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boningenさんのどっちのiが好きですか?の長文感想

ユーザー
boningen
ゲーム
どっちのiが好きですか?
ブランド
HOOKSOFT(HOOK)
得点
50
参照数
749

一言コメント

SMEE寄りのコメディを期待していると期待外れと感じる可能性の高い作品。肝心のコメディ要素はSMEEとは似て非なる物であり、似ているのは主人公が開き直る際の演出音のみ。全体を通してひたすらに眠くなる文章が続く。

長文感想




・シナリオ

プレイ時間は28時間と長め。
攻略対象は4人と少ないが、コンセプト通り一人につき二種類のルートが存在し、文章は使いまわしの存在しない完全に別のルートとなっている為このように長くなったのだと思われる。
キャラクターに愛着が沸けば一粒で二度美味しい仕様となっていたのだろうが、生憎と私には登場人物に魅力が感じられなかったため、同じ対象を二度攻略するのには苦労させられた。
おそらく製作側からすれば苦労するぐらいなら読まなければいいと言われるのだろうが、これは感想を書くのであれば可能な限り全ての文章を読んでからでなければならないと勝手に私自身を縛っているだけであり、これはつまり単純に私とは相性の悪い作品だったということなのでしょう。

だが一番の問題点はその大半を占める日常パートの退屈さにこそあるように思われる。
SMEE寄りとなっているといった評判を聞いていたのでコメディ要素に期待していたのですが、蓋を開けてみるとコメディ要素はそのどれもが大して面白いものではなく、SMEEに寄せようとする思惑のみが透けて見える具合となっていた。
特にコメディパートのツッコミはただの状況説明を大声でしているだけのものが大半であり、少年ジャンプの「銀魂」を髣髴とさせる薄ら寒いものとなってしまっている。
合う人には合うのだろうが、この部分でも致命的なまでに私との相性が悪い。
また個別パートに入ってからというもの、極端に登場人物が少なくなってしまうので非常に閉じた世界での話となってしまうのも退屈さを助長させる大きな要因となってしまっているように感じられた。
そもどのルートにも大した変化がなく似たり寄ったりな展開が続くため飽きやすい。
同じ人物で二度ルートが存在するのだからより大きな変化が欲しかった。

結局のところSMEE寄りとなっているのはその演出のみであり、その際に使用されるSEが完全に同じ物となっている事から、安易にSMEE寄りだと評されている方が多いのではないかと思われる。
ただしコメディ部分の評価は特に人によって評価の変わる部分でもあるので、そういった評価を下されている方々を責める事こそ安直な考えであるといえるかもしれません。
ですのでこのSMEE寄りか否かについては、蓋然性の低い意見であることを留意されたい。

褒められる点はツッコミ役の大八木優の演技が素晴らしかった点のみ。
ツッコミの台詞そのものは平凡だが中の人の演技がとても素晴らしい。
この演技力のおかげで大八木の登場する場面だけは面白いと感じられた。
ここまで良いと思ったツッコミ役は「ピュア×コネクト」の服部清司以来でした。
あれに勝るとも劣らない素晴らしい演技には感服するほか無い。

思い返してみると「ピュア×コネクト」以来、何故かSMEEではツッコミ役が廃されてしまっているが、是非次回作では平野響子を採用したツッコミ役を活用してほしいとすら思える。





・絵や背景

絵については英摩耶の立ち絵のみ目が小さい点以外は問題なし。
背景は可もなく不可もなく。





・声

大八木優演じる平野響子についてはシナリオの項目で既に記してしまっているのでそれ以外について記す。
これはただの好みの問題ではあるが、メインキャラクターよりもサブキャラクターの声優のほうが魅力的であることが多かった。
具体的には橘まおと木村あやかの2名の事を指している。
ただし英摩耶演じる明羽杏子のみ例外で、この声質と演技は素晴らしく良かった。
在りし日の伊藤静を思わせるような素晴らしい声質でした。
完全に同じという程ではないが、ここまで声質が似ていると感じたことは他に無い。





・音楽

特別に印象に残るような曲は無い。
平均よりも少し上といったところ。





・システム

SMEEのシステムとほぼ同じ物となっている。
全画面化やマスターボリューム等の必須機能は全て問題なし。
相変わらずセーブとロード画面がConfig内に内臓されている点については、長年改善に兆しが一切見えないのでもはや諦めている。

ただし一点だけ致命的な欠点があり、"次の選択肢へ"という機能が未読部分もスキップしてしまう一昔前の代物となってしまっているため使い物にならない。
そもそも"次の選択肢へ"を使用出来る場面そのものが限られており、一般的な"次の選択肢へ"の機能とは根本的に異なる歪なものとなっている。
この様な使い勝手の悪い機能ならば搭載しないほうがまだ良い。

その他の細かい不満点は、タイトル画面からクイックロードによる再開が不可となっている点ぐらいか。

良かった点としては、アイキャッチの演出による種類の豊富さが挙げられる。
アイキャッチ自体のCGの種類は少ないが、場面に合わせた演出が随所に盛り込まれており、その種類の豊富さは見ていて飽きを感じさせない。
この部分のみはとても良く出来ている。















・総評

登場人物とのイチャイチャを楽しみたいといった方に特化している。
それを求めていない人種には徹底的に合わない作品なので、そういった方以外の購入は避けたほうが無難でしょう。
またそういった作品を求めている方だとしても、攻略対象に多少なりと魅力を感じられなければ楽しむことは難しいかと思われます。
外見や声優、もしくは登場人物の性格に魅力を感じるか否かを事前によく調べた上で購入を検討されることを強くお勧めします。

私にとっては、これほどまでに全て読み終えるのに苦労した作品は随分と久しぶりでした。
「アマカノ」に匹敵するか、もしくはそれを上回る睡眠導入剤になり得る作品です。
SMEE要素に興味を惹かれた方は、期待はずれと感じる可能性が高いのでご注意ください。