ErogameScape -エロゲー批評空間-

broadsnowさんの恋咲く都に愛の約束を ~Annaffiare~の長文感想

ユーザー
broadsnow
ゲーム
恋咲く都に愛の約束を ~Annaffiare~
ブランド
Hearts
得点
50
参照数
2025

一言コメント

不満点ばかりが目につく。例えば主人公。男のツンデレは見るに耐えないが主人公がまさにそれだったり。どうにもプレイしていて楽しいと思う瞬間が少なかった。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

A、作品全体に関する感想
何故かプレイに集中できない。ツンデレ主人公、テンプレな男友達、暴走して話を聞かない上に急に糾弾してくる妹、おっとりし会話のテンポがスローな幼馴染み、悪ノリする悪友(女)の日常会話・イベントを退屈に感じたのかもしれない。1時間プレイした気分で時刻を確認すると20分くらいしか経っていないようなことが多々あった。話の不満点は後に詳述するが、どうにも話に引き込まれなかった。

Hシーンも話の入り込むのを阻害する要因になったように感じる。まず私のプレイ速度で個別ルートは約4時間程度であった。そしてHシーンは全員3シーンずつあった。ではこの3回のHシーンは個別ルートのどの辺りにあるかと言うと、4時間の個別ルートの中で3時間程度経過後に1回目のHシーンがあり、残り2シーンが1時間以内にあるような構成なのだ。Hシーンが後半に局在しているため話があまり進まないうちにシーンが乱発され、テンポの悪い印象を抱いてしまったのだ。


B、個別ルート感想(不満点、愚痴)
1、一美ルート
妹が人気ある事実や成績優秀者である事実を知らないで可愛がっていると言われてもなあ・・・・・・その程度知らないならいったい何を知っているというのか。

『実習生と言おうがお客様にとっては職員と変わらない。俺たちが粗相をしたらアンナフィアーレの評価に響くのだ。』
と言いつつも学生服姿で大声で騒いだりしてるよなお前ら。学生もアンナフィアーレの一員だろう。それでギャーギャー騒いでいたら同じこと。

私の着替えなら言ってくれれば見せるとか言うのに恋心には無自覚だったというのは流石におかしいだろ。

観覧車の事故の原因が強風というのも頂けない。強風が吹いている、または吹くことがわかっている場合、観覧車は運転中止になるのが普通だろう。電車だって強風を理由に運行中止や徐行運転になる。長年に渡って事故を起こしたことがないという(設定の)アンナフィアーレの安全管理態勢がそんな杜撰なわけがなかろう。

また異世界メルクリアの存在は必要だったのか素直に疑問。まあ両親が事故に遭っているのに無事だった、という話にしたかったのかもしれないが。


2、和歌子ルート
共通ルートで幼馴染みとは言え知らないこともあるという趣旨の発言があった。一方、『長い付き合いで、知らないことなんてないと思ってたけど・・・・・・そうじゃなかったんだな。和歌子の新しい一面に、今さら俺は気づかされていた』という文章がある。異議あり!証人の発言は明らかにムジュンしています。

以前ウィニーが勝手に和歌子の制服を拝借した際にはウィニーに返させていたのに、今すぐ脱げと言って自分で返す展開になるとか最早訳がわからない。馬鹿だろお前。それとも女子更衣室に入りたいがために高度な自己暗示でもかけたのだろうか?

『和臣「しかし、こんな心臓に悪い思いをしたのも、ウィニーのせいだな」』
『呑気に浮かんでいるウィニーに向かってつっこむ。誰のおかげで、人が苦労したと思っているんだ。』
ソウデスネー。


和歌子が留学断念を表明している場面に関して
場面1
『和歌子「和臣くんに見てもらえなかったら意味ないし」』

場面2
『和歌子「あのね、まだ小さかったころ、お遊戯会でお芝居をしたことがあったでしょ?」
和歌子「そのときに、和臣くんが、私の演技、すごく褒めてくれたの」
(中略)
和歌子「あの日から、誰かを演じることで、みんなに喜んでもらえるのが嬉しくなったんだ」
和歌子「とくに・・・・・・和臣くんにね」
(中略)
和歌子「だから私は、日本に・・・・・・和臣くんのそばにいたいの」』

場面3
『和臣「なあ、和歌子。お前、本当に留学しなくていいのか?」
和歌子「えっ」
和臣「俺と一緒にいたいっていうお前の気持ちは嬉しいけど、本当にそれでいいのか?」
和歌子「当たり前だよ。私、留学しないって決めたんだから」
和臣「でもさ、こんなチャンス、二度とないかもしれないだろ?」
和歌子「それはわかってるけど、いいの、私、和臣くんと一緒にいたいもの」
迷いの無い顔で、和歌子が答える。
俺はそれ以上、何も言えなかった。』
とあった。演技はあくまで和臣に見てもらいたいと言い、そして留学しないことを‘迷いの無い顔で答える’とまで描写しているのに、その後あっさりと留学を決意するのはどうなのだろうな。ああ勿論単に疑問に感じているだけでなくて批判しているよ、ライターの力量に関して。

『ユリアン「彼女の将来のためにも、絶対に留学するべきです」
この人は、本気で和歌子の才能に惚れきっている。
話し方からも、その熱意が伝わってきた。
ユリアン「そう、ワカコは世界的なアクトレスになれる可能性があるのです」
ユリアン「キミが、ただ一人の観客でいるのはいいです」
ユリアン「でも、彼女の演技を見るはずだった、数十、数百万の人たちからその機会を奪う資格はありませーん」
俺はその言葉に、世界の舞台に立った和歌子を想像する。
確かにあいつなら、誰をも魅了する演技ができるだろう。
ユリアン「彼女のことを、ホントに大事に思っているのなら、よく考えてくださーい」
ユリアン「どうするべきが、彼女のためになるのかを」
最後に俺に向けられた言葉。
それは、深く、重く、俺の胸に突き刺さった。』
和臣に和歌子を引き止める資格がないと言うが、ならユリアン、お前には拒否した和歌子を連れて行く資格と恋人に説得をさせる資格があるのか?和歌子を引き止めるのがエゴなら、留学しないと表明した和歌子に‘キミのため’と言って留学を勧めるのもエゴに変わりない。

『確かに、和歌子の才能を知っている人間なら、みんなそう言うだろう。だけど本人が望んでいないのに、それは単なる押し付けになってしまうんじゃないか?・・・・・・いや、そんなのは離れ離れになりたくないだけの単なる言いわけだな』
なら、こう思うこと自体は自分が後悔しないための言いわけに過ぎない。日本に居たいと思っている和歌子を説得するのは自分の気持ちを落ち着けるため、つまりエゴである。本人の意思を尊重する態度を恥ずべきものだと断ずることで、本人の意思を無視して説得する行為を無理矢理、美徳であるかのようにしているに過ぎない。

『和歌子には才能もあって、人気もある。そんな人間を、ただ一緒にいたいという理由だけで繋ぎとめておいていいんだろうか。
和臣「・・・・・・あいつの将来のため、か」
ユリアンさんとの言っていた言葉がよみがえる。(‘ユリアンさんの言っていた’の誤字と推測されるが原文のまま表記)
俺にあいつの未来を奪う資格なんてありはしない。
そう、もっともっと大きな可能性を追いかけていってほしいんだ。』
資格資格と相変わらず煩いテキストが続きいい加減ウンザリ。そしてこのシーンの和臣の『もっともっと大きな可能性を追いかけていってほしいんだ。』というセリフもユリアンの『彼女の将来のためにも、絶対に留学するべきです』というセリフも自分達のエゴであることを全く理解していない。和歌子が‘本心では留学したいが和臣と離れたくないがため断念している’というのなら、和歌子のために説得をしようと言うのはわかる。だが、和臣もユリアンも和歌子の心を推し量っているのではなく、和歌子の才能を見ているのだ。和歌子の気持ちを考慮せず、和歌子はもっと才能を伸ばすべきだ、成長するべきだという自らの意見を押し付けているに過ぎない。

『和臣「そのためにも・・・・・・今のままじゃダメだよな」
和歌子にとって、俺は足かせになってしまっている。
好きな相手だから離れたくない・・・・・・その感情で繋ぎとめてしまっているんだ。
和臣「・・・・・・そうだ。俺が隣に立てる男になればいいんだ」
どんなに和歌子が遠い場所にいっても、隣にいられるような、そんな男になればいい。
簡単なようで難しいこと。だけど、挑むだけの価値はある。』
というのも和臣自身の問題であって、和歌子の直接の問題ではない。和臣の自分の心に決着をつけるための決意であって、和歌子の問題を本質的に解決するものではない。和歌子の問題は、留学を断念することに対して和歌子自身に未練がないか、である。演技を上達させるために留学したいと思っているが和臣と離れたくなくて断念したのか、別に留学をしたいとは思っていないのか、が本質的な問題なのだ。俺が隣に立てれば留学することに憂いがなくなって問題解決なんていうのは論点のすり替えに他ならない。


3、心ルート
中盤からはまあまあだが、序盤の和臣が酷い。

『このみ「解決方法があるとすれば・・・・・・」
和臣「あるとすれば?」
このみ「もう一度きちんと、あなたの考えを伝えることね」
このみ「理解してもらうことを諦めたら、それ以上はもうどうにもならないもの」
和臣「それは・・・・・・」
先生の言うとおりだった。
俺は理解してもらう難しさばかり考えて、話し合うことを諦めていなかったか?
まだ、結果も出ていないっていうのに・・・・・・。
和臣「わかりました。津路さんと話してみます」』

と‘話し合い’をすることを決意。そしてその翌日の会話

『心「今日こそは、お礼をさせてもらいますよ、古庭先輩」
和臣「だから、それはもう断ったはずだろう?」
和臣「俺に、俺は必要ない。自分の進むべき道は、自分でどうにかするさ」
(中略)
和臣「というわけだから、これ以上、お礼しようとするのはやめてくれ」
(中略)
心「将来の進路に関わるものが嫌であるというのなら、他のものでも構いません」
心「なにか、欲しいものや、したいことはありませんか?可能は範囲であれば、対応させていただきます」
(中略)
和臣「津路さんの気持ちは嬉しいよ。でも、何をどう言われても、俺の答えは変わらない」
和臣「急がないと遅れるから、先に行かせてもらうよ」
心「あ、待ってください。話はまだ終わってません」
和臣「俺としては完全に終わってるんだってば」』
・・・・・・これが話し‘合い’ねえ。どのあたりが‘理解してもらうため’の話し‘合い’なのか。一方的に自分の意見を押し付けているだけだろう。相手の言い分も全く聞かず、妥協点を模索することもなく、自分の意見を言ってさようならなんて反省したはずの前日の遣り取りと全く同じ態度だろう。

そして数日後、
『お礼を断っているうちに、事態はどんどんまずい方向に向かっている・・・・・・。
これは素直にお礼をしてもらわなかった俺が悪いのか?
待て待て、そんなはずはない!
和臣「これはもう一度ちゃんと、津路さんと話をする必要があるな・・・・・・」』
話し合いは最初からしてないけどな。最初から相手の言い分を拒絶し、そして説得する努力も放棄しているお前にも責任は充分あるだろう。

『和臣「だって、お礼ならもうしてもらったから。俺にはそれで十分なんだ」
心「え?適当なこと言わないでください。私はまだなにもお礼してません」
和臣「いや、そんなことはない。しっかりしてくれたよ、覚えてない?」
和臣「ありがとうって、そう言ってくれたじゃないか」
心「それは、たしかに言いましたけど・・・・・・ごく当然のことですし」
戸惑ったように、津路さんが呟く。
そんな彼女に向かって、俺は微笑みかけた。
和臣「うん、俺にはその当然のことで十分なんだ」
和臣「自分にできることをした。相手が無事だった。ありがとうを言ってもらった」
和臣「それ以上、望むことはないよ。だから、もう俺は十分なんだ」
偽ることの無い自分の気持ちを、素直に伝える。
そもそもがキャストの理念として、決して見返りは求めないことというのがあるんだ。
俺はまだまだ未熟者だけど、その理念を胸に、生きていきたい。
お客様だけでなく、ありとあらゆる人のために、なにか力になれる人間になるために。
和臣「というわけなんだけど、納得してもらえたかな?津路さん」』
では何故、最初からその『偽ることの無い自分の気持ちを、素直に伝え』ようとしなかったのだ?そのせいで心は数日の間とてもとても不愉快な想いを抱えたまま過ごす羽目になっているのだぞ。『お客様だけでなく、ありとあらゆる人のために、なにか力になれる人間になるために、俺はまだまだ未熟者だけど、その理念を胸に、生きていきたい』という目標に反することを自ら行っているではないか。


4、このみルート
まずシナリオが支離滅裂に感じる。そして管理部に入りこのみと信頼関係(あるいは恋愛関係)を築いてから一美の秘密に関するイベントがあった方がシナリオとして盛り上がったのではないだろうか?自分と深く接触した理由は一美の為なのかとか、このみを信頼すべきなのかなどの葛藤が描けただろうに。

以下、支離滅裂に感じた点を列挙
(1)このみに対する態度(警戒態勢)
秘密を知っていることでこのみに対して疑念と警戒心を抱いているのに、事情説明にも釈明にもなっていない一方的な話を受け入れて信じられるというのは何なのか。しかも理由がそんな人には思えないからなんてギャグのつもりか?仮にも信頼していた人間が秘密を知っているからこそ警戒するものだろう。
『和臣「・・・・・・そうだ、一美。お前さ、藤多先生のこと、どう思う?」
(中略)
一美「あー、普通に良い先生だと思うよ?」
一美「美人なのに気さくで優しいし、お話は面白いし」
和臣「そっか、そうだよな・・・・・・」
今、和美が言ったことはほとんど俺が抱いていた印象と同じだった。だけど、それもがらりと変わってしまった。』
という描写すら入れて、このみに対する信頼は完全に失墜し回復していない段階にあることを描写している。これで一美には話さないと約束してくれたから許すなんていうのは土台可笑しい。休み時間にまで押しかけて一美との接触を妨害しようとしていたし、和臣自身『「なんの根拠もなしに信じろと?もしあいつにバラすような真似をしたら、俺は絶対にあなたを許さない」』とまで発言し、簡単に気を許すなと自戒している。それに何より一美の為の秘密なのだ。和歌子相手ですら、『和歌子に詳しいことを話すわけには行かない。こいつなら信頼できるけど、どこから一美に伝わるかわからないし』とある。バラさないと約束してくれようが、暫くすれば居なくなろうが、秘密を知っているだけで充分に脅威なのだ。一美の為を思えば、信頼の有無など関係なく警戒を維持するのが当然の判断だろう。これでは一美に秘密を暴露されることをそれほど恐れていないようにしか感じない。

(2)このみが接触してきた理由に関する和臣の解釈
とあるシーンでは、

『どうしてあそこまで強引に、俺を管理部門に誘っているのか、ようやくわかった。
和臣「目的は一美、か・・・・・・」
思い返してみれば、これまでもずっとそうだったんだ。
必要以上にちょっかいをかけてきたことも、これで納得が行く。
すべては一美に近づくため・・・・・・。』

とあり、別のシーンでは、

『和歌子「先生の和臣くんに対する接しかた、他の子とはちょっと違うよ」
(中略)
和臣「単なる気のせいじゃないのか?」
だって他には考えようがない。』
とある。『必要以上に自分にちょっかいをかけてきた目的は一美に近づくため』だと以前推測していたのに、自分に対する態度が他の人間とは異なるのは単なる気のせいで、理由は『だって他には考えようがない』だなんて噴飯物。和臣(およびライター)の鳥頭には呆れて物も言えん。

(3)事故に対する思い入れ、管理部に対する関心
過去の出来事から事故というものに思い入れがあるにも関わらず、安全管理の要である管理部に対して今まで何ら興味を持っていなかったという完全なる矛盾。管理部に入るか悩む動機もキャストの経験になるだろうからというもの。事故を未然に防ぐ役職であることは考慮の外。これでは事故と云うものに対してあまりにも無関心ではないか。
少し話が外れるが安全管理全般という多岐に渡る仕事を担う管理部の人員がこのみ一人のような描写があった記憶があるが、それが正しければ最早ネタだろう。教師として働いている場合など管理部が空になってしまうではないか。

(4)和臣のリスクヘッジ
一美の秘密に関しては万難を排する為に信頼している和歌子にすら頑なに口を閉ざしている。その一方で、このみと恋人になったことに関しては『学園にバレたら、どう考えたって、問題になる』と理解しているにも係わらず、和歌子には自ら打ち明け、まどか達には『なんだかんだで、その辺の心配はしていない』とあっさり口を割ってしまう。加えて日中、腕を組んでアンナフィアーレ敷地内をデートするわ、女子禁制の男子寮で室内デートするわと隠す気が更々ない。これは明らかに矛盾しているだろう。


5、ウィニールート
『ウィニー「和臣さんが、わたくしの運命の人だからかもしれません」
和臣「えっ」
ウィニー「そう考えれば、こうしてお話しできるのも、つじつまがあうと思いませんか?」
和臣「幽霊が見える運命って嫌過ぎるんだけど・・・・・・」
ウィニー「・・・・・・そんなこと言わないでください。わたくしがこうしてお話しできるのは、和臣さんだけなんですから」
和臣「あっ、ご、ごめん」
寂しそうに微笑むウィニーに向かって、慌てて頭を下げる。
うっかりと、デリカシーのないことを言ってしまった。
和臣「俺は、その、ウィニーと話せるのは、嫌じゃないよ。むしろ、結構楽しいというか」
ウィニー「・・・・・・」
和臣「とにかく、ごめん・・・・・・軽率な発言だった」
俺はひたすらに頭を下げる。
こればかりは、どんな罵りを受けたとしてもしかたがない。
ウィニー「・・・・・・ふふっ、やっぱり和臣さんは優しいですね」』
本当に優しい人間はこんな大失言はやらかさない。傷付ける発言をし、それを謝罪することで評価が上がるなんてどんなマッチポンプだ。おにぎりの梅干は仕方ないとは言え、ウィニーのために買った飲み物がコーラなのもあまりにも配慮が足らない。これで優しいとゴリ押しされてもこちらが困る。