ギャグが寒い、キャラもコテコテ、最初からヒロインの好感度全開で展開に面白みが薄い
でも、何だろう、この『エロゲーやってる感』は。
ノスタルジーすら覚えるような、この感覚は。
十年前はエロゲハマってたけど、今はなぁ……って思ってるアナタ、一度プレイしてみて欲しい。
多くの作品をやって、糞ゲーボケが死ねと思う事もあったし、なんつー名作じゃと感動した事もあった。
そうこうしてるうちに、こういうサイトで腐るほどのゲームがある事を知って、更に消化する作品は増えていき、
他者の評価を参考にしたり、騙されたりしながら、徐々に自分の中で評価観というか、審美眼みたいなのが
いつの間にか作られていく。
だけど、数多の作品をこなして拡がったはずの視界で見るエロゲーは、何だかつまらないモノに見えて……
本作は、そんな自分に、あの萌えに萌えて、ただエロゲに熱中していただけの頃を思い出させてくれた。
……なんて言うと褒めすぎだが、いやはや、面白かった。
正直、物語には特筆するほどの仕掛けや展開は存在しない。
やってて何となく話が見えるし、各キャラクターの萌えエピソードも想像の範疇である。
前作『Clover Heart's』からやってる歴戦のエロゲオタなら尚更だろう。
だけども、この下手すればだらだら系日常エロゲになり得るほんわかな日常シーンがとても心地よく、
そして飽きさせない。
何だろう……うまく乗せてくれる雰囲気が、この作品にはあるのだ。
『やさしい世界』をちゃんと作り上げてるからだろうか。
前述したとおりギャグなんてほとんど滑ってて、ベッタベタだったりどうにもイタいのもたくさんあるのだが、
いつの間にかクスリとさせられている自分がいる。
かと思えばしっかりグっと来る展開を持って来られた時には、じーんとしたりもしてしまう。
「ば、馬鹿なこの俺が!?」みたいな悪役じみた台詞を吐きたくなるくらい、ヤラれてしまうのだ。
不思議な作品である。
そして、その魅力はいまいち他者に伝えにくい。
オススメする時に『人による』という逃げ口上(失礼)をこれ程使いたい作品も中々無いだろう。
やってる時は「コイツクソ可愛い……」とどのキャラも思うけど、冷静になると何が良かったのかわからない。
そんな作品だったりする。
一応、ちゃんとエロスケ的に評価すべきとこも挙げると、演出面は気合が入っていると思う。
キャラの立ち絵の下にちゃんとウインドウが出て、誰が喋ってるのかわかるアレとか、細かいけど結構
面倒くさいんじゃないかなーと思うけど、良かった。
音楽面も前作のアレンジ含め、うまく本作の良い雰囲気作りを担っている。
前作アレンジといえば、2ndOPはちょっとドキっとした。
まあ、前作プレイ者には想像の範疇でありつつも嬉しいサプライズである。