだけで減点5ぐらい行ってしまう。