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cafe_artfulさんのはるまで、くるる。の長文感想

ユーザー
cafe_artful
ゲーム
はるまで、くるる。
ブランド
すみっこソフト
得点
92
参照数
2522

一言コメント

ハーレムについてのパラダイムシフト

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

正直全体的にプレイ感は良くない。

作品中で描こうとしているSFとギャルゲーの部分の比重は8:2くらいだとおもうのにテキストはその逆で2:8くらいになってて、薄味なギャルゲの部分をgdgdと引き伸ばされ、大事なSF要素の描写が物足りない。
最近の「マテリアルブレイブ」「創刻のアテリアル」などと同じで、設定の描き方、伝え方に大いに難有りだと思います。大事な所にちゃんと力入れて欲しい。



思い入れの部分抜きで評価すると、甘く見ても55点くらい。SF要素が優れていると言う点を考慮しても70点くらい。全体で見ると、とてもじゃないが、クロスチャンネルとは勝負にならない。
こちらのレビューがもうドンピシャという感じ。
http://erogamescape.dyndns.org/~ap2/ero/toukei_kaiseki/memo.php?game=16531&uid=houtengageki




ただ、個人的にはSF的な部分よりも、ergの宿命である「ハーレム」について最初から最後まで真剣に取り組んだ作品として、ものすごく高く評価できる、したいと思う。この作品は、SF要素というより、このハーレムを「女の子側から求めるとしたら」どのような展開になるか、を語ることにおいてこそ、クロちゃんや最果てのイマよりずっと真摯であったと思います。この作品以前以降で、少しハーレムものについての見方が変わると思います。これはergにかぎらず、禁書などのラノベでも同様に。


http://erogamescape.dyndns.org/~ap2/ero/toukei_kaiseki/memo.php?game=16531&uid=monmon

・ハーレムとはマルチヒロインシステムの結果・副産物として作品外にメタ的に現れるものとは限らない。作品内で、結果ではなく目的として、手段として描ききることが可能である。

・ハーレムとは男が複数の女を占有するシステムとは限らない。むしろ女が男を共同所有するシステムと見ることも可能である。この共同所有は長期的関係の結果ではなく、長期的関係を目的とするが故に発生する。
http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51787221.html


・ハーレムとは特定の人間が常に支配的立場にあるとは限らない。主導権は流動的である。

・他には、従来のメタ的ハーレム要素だが、ハーレムは多分に「一人の人間に対する教育」であり、また唯一的な関係の否定でもあるし、ハーレムの中にも序列がある。たとえば、まどか☆マギカはまどかに対して周囲がハーレム構造を形成しているといえる。そのなかでほむらがやや特別な位置にあるが、ただの百合として一対一の関係を形成しない。


などなど、ハーレムについて色んなアイデアが盛り込まれ、作品内で語られ、消化されていく。私はハーレムものが基本的にあんまり好きじゃなかったのだけれど、むしろ大好きになったかも知れませんw




ただ、このハーレムについてしっかり描くために、主人公の設定が特殊なものになり、
それによって、SF的要素を突き詰める際の障害になったであろうことを思うと、
作品を作るというのは本当に難しいなぁと思います。