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chikaさんの秋色恋華の長文感想

ユーザー
chika
ゲーム
秋色恋華
ブランド
Purple software
得点
99
参照数
462

一言コメント

まさに究極の「萌えゲー」でした。声優、サウンド、原画、シナリオすべてが文句なしの出来でした。

長文感想

このゲームの最も評価すべきことは、ゲームの方向性がはっきりと決められていることです。もちろんこのゲームはキャラメインであり、土台となる原画が素晴らしいとこはもちろんのこと、さらにそれをバックアップする声優、サウンド、シナリオどれをとっても文句なしでした。

シナリオについては確かに単体で見れば非常に平凡なものですが、キャラの魅力を引き立てる役割としては非常に優秀な「名脇役」でした。ですから、単純に「シナリオがいい」というわけでなく、このゲームに求められているシナリオを作ったという点を評価したい。このことは、簡単な様に見えて実際ほとんどのゲームで出来ていないことです。またこのようなシナリオはキャラがよくなければ本当につまらないものになるだけに、キャラに対して絶大な自信がないとできないことだと思います。(実際、キャラがほぼ完璧に作られているのに、なぜか最後は意味不明な展開になってしまうゲームもあります)さらに、途中で飽きさせないように所々に笑わせる要素があったのも良い点でした。

声優については声優名からもわかるように完璧でした。おそらくこれほど豪華声優でさらにキャラのイメージにもあっているゲームはないでしょう。また、よく問題になっている葵の声なのだが、おそらくこれもpurpleさんがねらってやったのだとさえ思いました。というのは、今回これだけの声優を揃え、前作のまじぷりも声優にはかなりこだわっていたpurpleさんがこの問題点を見逃すだろうか。この程度なら編集でいくらでも改善できたはずだが。また声優の木村あやかさんについてもおとボクの奏などはこのようなことはなかったし、なによりこれほどの実力のある声優がこんなことをやるとは考えにくい。(まあさすがにこれが演技だとは言わないが、製作者はこの点に気づいていたがあえてそのままやらせたのだろう。)ですから、purpleさんは葵というキャラに絶大な自信をもっていたからあえてその特徴としてこうしたと思いました。結果、葵が好きな人にとっては好印象となり、嫌いな人にとっては悪印象になっているようです。これは、伊吹の声にも同様のことが言えます。一見するとこれはあまり良くない事に思われますが、このゲームに関しては非常にうまく選んだと思いました。それはこのゲームが、「全キャラクリアするためではなく、自分の好きなキャラをクリアすること」を目的に作られているからです。(一応、全キャラクリアしましたが)ですから、もともとそのキャラが好きでない人に嫌われてもほとんど関係のないことです。また、葵、伊吹の声優は声質に特徴があるのであって演技そのものは非常に良いのでそれほど問題にはならないと思います。

サウンドもよくできていて、特にOP、EDの良さは特筆すべきものでした。I've以外でこれほどの出来はめったにないものでした。BGMもうまく場面にあっていて良いものでした。しかし、OPムービーについては確かにうまく作られてはいるが、ゲームの雰囲気と合っていなくて浮いてしまっていたのは残念だった。

システムもこれ以上ないというぐらいの出来でした。まじぷりもそうだったが、スキップの早さ、クイックセーブ、テキスト表示の速さ等すべて文句なしでした。これらのことは一見すると非常に簡単なことに見えますが、ここまで良く出来ているのはほとんどないと思います。

全体としての評価は「萌えゲーとしてはここ数年例のない大作」でした。ここまで良いものは、D.C.、それ散る以来ではないでしょうか。よくシナリオが普通すぎるという意見がありますが、だからこそこの雰囲気の良さが出ていると思います。おそらくシナリオメインでこのゲームを作ったとしたら失敗していたでしょう。最終的にキャラを重視する人にはやって損はないと思いますが、シナリオを重視する人には少々退屈なゲームかもしれません。