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c-aquaさんの明日の君と逢うためにの長文感想

ユーザー
c-aqua
ゲーム
明日の君と逢うために
ブランド
Purple software
得点
80
参照数
83

一言コメント

共通ルートの会話がとにかく楽しい。ただし、個別はちょっと投げやりな感あり

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

まぁ、投げやりというか話がはっきりしないというのは、結局のところ明日香や咲が神様の世界に行った理由ってのが最後まで明かされないのが原因。
結果として、明日香と小夜の話が非常にモヤモヤしたままエンディングを迎えてしまう。

そこは本来であれば想像で補完出来る所でもあるんだが、そもそも「神様の世界」というものが何なのか、それに対する説明もないもんだからそれも不可能。
そういうところの説明は他ヒロインルートでカバーすることによって、全体としてひとつの作品足りえるのではないか、もっと言えばルートを沢山作ることが出来るエロゲーならではの強みだと思うんだが、残念ながら全くそんなことはございません。
折角の神様の生まれ変わりという設定のあるあさひルートも、神様の世界の話はあんまりしないし。
舞ルートに至っては明日香の話しかしないし(これは本当に酷いと思う)。

神様の世界の話をするのにふさわしいのは瑠璃子ルートであったと思う。
瑠璃子は不治の病で、ルート自体は明日香や瀬戸や直樹も含めて残り僅かな命となった瑠璃子と過ごす日々について。
その辺り、なかなか惹き込む感じで描かれていただけに、最後にりんが現れてはい解決!って展開はマズい。非常にマズい。
だからこそここで、りんと共に瑠璃子を連れて神様の世界に行く、なんてシナリオも良かったと思うんだけど。
神様の世界は病気とは無縁の世界であり、瑠璃子の命を永らえさせるにはこれしかない、そのような理由づけをきっちりと出来れば、明日香や咲が神様の世界に行ったことに対しても「何か特別な事情があればそれも已む無し」と、少なくとも納得は出来るものになると思う。

とまぁ、こんなことを考えたところで、結局のところ「神様の世界」がどのようなところか分からない以上、何の意味もないんですがね。
このように個別ルートには理解も納得も出来ないものが多かったけど、共通ルートは凄く笑えました。
そしてこの頃のPurple Softwareの作品らしく、ムービーも素晴らしい。ゲームには収録されていないものの、CG版のムービーも個人的には好きです。