登場人物の心理描写を丁寧に描いている
伏線関係は気付きづらいが結構しっかりしていてライターの丁寧さが窺える。どのルートでも特定の人物が出てこなくなるということもなく、仲間を強く意識できる。
そして、近親相姦という‘絶対の禁忌’を真摯に描いていると思う。エロゲーの中で妹が攻略できる場合、そのほとんどが義妹である。そして仮に実妹であったとしても、なぁなぁに済まされる。周囲の人間があっさり容認するなど有り得ないことであるが、実に簡単に済んでしまう。
彼方と遙は実の兄妹でありながら、兄妹は互いに恋慕している。彼方は長年遙を遠ざけるために様々な行動をとり、最終的にイツノギ島に逃避してしまう。そこで多くの魅力的な女性に出逢うが、それでも遙に惹かれていることに気付き、自身の身勝手さ、おぞましさを嫌悪し苦悩する。そして遙と結ばれることになった後も互いの罪深さを意識して初めてできた友人たちを裏切って逃避のための島、イツノギ島から逃げ出してしまう。最終的に仲間たちは兄妹を祝福してくれるが、それは彼方の苦悩を丁寧に描き、仲間たちの絆を描いたからこそ、認めることができる。
不満としては、仕方ないとは言え遙ルートへの分岐がわかりにくいことである。またイツノギ島と朱鷺の謎については全く触れないのが少々不完全燃焼な感あり。