ErogameScape -エロゲー批評空間-

boningenさんの魔導巧殻 ~闇の月女神は導国で詠う~の長文感想

ユーザー
boningen
ゲーム
魔導巧殻 ~闇の月女神は導国で詠う~
ブランド
エウシュリー
得点
89
参照数
616

一言コメント

エウシュリー作品では最もシナリオの出来が良く、独特な戦闘部分も慣れれば問題なくこなすことが出来る。やはりファンタジーばかりではなく、兵器の要素が加わったほうが楽しいと実感させてくれる作品でした。

長文感想





こちらも他エウシュリー作品の感想と同様、発売当初に一度プレイしているが全てのルートを回収した訳ではないので、数年ぶりに初めから再プレイしています。
といっても本作品では回収の面倒なユンガソルENDと何故か残っていたマルギレッタENDのみが未回収という状態で、ほぼ回収は終えていましたが。











・シナリオ

特別良い物語という訳ではないが、展開が実に自分好みでした。
国取りや出世といった要素はやはり良い。
これまでファンタジー要素しか存在していなかったエウシュリーにも、ようやく兵器や機械要素が加わったのは特に素晴らしい。
特に物語後半の流れはエウシュリー屈指の胸が熱くなるような展開が多い。
「封緘のグラセスタ」で唯一欠けていた部分でもあります。

エンディングは複数用意されているが、しっかりと下調べを済ませておけば全てを回収するとしても4周前後で済む形となっている。
以前プレイした際にはこの下調べをしようにも発売当初であった為に、肝心の情報自体が不足しており試行錯誤するも途中で断念したという過去がある。
下調べなしに自力でプレイするとなると相当な労力を強いられる可能性が高いので、可能であれば事前にルートの確認や条件等は調べておくことをお勧めします。

他にも良い点としては、周辺国との関係をどのようにしていくかで様々な展開を見せていくのも面白い。
また選択や行動如何によってはかなり黒い展開にもなりうるので、戦争をしているという雰囲気を感じ取りやすい。

重要な役回りを男性人物が複数担っているのも素晴らしい。
こういった種類の作品は重要な部分はのほぼ全てを女性が担うというのが典型ではあるが、それでは物語の厚みにいまいち欠けてしまう。
詳細は声の項目にて後述するが、それぞれにしっかりと声が付いているのも好印象。

ここまで褒めちぎってきたが、あくまでもゲーム性のある作品の中ではという前提での評価なので、純粋な読み物として期待することは禁物であると付け加えておきます。

残念な点としては、アル等の魔導巧殻が非攻略対象となっていることが挙げられる。
最も親交を深める役回りであるにも関わらず、攻略対象外となってしまっているのはいただけない。
また似たような点となるが、セーナル商会のシーラが攻略対象外となっているのも残念でならない。
上記の不満はアペンドで解禁される要因だと思っていたが、肝心のアベンドは予想に反して発売されることは無く、当初から予定されていなかったのか何らかの不測の事態が発生したのか定かではないが、ただただ残念です。

それとこれはシナリオとは異なる部分になるが、捕獲したモンスターの配合システムも非常に面倒なシステムとなっている。
特定の組も合わせで配合すると特別変異を起こすシステムとなっているが、この組み合わせがわかり難いことこの上ない。
さらに上位のモンスターを配合する場合、この配合を何度も繰り返す必要があり無駄な手間以外の何物でもない。
せめて一度でも配合したことのある変異種は配合先を指定すると自動で配合されるようなシステムが欲しかった。





・戦闘

慣れが必要とされるが、慣れてしまえば問題はない。
やり方次第では要求される戦力の半分以下で砦を落とすことも可能なのでよく出来ていると感じた。
堅牢な城塞に阻まれてしまう場合も事前に破壊工作を行うことで回避することが出来、戦略の幅は思っていたよりも広い。

ゲームを進めてゆく上でのコツを以下に記す。
 ・戦闘面
  ・優秀な汎用ユニットはシルフィと密偵辺りだが、汎用ユニットではなく固有ユニットを育てたいのであれば無視しても構わない。
  ・属性は重要なので相手によって小隊を変更する。
  ・なるべく3対1になるよう相手を釣り出す事を心掛ける。
  ・操作に慣れていない序盤はスペースキーで一時停止してから指示を与える。

 ・内政面
  ・セーナル商会を一刻も早くLv3にする。
  ・農業や土木の生産系統はLv2までで良い。
  ・何を建てるか迷ったらフラグに関係する兵器か魔術研究所を建てる。
  ・ラギール斡旋所で雇用可能な神官は領主に最適。

その他の細かい部分はwikiを参照することを推奨します。

こういった戦闘システムを見かける度に「ギャラクシーエンジェル」を思い出してしまう。
あれと同じように3D空間を一人称視点でリアルタイムに飛び回れたらどれほど良かったことか。





・音楽

OP曲はエウシュリー作品ではかなり良い部類だが、特別良い曲という訳ではない。

お気に入りのBGM
 ・誓いの言葉・・・しっとりした曲がお気に入りになるのは昨今では珍しい。最近はこういった曲が疎かにされがちなのは何故だろう。





・声

どの声も役柄とよく合っており、違和感を感じることはない。
アルの声については癖が強すぎて一部からは批判の声が上がっているが、私は一切気にならなかった。
むしろ聴けば聴くほど味の出る特徴的な演技と声質なので、今ではこれで無ければならないと思う程。

もう一点評価している点としては男性陣の量と質です。
しっかりとした立ち絵や声が付いている人数が11人にも上るのは純粋に驚いた。
また配役もこれ以上ないほどに役柄と合致している上に、表でもよく耳にする方の声ばかりで文句の付けようがない。
具体的な表名義については伏せるが、実に素晴らしい。





・システム

相変わらず全画面化すると常に最前面にいようとする非常に面倒なシステム。
攻略サイトとの行き来が非常に面倒なのでSandBurstで擬似的に全画面化してプレイしていました。

戦闘中の一時停止にしても画面上に一時停止ボタンが存在しないのでマウスのみでのプレイは不可能となっているのも理解しがたい。
街作りのシステムは面白いと感じたが、1×2やL字等の隙間を埋めるものが無いのが残念。
ターン終了時の他国の情勢が流れる画面についてもctrl等でスキップ出来ず、マウスを連打する他ないのも疲れる。

環境設定ではテキスト表示速度が遅過ぎるので0にするしかないといった不満点はあるが、それ以外の最低限の機能は付いている。















・総評

エウシュリーでは異色の作品だが、出来は1.2を争う素晴らしいものがある。
アペンドが存在しない関係で過去作品との繋がりもほぼ存在しない為、エウシュリー系列に始めて触れるのにも丁度良いものとなっています。
希少なゲーム性がありながらもシナリオでも退屈させない作品となっているので、是非プレイされるとよいでしょう。