時を遡る設定そのものは粗が多いが、登場人物どうしの関係が複雑に絡まりあう展開は非常に面白いものがあった。特に一章の出来は素晴らしく良い。
・シナリオ
プレイ時間は20時間と平均をやや下回る。
テキストは読み易く、登場人物も多いので読んでいて飽きる事はありませんでした。
内容としては時を遡るタイムトラベル物となっており、ジャケット絵だけ見ると学園物にしか見えないが、学園要素は皆無となっている。
タイムトラベル物としては粗が多いので、そういった設定に強いこだわりのある方は避けた方が無難だろうが、それ以外の関係性や展開は非常に良い。
一章の出来は手放しでほめられるほど素晴らしい。
何故もっと早くプレイしていなかったのかと悔やまれる程の良い出来でした。
また男性の登場率も高く、好感の持てる性格の男性が多い点も高く評価しています。
タイムトラベル物としては珍しく歌にも力を入れており曲数が何故か非常に多いが、あまり良い曲はない。
時を遡ることそのものにテーマ性があるわけではなく、理想の親のあり方といった部分にこそテーマ性があったように思われる。
読み終えることでおおよそ謎は解明されるが、一部の物は曖昧なままとなってしまっているのは残念でした。
具体的に何があり、何故それをする必要があったのかといった説明が不足している。
この点がしっかりとしていれば更に評価点を上げることが出来ていたのですが。
また数名存在価値の薄い人物が存在する点にも疑問が残る。
その必要性が感じられないにもかかわらず立ち絵や声が用意されているのは無駄な部分なのでは。
テルサやカエラが攻略不可となっている点も残念でした。
・声
先にも上げたが、登場する全ての男性にもしっかりと声がついている点は素晴らしい。
特に評価している声質は下馬七恵演じる鈴音華月となる。
・音楽
可もなく不可もなく。
歌は曲数だけは多く、一部はしっかりと設定に合わせて声優が歌唱しているのは良いが、曲そのものの出来は平凡。
・システム
必須とされる機能は一通り揃っており、思っていた以上に完成度の高いシステムでした。
細かい不満点としては、個別音量設定にテスト機能が存在しない点と、背景や物が動く描写が挿入されている場面では負荷が高めとなっている部分となる。
負荷が掛かる場面の具体例としては、車内の場面で背景が横にスライドしてゆく演出や、雨粒が降り注ぐ雨の場面等で負荷が高めとなっている。
此方で観測したcpu温度の編かも記しておく。
cpu温度 40→46度 6/17 AM10時記録
使用cpuはAMD Ryzen5 2600X
また幾つか素晴らしい機能が存在しており、一つ目はシークバーの存在となる。
これは動画再生時によく目にするシークバーと同義の物であり、メッセージウィンドウ下部に存在する。
これを使用することでこの場面の残りが把握しやすく、濡れ場をスキップする場合の目安として重宝しました。
またシークバーなので任意の位置へ遡る際にも便利であり、多めに遡りたい場合はバックログよりも遥かに簡単に遡ることが可能となっている。
二つ目はバックログがコンフィグに内臓される形となっている点であり、バックログ画面の上部にはシステム設定やサウンド設定といったボタンが配置されている。
この関係でコンフィグを開きたい場合はコンフィグアイコンを選択せずともバックログを開くことで容易にアクセス可能となっている。
そのおかげで右クリック時の挙動をメッセージウィンドウの消去から変更する必要が無いというのは地味に嬉しい。
2012年と古いシステムでありながら、不便を感じる部分は無く、また最新の物を凌駕する利便性すら備えた非常に素晴らしいシステムと言えるでしょう。
ただし一点独自色の強すぎる物があり、その点のみ慣れるまで時間が掛かりました。
このシステムにはロード画面が存在せず、それを代わりに担うのが”S-DATE”という項目となっている。
これを開くとセーブデータという画面が開き、任意のサムネイルをクリックするとロードされる形となっている。
セーブデータという名目なのでサムネイルを触るとセーブされてしまいそう感覚に陥る。
また”QSAVE”という項目も一般的なクイックセーブとは異なっており、一つのスロットを共有する上書き前提のクイックセーブではなく、通常のセーブ機能と同一のものとなっている。
上記の点も慣れてしまえば既存のロード画面の必要性の薄さに気づいてしまう有用なものだが、やはり戸惑う方の方も多いでしょう。
・総評
どうにも知名度が低いように感じられる本作品ですが、非常に良く出来た作品でした。
少しでも興味を惹かれたのなら、迷わず購入されることをお勧め致します。