「narcissu」と「すみれ」の要素を上手くかけ合わせている良い作品でした。シリーズ全てに言える事ですが、出来れば親しい者を亡くす前に読んでおきたかった。長文感想の最後にはシリーズ全体としての評価も記しています。
・シナリオ
プレイ時間は5時間とシリーズの中では若干長めの作品となっているが、これは「すみれ」がどういった作品なのかを説明する要素がいくらかを占めているからだと思われる。
「すみれ」は未プレイでも問題のない作りとなっているが、「すみれ」のネタバレ要素をがっつりと描写しているので、あちらをプレイする予定があるのなら先にプレイしておいた方が良いでしょう。
余命を宣告された側が主人公となっているが、本作品で得られたものはその逆の立場にこそあったように思われる。
見送る側となった場合にどのように接すればよいのか、人それぞれの問題ではあるが、そういった立場に立たされた時の事を深く考えるきっかけとなった。
勿論余命宣告された側の事をも考えたのは当然だが、結局の所それは実際にその立場に立たなければわかりえない問題であって、それを今考えたとしても答えは出ない。
そういった様々な事柄を考えさせられる作品でした。
私自身、数か月前に親しい者を亡くしたばかりであった為、本作品は身につまされるものが非常に多くあり、もっと前に読んでおけば良かったと強く後悔している。
どちらの立場になるかはわかりませんが、私のようにならぬよう早めに本作品のシリーズを読んでおくことを強くお勧め致します。
・音楽
相変わらず非常に良い。
いくつか「すみれ」の楽曲が使用されており、これは「Narcissu 10th Anniversary Anthology Project」のOSTには収録されていないため、欲しい方は「すみれ」のOSTを別途購入されると良いでしょう。
「すみれ」も非常に良い曲が多いので、「Narcissu」の音楽が好きな方ならば気に入る可能性が高い。
「すみれ」から流用された物以外に新規の曲は無かったように思うので、お気に入りは「すみれ」の物からのみ選んでいます。
お気に入りのBGM
・つぼみ
・雨のマージナル
お気に入りの音楽
・Sleeping Pretend
・ピアノ
・システム
全画面時の挙動のみ変更されており、デファルトで解像度を変更せずに拡大処理する形となっている。
それ自体は歓迎すべき点なのだが、本作品を起動したままスリープを挟むと、この機能が正常に動作しなくなる。
この問題は本作品がアクティブであるか否かや、全画面であるか否かに関わらず、起動したままとしていると必ず発生するため回避するには本作品を再起動する以外に術はない。
・総評
内容としては「Narcissu1」を超える事は叶わなかったが、強く死生観を感じさせる作風は健在であり、「すみれ」とも上手く掛け合わされていた。
親しい物を亡くして後悔する前に、迷わず購入されることをお勧め致します。
・シリーズ総評
「Narcissu」シリーズは本作品で終わりとなる為、最後に全てを纏めた感想を記す。
プレイ時間の合計は30時間と予想以上に長かった。
作風も全体的に重い為、数字以上に長く濃密であったように思う。
全体としての評価は96点となります。
どれも良い出来であったので作品ごとの優劣を決めるのは難しいが、やはり一番良かったのは「Narcissu1」であったように思う。
次点で「Narcissu2」、「Narcissu3」の「メサイア」と「死神の花嫁」、「ナルキッソス -スミレ-」となり、その次に残りの作品が入る形となる。
死生観を題材とする作品はこれまでにも多数読んできたが、これほどまでに直接的に訴えかけてくる作品は初めてでした。
全編を通して非常に考えさせられる内容が多く、得るものも多かった。
内容も非常に良い物が多く、死期を突きつけられる葛藤だけでなく、残される側の葛藤や残されるものに対する不器用な気遣いに至るまで丁寧に描写されており、さらにはホスピスを運営する側の思い、無力感に苛まれる医師やヘルパーといった様々な視点からも本題が掘り下げられている。
読んでおいて損は無いという作品は多々あるが、本作品はむしろ読んでおかなければ損をする作品と言えるでしょう。
私は本作品を読む直前に親しい者を亡くし、何もしてやれなかったことを深く後悔しているので、その様な事の無いよう可能な限り早く本作品を読まれることを強くお勧め致します。
また音楽も非常に良い物が多かったため、最後にシリーズを通してのお気に入りの音楽をまとめて記しておきます。
お気に入りのBGM
・スカーレットarr
・悲しき調べ
・週末の過ごし方
・ナルキッソス -inst2-
・切なる想い
・誰が為に
・120円の冬より
・ここにいる
・鳴る高架線 2007
・ナルキッソス -inst-
・つぼみ
・雨のマージナル
お気に入りの歌
・dear friend
・ねこ王国の姫
・半分の魔法
・Sleeping Pretend
・ピアノ