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boningenさんの真・恋姫†夢想 -革命- 孫呉の血脈の長文感想

ユーザー
boningen
ゲーム
真・恋姫†夢想 -革命- 孫呉の血脈
ブランド
BaseSon
得点
90
参照数
718

一言コメント

リメイク元の「恋姫†無双」は10年程前にプレイ済みだが予想以上に楽しめた。追加された文章も膨大なものがあり、分割となっているのにも納得のいく作品でした。 関連作品が多過ぎてどの作品からプレイしたら良いのか分からないという方も多いと思われるので、それぞれの解説や違いも長文感想に記します。

長文感想

・シリーズ解説
コンシューマ版である恋姫†夢想については18禁要素を廃しただけでほぼ違いがないので説明は割愛します。

 「恋姫†無双 ~ドキッ☆乙女だらけの三国志演義~」

最初に発売された作品なので無印と呼称されることが多い。
本文でも以降の呼称は無印とします。
蜀が主体となる物語一本のみで構成されており、劉備の位置に主人公が存在するためリメイク版やアニメに登場する劉備は登場しない。
今更これをプレイする必要性は薄いが、この後に発売されるリメイク版の蜀ルートは酷い出来なので、蜀ルートのみを考えればこちらの方が良いかもしれません。

 「真・恋姫†無双 ~乙女繚乱☆三国志演義~」

恋姫†無双のリメイク作品。
前作と比較すると登場人物やシナリオに大幅な修正が加わっておりシリーズの中では最も評価の高い作品。
一般的に恋姫とはこの作品を指す場合が多い。

最も大きな変更点は魏と呉のルート追加であり、蜀ルートも劉備追加のみならず内容そのものも大幅な変更が加えられている。
劉備が存在する為、当然の如く主人公の立ち位置も変更されている。

古い作品ですがWindows10でも何故か動作するようなので、その点を気にする必要はありません。
またWindows8対応パッチも公開されており、プレイされる際は念のため事前に適応される事をお勧めします。

シリーズ全体を通してもこの作品をまず最初にプレイすることをお勧めするが、無印には挿入歌として収録されている"久遠 ~詩歌侘~"という名曲が真・恋姫†無双では未使用となっている点のみ非常に残念です。
その代わり"あさきゆめみし"というこれまた名曲が新規収録されているので一概にどちらが優れているとも言えないのですが、この点だけは留意されたい。

またED曲についても無印で使用された"志在千里 ~恋姫喚作百花王~"のPiano Arrange版のみとなっている。
個人的には無印版のほうが曲としては好きなので残念な所。

もし"真・恋姫†無双"の収録曲に少しでも光る部分を感じたのなら、"久遠 ~詩歌侘~"と"志在千里 ~恋姫喚作百花王~"は是非一度聴いてみる事をお勧めします。
どちらも「茶太 Works Best」に収録されておりAmazonにて視聴することも可能なので、その上で判断されると良いかと思われます。

 「真・恋姫†無双~萌将伝~」 

真・恋姫†無双のファンディスク。
萌小伝と揶揄されるほどに炎上した作品。
炎上のきっかけそのものも酷いが、その後のメーカーの対応が輪をかけて酷い。
この件で私自身も最近までBaseSonを忌避していた。

挿入歌の夢笑顔だけは素晴らしいので、改めて曲は素晴らしいブランドなのだなと再認識した作品でもある。

 「真・恋姫†英雄譚」

発売順とは異なるが、後に発売される真・恋姫†夢想 -革命-のファンディスクのような内容。
購入するならば追加シナリオが収録されている真・恋姫†英雄譚 123+PLUS ~乙女艶乱☆三国志演義~をお勧めします。

 「真・恋姫†夢想 -革命-」

真・恋姫†無双のリメイク。
解像度が1280x720に変更され、新規武将や既存武将の個別シナリオの追加が行われている。
またメインシナリオについては完全に一から書き直されているのでリメイク元と共通している部分は個別パートのみとなる。
リメイク元とは違い三国それぞれが別売りの計3作品となっている。
音声も全て新規録り下ろし。
ただし音声はリメイク元の作品と比べると声優交代や声の劣化が見られる等の問題点があるので、この辺りに拘りがあるのなら真・恋姫†無双を選んだほうが無難かもしれません。
私個人の意見としては交代となっている声優についても驚くほどに違和感がなく、この難しい問題に対して最大限の配慮がされていると感じた。むしろより好みの声質の方に交代となっている例もあるほど。
特に新たに夏侯淵役を務める事となったあじ秋刀魚さんには驚かされた。
元々落ち着いた演技でこそ映える声質だとは思っていたが、まさかこれほどまでに違和感無く仕上げてくるとは。
役柄に合った変更も重要だが、前任の如月葵さんの独特な雰囲気とでも呼ぶべきものまで完璧に再現されているのはこの方だけでした。

余談ですが革命の3作品が一纏めとなったセット品として販売される可能性はないと公式が明言していますので、英雄譚のようにセット品を待つ必要はありません。

  確認出来ている声優変更点一覧
郭嘉役 山崎波子 → 橘まお 18禁声優のみ廃業
李典役 水鏡 → 春乃いろは 18禁声優のみ廃業
夏侯淵役 如月葵 → あじ秋刀魚 廃業
諸葛亮役 楠鈴音 → 葉月風子 役柄にそぐわなくなったという本人の意向により交代
陳宮役 椿丸子々々 → 狛江うにこ 18禁声優のみ廃業
ミケ役 西野みく → 藤森ゆき奈 → 一原わこ 廃業

  声に違和感を感じた声優
曹操役 乃嶋架菜
典韋役 てんかわののみ
張梁役 桜野マヤ
張宝役 御苑生メイ





・解説まとめ

まず初めにプレイするならば「真・恋姫†無双」か「真・恋姫†夢想 -革命-」のどちらかとなるが、それぞれに良い点があるので一概にどちらが良いとは言えない。
シナリオの総量やクリックしても音声が中断されないといった点では革命が勝っているが、声質の劣化がなく三国一纏めとなっている為の値段の安さを考えると真・恋姫†無双に軍配が上がる。
この辺りをよく吟味した上で購入されると良いかと思われます。

最後に至極個人的な見解を述べるとするなら、最初にプレイするならば「真・恋姫†無双」をお勧めします。
その結果として恋姫を面白いと感じたなら、内容がうろ覚えとなってくる数年後に改めて革命を購入されるとより再度楽しむことが出来るのではと思います。


解説終わり
以下は通常通り「真・恋姫†夢想 -革命- 孫呉の血脈」についての感想となります。














・シナリオ

58時間という総プレイ時間を見てもらえれば分かると思うが、文章量はかなりのものがある。
これは全ての個別シナリオを読んだ上での時間です。

恋姫はメインシナリオの合間に個別シナリオを選択する方式となっているのですが、この選択数には制限があり1周で全てを回収する事は不可能となっている。
周回前提となる評判の悪いシステムなのだが、クリアフラグのみ立てたセーブデータを適用する事で回避することが可能となっている。
"誠也の部屋"というサイトにて入手可能となっているので周回せずに終えたい場合は適用することをお勧めします。

内容としては膨大な登場人物それぞれの個別パートが豊富にあり、しっかりと個性が確立されている辺りは流石としか言いようがない。
リメイク元でも豊富にあった武将の個別パートもさらに追加されているので文句の付けようがない。
文章自体も癖のない素直な読みやすい文章で統一されている為、複数ライターである部分を感じさせない作りとなっている。

メインシナリオに関しても一から書き直されているだけあり、リメイク元を経験したことのある私でも十分に楽しむことが出来た。
どちらがより優れていたかと問われると困るところですが、少なくとも劣っているとは感じませんでした。
個別パートの追加分も既存のシナリオと矛盾することなく、また違和感も感じさせない自然なものとなっていた。

シナリオ面では大幅に修正や変更が加えられている点については、リメイク元の作品をプレイした上でこそ真価を発揮する変更であったように思われる。
どちらにせよ熱い展開や泣いてしまうような展開といったシナリオゲーで特に重要視されている要素は非常に高い水準で満たされているので素晴らしい作品と言えるでしょう。
素晴らしい名曲とも相まって、その相乗効果は目を見張るものがある。

今回が初登場となる黄祖についても敵側でありながらもその行動には芯の通った強い理念が感じられ、その一貫性には好感すら覚えるほどでした。
特に黄祖役の和葉さんの演技が素晴らしい。
どこか得体の知れない雰囲気をこれでもかと醸し出しているにも関わらず、言動自体は非常に慇懃であり所々では相手を思いやる等といった良い面も見られ、単純な悪役にはない魅力を醸し出している。
この難しい役柄に声質や演技が素晴らしく合っていた。

結末にしてもリメイク元とは違った救済がなされている部分があるのも良い。





・戦闘パート

戦闘システム自体はリメイク元とは全くの別物となっている。
前回のような陣形によるジャンケンのような要素は廃止されており、出陣させて武将によるスキル攻撃がメインとなっている。

戦闘skip機能が実装されているので苦手な方はSKIPすることが可能だが、戦闘中にも台詞が存在するので、出来る限りスキップせず戦闘されることをお勧めする。
難易度も低いので苦戦することも少ないが、万が一戦闘に詰まった場合の為にお勧めの武将を記しておきます。

基本的に"自軍の○○が少ないほど、威力が増加します"系統のスキルが強力なのでこの辺のスキルで固めるだけで優位に立つことが出来る。
 お勧め武将一覧
 ・周瑜
 ・程普
 ・陸遜
 ・甘寧

残りの1枠はお好みで。





・音楽

総数は106曲と圧倒的で、無印、真・恋姫†無双、萌将伝の三作品のBGMがほぼ全て使用されている。
元々品質の非常に高い楽曲が多かっただけにこの判断は正解だったように思う。
正に集大成と呼ぶに相応しいものとなっていました。

余談だが、クリア後に開放される鑑賞画面では曲順がそれぞれ過去に発売されたサウンドトラックの収録順となっているようです。
それとこの鑑賞画面のみで使用されているSD絵は素晴らしいものがあるので見ておくことを強くお勧めします。

 新規楽曲と思われる曲(英雄譚にて使用されている可能性があるが、こちらは未プレイなので確認出来ず)
  ・故宮之風
  ・探路最善
  ・我叫君応(call and response!)
  ・燎火のフォルトゥナ
  ・Bгavє Sφul -炎-

 未使用楽曲一覧
  無印
   ・蒼天の向こうへ
   ・志在千里 -orgel Version-
   ・久遠 ~詩歌侘~
   ・Howling Soul
   ・蒼天 -ryo.s World-
   ・蒼天巳死 黄天当立
   ・剣折れ矢尽き
  真恋姫†無双
   ・華蝶見参!
   ・戦いの挽歌
   ・志在千里~恋姫喚作百花王~ PianoArrange
   ・我等詠ウハ兵ノ道標
   ・五胡の凶族
   ・抜刀せよ!
   ・名門の誇りと共に
   ・彼方の面影
  萌将伝
   ・The (END )of KH†MS
   ・飛将軍呂奉先
   ・夢笑顔
   ・真紅の呂旗-The ONE-
   ・赫神楽
   ・豪奢絢爛
   ・志在千里~恋姫喚作百花王~ last edition

 お気に入りのBGM
  ・日々是和々
  ・永遠 -ryo.s World-
  ・勝ち鬨
  ・休息戦士
  ・小覇王の雄叫び
  ・反撃の狼煙
  ・Soul

 お気に入りの歌
  ・あさきゆめみし
  ・志在千里 ~喚作百花王~KAKUMEI ver

ゲーム内の楽曲夢想に存在するBгavє SφulとBгavє Sφul -望-の違いは分かり難いが、Bгavє Sφulがフルの音源となっており、Bгavє Sφul -望-はその半分のGame verとなっている。
また蒼天の覇王のBгavє Sφul-蒼-との違いは一部歌詞が異なっているのみで基本同じ楽曲となっている。





・声

無印と比較すると袁術役の巻田彩乃さんと呂蒙役の犬山遊々さんの演技が特に良くなっていた。
これは演技力が向上したというより、演技そのものの方向性に変更が加わったためだと思われるが、素晴らしく良くなっていた。

また従来通りの演技となっているその他の声優に関しても、元々呉の勢力は他と比べて設定上の年齢が高いため違和感を感じることは無かった。
むしろより貫禄がつくことによって迫力のある演技となっていたように思う。





・システム

これといって欠点のない優秀なシステム。
必要とされる機能はほぼ全て備わっています。





・絵

CGや立ち絵に関しては程普の一部立ち絵に違和感を感じたが、それ以外は問題なし。
背景はリメイク元と比較すると圧倒的に良くなっている。











・総評

三国の中でも最も好きなルートだったので購入したが、リメイク元同様に素晴らしい出来でした。
単純なリメイクではなく、一から作り直している点も素晴らしい。
これを機に購入を控えていた蒼天の覇王も購入してみようと思わせるものでした。
リメイク元をプレイされた経験のある方も、そうでない方にもお勧め出来る素晴らしい作品です。