ErogameScape -エロゲー批評空間-

chikutakuさんのFLOWERS -Le volume sur printemps-(春篇)の長文感想

ユーザー
chikutaku
ゲーム
FLOWERS -Le volume sur printemps-(春篇)
ブランド
Innocent Grey
得点
85
参照数
540

一言コメント

優しい雰囲気の百合ゲー 感想は長文にて

長文感想

 友達がほしいという理由で、全寮制の女子中に入学した心に傷がある少女が主人公の百合作品です。

 主人公は、引っ込み思案で対人関係に臆病な性格です。果たして主人公が勤まるのかのか?と思っていましたが、読書や映画鑑賞が趣味のため、同級生より知識が豊富で、推理パートが存在するため一定の立場を得ていきます。

 この推理パートに関しては、他の方が書かれているとおり、いわゆる本格物(すべてのピースが提示された状態からの謎解き)ではありません。わたしは、北村薫さんのさらりとした読感の短編集が雰囲気的には近いと感じました。推理パートを本格物にしなかった理由として、犯人捜しを行ってしまうと動機の説明が必要となり、どろどろした動機は本作品に合致しないという制作側の意図があったように思います。(むろん、本格ミステリーを作成できるライターの確保が難しかったという可能性も否定できませんが)
 つまり、推理パートは、日常場面の延長上の演出(同じような場面が続くのを防止する)、および、主人公の活躍場面(これがないと、主人公が地味のまま進んでしまう)と言う位置ではないでしょうか。

 そして、もう一方の日常場面は、「穏やかの日常」としか表現できないような世界です。一応、心あるに傷を克服していく過程も描かれておりますが、えげつない過去が在るわけではありませんので、目を背けたくなる場面もありません。

 本作品は、それらを足した作品、「穏やかな日常」と「推理パートという少し変わった変わった穏やかな日常」(矛盾する表現ですが、このような表現が1番合う気がします)という作品であると思います。

 結論として、この2種の穏やかの日常の雰囲気を楽しめるかが、作品の評価に直結する要素となります。寮で同室の2人(ルートありの2人)がお互いに親しそうに話してるのをうらやましいと感じたり、友達との恋バナや怪談話を「長年の夢が叶ったわ」と喜ぶ主人公に感情移入できるか、冷めた目で見るかのが、この作品に合う・合わないのかの基準ではないでしょうか?

 なお、全体のシナリオについてですが、四部作の一作目という事で、評価する方法がありません。いわば、共通シーンのから個別シーンに入った瞬間で終わる印象です。私の独断では、時計仕掛けのレイラインの1作目の終わり方がこんな感じだったかなぁという印象です(本当に何となくの印象です)。

 私は、まりみての初期の作品や屋上の百合霊さん大好きで、おとボクや月に寄りそう~や花と乙女に祝福をを、「ずっと女装がバレずに進めばいいのに」と感じてしまう人です(書いてて思いましたが、私はもうダメかもしれませんね・・・)。そのような私の主観では、本作品は特A級とはいえませんが、最後まで、非常にいい気分でプレイできました。百合好きで雰囲気が合えばプレイしても楽しめると思います。


 点数の付け方の基準をまだ決めておりませんので、基準(60点)+コンプリートした(+20点)+最後まで楽しかった(+5)という事で、85点としました。



P.S ちゃんと残り三作出るか非常に心配です。実は、この乱文を投書する最大の動機がこれだったりします。