話の本筋はとても面白いが、広げきった風呂敷が一切畳まれていないので読後感は思いのほか悪い。悪い意味で衣笠彰梧の特徴が強く滲み出ている作品。
作品自体は両作品ともに発売直後にプレイ済み。
本作品単体では再プレイしようという気は起こらなかったが、暁の護衛を再プレイしたのを機に追加シナリオの確認も含めて再プレイ。
・リメイクによる比較
珍しくリメイク前の作品を所持している場合は無料アップデートすることが可能となっている関係で、暁の護衛のように作品を一つのexeへ統合といった事は成されていない。
当然の如くシステム環境も全て同じ物となっている。
無料アップデート可能ということ自体は素晴らしい。
具体的な追加シナリオ箇所については記憶がかなり怪しくなっており、はっきりとしたことは申し上げられない。
記憶している限りでは
・水野凛、倉屋敷和葉ルートの最後にショートストーリー追加
・片桐愛佳、呉羽ルート追加
・Re:Collectにマリアルートらしきものと、大善寺涼風ルートから分岐する毒殺されないノーマルルート追加
"らしきもの"というのは、あまりにも展開が雑過ぎて評価に値しない酷いものだったからです。
ルート追加と呼ぶにはあまりにもおこがましいものだが、他に適当な表現も思いつかなかったためこのような曖昧な表現となっています。
その他にも一部イベントCGの追加やシナリオの微調整がなされている。
注意点として、コレクターズエディションと銘打っているにも拘らず、レミニセンス予約キャンペーンにて配布された"レミニセンスあぺんどディスク"は付属されていない。
これが無ければRe:Collectの希望アフターと話が繋がらず混乱する事になります。
・シナリオ
以下から呼称を、レミニセンスは"前作"とし、レミニセンス Re:Collectを"続編"とする。
プレイ時間はそれぞれ
・レミニセンス 40時間
・レミニセンス Re:Collect 20時間
レミニセンス本体は十分な文章量があるが、続編のRe:Collectの文章量はFDと呼んだほうが相応しい程度のものでした。
ただし内容そのものに関してはRe:Collectのほうが素晴らしい。
やはり外交というからには戦争を視野に入れた不安定な状態の方が読んでいる側としては先の予想が難しく楽しみやすい。
前作のホープ対ドリームでは既にある程度安定した状態からの経済外交が主となっていたので、外交そのものに緊張感はあまりなく、ときたま見せる主人公の有能さを楽しむ事しか出来ませんでした。
そういった意味では前作の不満を解消する続編らしい続編だったといえるのかもしれません。
日常会話や話のテンポもかなり良いので、退屈さを感じることはありませんでした。
エロゲー特有の登場人物の大半が女性ということもなく、男性もしっかりと描かれているのは特に好印象。
登場人物の数も多く、作品に飽きを感じさせない要因となっている。
話そのものも、一見冴えない主人公が周囲の評価に反して功績を重ねていく姿は読んでいて痛快でした。
特に続編から登場する大善寺涼風は外見、性格、声の全てに満点を付けられる素晴らしい人物でした。
着物というのも大変素晴らしい。
このまま行けばかなりの高得点をつけられる作品だったのですが、肝心の締め方が非常によろしくない。
広げきった風呂敷を綺麗に畳めていないといった時限の話ではなく、風呂敷を畳む気が一切感じられない。
しっかりとルートの用意されているヒロインにしても、交際を始めるにあたっての障害等を乗り越えてゆく過程すら碌に描かれず、場合によってはこれからそういった描写が始まるのかと思えばルートそのものが終わっていたりと、根本的な解決を一切無視した強引な展開も存在する体たらく。
どれもこれも尻切れとんぼとなっており非常に後味が悪い。
物語そのものの伏線等も完全に放置されている。
暁の護衛繋がりのキズナと海斗を登場させているにも関わらず、具体的な経緯やその意味は一切明かされず、完全に意味のない登場となってしまっている。
また続編で新規登場となっている森由香にしても、序盤に登場するだけでその後は一切物語りに絡むことも無く空気と化している。
しっかりとした立ち絵があり配役も大橋彩月となっていることを考えると、これは不自然としか言いようが無い。
どう考えても、新ヒロインとして登場させておきながら製作途中でルートそのものが没になり、そのまま放置されてしまっているだけのように思える。
東野特務官周りにしても、険悪な流れから和解してゆくのかと思えば、こちらもそのまま放置されてしまっている。
その代わりに前作では何故か攻略不可となっていた佐々野まどかを攻略することが可能になっているのかと思いきや、出番そのものがほぼ存在しない。
正直なところ、前作ヒロインのその後よりもこういった全く新しい人物のルートを優先して描いて欲しかった。
特に攻略不可となっているマリア、宇賀雪菜、宇賀時雨、佐々野まどかのルートを追加して頂きたかった。
・絵や背景
これについては文句なしの素晴らしい出来でした。
背景も暁の護衛から進歩しており、よく出来ている。
・音楽
一曲だけ素晴らしいBGMが存在するが、それ以外は可もなく不可もなくといった出来。
また「レミニセンス」のサントラは初回限定版に付属されているのでわかりやすいが、「レミニセンス Re:Collect」のサントラはA Ka Best コンプリートサウンドBOX 2014でしか入手不可となっているので非常にわかりづらい。
コレクターズエディションと銘打っているのだから、この辺りの入手難度の高いものも付属して欲しかった。
これはシステムの項目の方が適切かもしれないが、音楽鑑賞にOPやEDが登録されない仕様にも不満が残る。映像が登録されない以前に曲そのものが登録されない。
お気に入りのBGM
・郷に懐す・・・これだけは本当に素晴らしい。
この曲の存在だけで評価に5点加算しています。他が平凡な曲ばかりだったので不意を打たれたというのも大きいが、それにしても素晴らしい。
・システム
不満点が多いので以下に箇条書きで記す。
・解像度を変更することなく全画面にすることは可能だが、最善面固定となってしまうので裏画面へ移動することが出来ない。
・OPの音量変更不可となっているので、設定項目の全体音量で下げていても大音量で流れてしまう。
・スリープから復帰すると全画面時の画面が引き伸ばされないバグあり。これはプロセス再起動以外に回復する手立ては無い。
・個別音量のSEとシステム音の違いがわからない。少なくとも実際のシステム音はその両方の影響を受ける。
・トップ画面からクイックロードすることが出来ない。
・恭一ルートの場所が不適切。回想内のため右クリックをすると回想終了確認が出てしまい、さらに右クリックでキャンセルすると次の台詞に流れてしまう。
・シナリオ不整合。アクセラの裸を見ていないにも関わらずその後見たことがあるかのような場面が登場する。
・片桐愛佳追加ルートでは愛佳の音声に違和感を感じる。鼻声のような変化と滑舌にも違和感を感じる。
・追加されたノーマルルートでは藤堂政宗と宇賀誠之助の音量が少し小さい。
その他の機能には特に不満は無い。
全体音量調整や次の台詞まで音声継続といった最低限の機能は存在する。
テキストの表示速度をかなり早くすることが出来るのは数少ない長所といえる。
・総評
如何な理由があったのかは憶測することもままならないが、名作となりうるだけの可能性を秘めていた作品にも拘らず、捨て子のようにぞんざいな扱いを受けている。
Re:Collectであれだけ面白い展開になっていたというのに、何故この様な結果となってしまったのか。実に惜しい。
それでも結末以外の部分はかなり良く出来た作品となっているので、結末がしっかりしていないと許せないといった方以外にはお勧め出来る作品となっています。