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cf3さんのアステリズム -Astraythem-の長文感想

ユーザー
cf3
ゲーム
アステリズム -Astraythem-
ブランド
Chuablesoft
得点
75

一言コメント

姉一筋を歩んだ男の悲惨な末路

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

▼システムについて
3つの時代を渡る事もありチャートが完備されているのですが見難いです。また、それぞれの時代を一章、二章、三章と分けているのですが時間移動したことが分かり難い。特に一章→二章の流れの悪さときたら……ムービーかチャプター、日付表示しても良かった。プレイ周りは基本的なものは完備されています。

▼音楽について
OPは3つ、現代、1999年、1996年毎に挿入されます。時代ごとのテーマが良く出ていました。BGMは可もなく不可もなく。特に印象に残るものは無かったです。

▼シナリオについて
ほぼ一本道なシナリオ。分岐として現代と1999年で他のヒロインを選ぶ事が出来ます。そして、その道を歩まず最後まで姉一筋を貫くと悲惨な結果になります。

現代で死んだ姉――自分の罪を償う為に過去に飛ぶのですが、その結果その世界線の姉は救えても、現代で死んだ姉は帰ってきません。たとえ過去で出会う姉達に好意を寄せたとしても、それは現代で死んだ姉の面影を重ねているだけなんです。虚しい事この上なし。しかも、飛んだ時代にいる自分には寝取られ、現代の姉を死に至らしめた病も逆に自分が掛かってしまう始末。

残された時間を震災が起きた当時--1996年に戻り人助けに費やします。すべては現代で姉が守ってくれた命を無駄にしない為、贖罪なんですよね。

どこまでも不幸な主人公。最後には救出中に逆に負傷して死にます。津波に飲み込まれる間際に夜空に映し出される姿こそ本当の姉、1999年ではない、1996年でもない。彼女こそ主人公が愛した姉の姿なんです。幻であれ再会を果たした主人公――これだけが彼にもたらされた救いなんです。他のヒロインに振り向く事なく姉一筋、亡くなった彼女を追い求めた主人公の物語はここで終わります。

エピローグで現代の姉と再会を果たすのですが、これについては許容できません。

記憶の共有方法に関しても時間跳躍が重なった場合のみで、その後の記憶は共有されない--最後の時を迎えるまで姉を想い続け逝った主人公は消えたんです。これまでプレイヤーの視点でありアバターであった主人公の物語は終わったんです。それを他の世界線からやってきた主人公を同一視しろなんて無理。記憶の有無に関わらず、愛すべき愚かな主人公は死んだ彼ただ一人。

姉が幸せになる為、他の男と共に過ごす日々の礎となってしまった主人公。途中まで楽しめた分、このエピローグでだいぶ冷めてしまった……蛇足すぎる