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changさんの奴隷市場 Renaissanceの長文感想

ユーザー
chang
ゲーム
奴隷市場 Renaissance
ブランド
rúf(ruf)
得点
85

一言コメント

題名に騙されてはいけない。これは純愛物語である。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

歴史のうねりに翻弄されながらも、
大切な人のために必死で未来を掴み取ろうとする者たち。
こういう大河仕立ての18禁ゲームは非常に珍しい。
欧州とアジアが交錯するコンスタンティノープルを舞台とした、
エロゲーというよりはアダルトゲームと呼びたい異色作。

時代設定は17世紀初頭。
栄光に陰りが見えつつあるがなお強勢を保つオスマン帝国(名称は異なる)と、
没落するイタリア都市国家の中で孤軍奮闘するヴェネチア。
史実をうまく使いこなしており、
異国情緒あふれるBGMや芝居掛かったテキストが雰囲気作りに一役買っている。
やたらと癖のある絵だが、慣れるとなかなかどうして悪くない。
用語集で世界観の補完をしているのも親切で良い。
実はヒロイン以外、全ての人物が男性。
ヒロインは華であり、物語を動かすのは男たちなのだ。

肝心のヒロインだが、奴隷という設定上控えめで受身。
昨今の自己主張が激しく、主人公を振り回すばかりの女共とは対極の存在である。
ビアンカの知恵遅れじみた言動には気後れしたが、皆かわいらしい。
その中でもセシリアが特に素晴らしかった。
奴隷に身をやつしながらも気高さを忘れず、母性を併せ持つ女性。
買い取った当初は主人公におびえ、警戒していた彼女が徐々に信頼を寄せていく様に、
保護欲と自尊心(ちっぽけだが男には重要なものである)を満たされた。

他のレビュアーも散々言及しているが、陵辱要素はHシーン増量のついでに過ぎない。
奴隷市場の真価は愛を貫いた先に見えてくる。
好きなエンディングはミアBADとセシリアGOOD。
ミアBADの展開に無常を感じ、セシリアGOODの演出にやられた。
どちらも歴史物ならではの魅力を持っている。
本編が開始からわずか数日の時間経過で完結するのには突飛さも感じたが、
イベントを濃縮した分中だるみが防げたともいえる。

唯一の不満は、ときどき2ちゃん用語がテキストに混じる点。

とにかく、安直な学園物とは一線を画している。
歴史が好きで、か弱い女性を守ることに喜びを感じる男性に是非お勧めしたい。