ErogameScape -エロゲー批評空間-

cholsea433さんのWHITE ALBUM2 ~closing chapter~の長文感想

ユーザー
cholsea433
ゲーム
WHITE ALBUM2 ~closing chapter~
ブランド
Leaf
得点
96
参照数
591

一言コメント

面白かった

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

このライターの作品はいつもそうだけど、特別な事は別にやっていない。
バンド・音楽が主題というかテーマの一つなのに、やれギターの銘柄だのピアノの曲目だの、
そういうよくあるウンチクは一切ないし、そもそもあんだけ物語に深く関わってきているというのに、
テキスト面ではまともな音楽描写すら実質されていない。
声優が歌ってる既存曲だったりこのゲーム主題歌だったりが流れるだけ、みたいな感じなのだ。
これは小説なんかじゃ絶対に不可能な演出で、ライターは雪菜とかずさとの『渾身のライブ』を
CGの切り替えとBGM、ちょっとのテキストで『盛り上がってる』様を演出するのである。
作中人物は「感動した」「すげー」と誰もが言うんだけど、知識の上での評論や批評っぽい事は
一切描かれないのだから、ある意味徹底しているとも言える。
何の専門知識無しで誰でも読める、ってのにこだわってるんじゃなかろうかと思うくらい。

で、結局何を描いてるゲームなのかというと、ただひたすら一人の男が若い頃にした恋愛を
引きずりまくって、色々しょうもないものが展開されていくという、みんな大好き三角関係モノ。
でもまた、これをしっかり読ませてくれるのだ。
昔ワケありで今でも情念の籠った女みたいなのをよく書くライターだなぁと思うんだけど(趣味らしいね)
今回はその『ワケありの昔』をプレイ時間5~6時間くらいの序章として準備して、ネッチリ描くのだ。
序章の終わり方は悲惨で、そのワケありになっちゃったヒロインとこの後どうやってヨリ戻すのかが
すげー気になってしょうがない、秀逸なエンディング。
この時点で、このゲームに対する評価はほぼ決まったと言っても過言ではない。
終章は、ヒロインを追加しつつも結局は序章のワケありヒロインの話がメインとなり、色んなところで
くじけながらも主人公が頑張ってようやくヨリを戻してEND、イイハナシダナー。

……ここまでだったら多分100点だったんだけど、最終章codaが、なぁ。
いや、これあってこそっていうのはわかるし、三角関係の本番はこっからなんだけども。
でも正直、泥仕合が目に見えてる話を読みたいかって言われると、キツいもんがあった。
あそこまで掘り下げちゃうと、後味のいいエンディングなんかあり得ないわけで。
選ばれない女の子の痛みを書いてるのはわかるんだけど、だったら選ばれた方は幸せにしろよ、と。
テーマらしい『幸せの向こう側』を書こうとしすぎて、『幸せのこっち側』が見えなくなってますぜコレ。
ということで、楽しめはしたものの個人的な好みで減点させてもらった。

色々書いたが、本当に久々に集中してドハマりしたゲームだった。
やっぱりシナリオがイイってことになるんだろうけど、個人的には演出面が本当に感服した。
周回プレイ、CGの切り替え、BGM等、エロゲのゲームエンジンでしか出来ない演出が光っていた。
たかが紙芝居エロゲーだけども、こんだけやれるんだなぁっていうのを見せてもらえた。
このライターの本当に凄いところはシナリオじゃなくて、こういう演出を扱えるところだと思う。