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boningenさんのChuSingura46+1 -忠臣蔵46+1-の長文感想

ユーザー
boningen
ゲーム
ChuSingura46+1 -忠臣蔵46+1-
ブランド
インレ
得点
95
参照数
236

一言コメント

プレカノFDに触発されて久々に再プレイしたが、相変わらず素晴らしい作品でした。厚く熱い歴史物としてよく出来ている。登場人物のほぼ全てが女性に置き換わり過ぎている点や、無意味に露出度の高い衣装となっている部分のみ少し残念に感じた。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想



実際には発売当時に一度プレイしているのですが、プレカノFDに触発されて再プレイ。
数年も経っていれば綺麗さっぱり中身を忘れていることが多く、思いのほか新鮮な気持ちで楽しむことが出来ました。
その対策の一環として感想を書き始めたわけですが、こうやって再度プレイしても楽しめている現状を考えていると、あまり悪い部分ばかりではないのかもしれません。
特に最近は魅力を感じる作品が昔と比べて明らかに減少しており、ある意味で過去の名作を再度プレイするのには丁度良い機会なのかもしれない。








・シナリオ

文章量は51時間と非常に長い。
以前プレイした際にもとにかく長かったという印象が強く残っていたのですが、改めて時間を計ってみて驚きました。
ゲームパートの存在しない純粋な文章のみの作品でこれ程長い作品は珍しい。
値段を考えると非常に費用対効果に優れた作品と言えるでしょう。

やはりこの長さなので中弛みすることは避けられませんが、それでも全体を通して見るとほとんど退屈することなく読み進めることが出来ました。
話そのものは有名な忠臣蔵が基となっているので、単純に作者の力量のみでの評価という訳では有りませんが、それでもよく忠臣蔵を理解し、所々では作者の想像も織り交ぜた上手い構成となっていたようにお思います。
主人公の成長物語でもあり、苦悩しながらもしっかりと前に進み成長していく様はやはり読んでいて心地良い。
作中では何度も顔だけは良い優男と表現されているので、こういった作品では珍しくイケメンが主人公となっている点もある意味では新鮮でした。

結末も「幕末尽忠報国烈士伝 -MIBURO-」と違い綺麗に終わっているので読了後の余韻も素晴らしく良い。
流石に3度目をプレイする事はないと思われるので、備忘録として結末を簡易的に記しておく。
 ・吉良を討つが切腹せず1年潜伏。
 ・その間の潜伏期間はFDにて描かれ、ほぼ幕末で潜伏し最後の1日のみ現代。
 ・最後は赤穂を見渡せる無人島に関係者全員で移り住み、直刃を巡る恋の鞘当てが始まる形で終わる。





・絵

何故か非常に露出度の高い格好となっているのが残念です。
そもそも女性化させた対象が多過ぎる。
絵そのものは可愛らしいので文句は無い。
男性の描写にしても最後の決戦での主人公等は相当な美形としてよく描けているのは素晴らしい。





・声

特にお気に入りなのは丹羽赫夜役の夏乃香。
「信天翁航海録」に登場する密航者役の高槻つばさ似の声質のような気がする。
赫夜救済ルートがFDでも存在しない点だけが残念です。





・音楽

可もなく不可もなく。
長編の割にBGMは28曲と少なく、曲名すら存在しない。
歌はその代わりに4曲と多く、第二OPも存在するのは良い。

お気に入りの歌
 ・終わりのはじまり





・システム

不満点のみを以下に羅列する。
動画の音量を変更することが出来ないので設定のみで音量を下げていると耳が痛くなるほどの大音量で動画がいきなり再生される危険性がある。
全画面のショートカットキーが何故かWキーとなっているのでAlt+Enterに慣れている身としては不便に感じる。
また全画面そのものも裏画面へ移動すると暗転する上に、裏画面で画面上にマウスカーソルを移動させると不完全な状態で画面が戻ってしまう。
スリープから復帰する際にも画面のみフリーズしてしまい、全画面切り替えをしなければ画面が固まったままとなってしまう。
個別音量が初期値で100となっているので特定の人物のみ音量を上げたい場合はその他の全ての人物の音量を下げる必要がありかなりの手間となる。
これは登場人物の多い作品では致命的。

システムとは少し異なるが、家老の読みが異なる場合があり混乱する。大石主税のみ家老を"がろう"読みとしているが、その他は"かろう"と読んでいる。
















・総評

やはり何度プレイしても面白い。
非常にやり応えのある作品なので、ある程度根気を入れる必要はあるが、それでも十分にその価値のある名作です。
歴史小説特有の難しい単語等もほぼ使用されていないので、そういったものに苦手意識を持っている方でも安心して読むことが出来るかと思われます。