Live2D以外は素晴らしい作品でした。掛け合いは面白くテンポも良い。設定も珍しい物となっているので読んでいて中弛みする事は一切ありませんでした。時間を忘れて没頭する事の出来る稀有な作品。あと無性にラーメンが食べたくなる。
・シナリオ
プレイ時間は57時間と長いが、非常に面白いので中弛みとは無縁の代物となっている。
なお私は「クロガネ回姫譚 -閃夜一夜-(PSV)」は未プレイの為、本作品を初めてプレイした立場からの感想となります。
既にそちらをプレイ済みであり追加要素のみが気になっておられる方は他の方の感想へ移動されることをお勧めします。
シナリオ面は全てにおいて素晴らしい。
確かに最後の部分は少し強引過ぎるような気もするが、しっかりと全ての謎が回収されており、少々物足りなさは感じるものの一応は結末を迎えていたので私は満足しています。
シナリオの流れやテンポも非常に良く、登場人物もそれぞれしっかりとキャラが立っている。
軽妙な掛け合いが特に素晴らしく良かった。
また設定もテロ対策に特化した学園性という非常に特殊なものとなっているのも新鮮で楽しめました。
主人公の実力も申し分ないものがあり、性格面でも満足のいくものとなっていたのも大きい。
細かい部分での粗や多少の不満はあるが、それを消し飛ばすほどに全体としての出来は非常に良い。
唯一残念だったのは敷島ミカサルートが存在していない点ぐらいか。
・Live2Dについて
こちらについては擁護のしようがない。
何故こんなにも酷い物となってしまったのか甚だ理解に苦しむが、とにかく酷い。
無理に動かそうとしている為、常に輪郭が狂ってしまっている。
最終的にはある程度は慣れたが、それまではあまりの不気味さに直視する事を避けてしまうほどの酷さでした。
せめてoffにすることが可能であればまだ良かったのですが、それすら出来ないというのだから、本当にこの点に関しては理解に苦しむ謎の仕様となっています。
・絵や背景
背景は並。
絵はお世辞にも上手いとは言えない。
まだ男性は良いが、女性には魅力を一切感じられなかった。
これだけならばそう酷評する事も無いが、イベントCGによって背丈や顔の造詣が大きく異なっているのには唖然とさせられた。
別人かと見紛う程にイベントCGと立ち絵が乖離しており、イベントCGどうしでも大きく変化してしまうのはいただけない。
更に輪を掛けて酷いのが年齢による変化を一切書き分けられていない点にある。
女性に関しては幼少から老婆まで、ほとんどの書き分けが出来ていない。
にも拘わらずテキスト上ではその異常さに言及するそぶりも無い事から、原画側に問題がある事が窺える。
元々私は絵柄が酷くとも内容さえ良ければ評価する性質なので本作品も高評価としているが、絵柄を重視される方であれば大きく減点される所だろう。
マブラヴオルタに高評価を付けている段階でそういった基準とする他なかったという側面もあるが。
・声
配役は一切問題無いが、音質に難有り。
PSVに合わせて圧縮されたものをそのまま流用しているのだろうが、高音域が完全に潰れてしまっている。
全体的に膜で覆われたような音質となっている為、折角の声優陣の演技がもったいない事になってしまっているのは残念でならない。
またそれとは別に単純に演技を忘れている方もいる。
石神虎鉄演じる遥そらがそれに該当するが、音質の変化に関係なく新規収録されている音声には覇気が感じられない。
確かに大人しいキャラクターではあるが、大人しいを通り越してやる気のない声となってしまっている。
・音楽
シナリオと並んで素晴らしいと感じた要素です。
戦国ランスを彷彿とさせるBGMがいくつかあるなと思いながら聴いていたが、曲そのものの出来は圧倒的にこちらの方が上となっている。
エレキギターと三味線のような和の要素が絡み合ったBGMが多く、やはりこの二つの相性は良いものだと再度実感させてくれた。
盛り上がる部分やシリアスな場面の両方に素晴らしいBGMが用意されており隙がないのも珍しい。
お気に入りのBGM
・クロガネ
・耐え切れぬ絶望 ・・・始まりは退屈だが1分10秒辺りからは好き
・剣舞・正宗 ・・・特にお気に入り
・剣閃乱舞
・信念の衝突 ・・・こちらも始まりは退屈だが45秒あたりからは素晴らしい
ちなみに残念ながらサウンドトラックは存在せず、PC版予約特典のサウンドトラックは新規音楽しか収録されていないのでご注意ください。
私がお気に入りとしている上記の曲も残念ながら一つも収録されておりませんでした。
発売されると良いのですが。
・システム
Live2D以外は特に問題の無いシステムとなっている。
マスター音量、全画面化、サスペンド機能等必要とされる機能は全て揃っている。
強いて欠点を挙げるとすれば、もはや意味をなしていないチュートリアルの存在や、全て回収しようとすると途端に多大な労力を強いられる終了時の掛け合いが挙げられる。
ブランド恒例であるチュートリアルだが、一切の必要性が感じられない。
無駄にリソースを割くぐらいなら、シナリオ面に少しでも多くのリソースを投じて欲しかった。
終了時の掛け合いそのものは無駄とは思わないが、せめてランダムとするのだけは止めて欲しい。
未読の物が最優先されるような作りであれば、回収も容易となる為非常に助かるのですが。
・総評
原画、台詞の音質、Live2Dに大きく足を引っ張られてはいるが、それを帳消しにするほどシナリオと音楽は素晴らしい作品でした。
久々に満点に近い点を付けられる作品に出合えて非常に満足しています。