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boizdomさんの妹スパイラルの長文感想

ユーザー
boizdom
ゲーム
妹スパイラル
ブランド
まかろんソフト
得点
65
参照数
220

一言コメント

妹スマイル、妹スタイルと来て残念ながら(多分)最後の妹シリーズになってしまった作品。新しくなるたびに絵や音楽、ストーリー、UIと全体的に質が上がっていてようやく普通のエロゲとして謙遜ないレベル。但し肝心の兄妹感が薄まったと感じた。ストーリーはぶっちゃけ微妙。でも妹は普通に可愛いので魅力を感じればあり。

長文感想

一人暮らしの主人公に突然妹ができる(戻ってくる)というよくある展開に何故かその妹と地球を救うという設定の掛け合わせるめちゃくちゃな設定だが、そんな状況で兄と妹が右往左往する共通ルートは非常に笑えた。各妹の性格と能力(?)も非常に立っていてそれらがうまく絡み合っていたと思う。一方でルートに入ると「好き好き」一直線でダレやすいのはシリーズ(姉妹ブランド?)共通でご愛嬌。ギャグは良いがシリアスが弱いので、感動の出会いと別れとか兄妹の禁断の愛の葛藤とかそういうのに期待しちゃいけない。

もったいなかったのは出会ってすぐの妹たちと、地球を救うために恋人にならなければいけない、という大前提のため
「兄妹」になる前に「恋人」になってしまうという共通の設定がこのゲームの魅力を殺しているように感じた。
むつみは例外としてもそれ以外は兄妹でなくても「異世界からやってきた年下の女の子」でも正直違和感がなかったのでは。

あのね、タイトルに「妹」が入ってるゲームだから語らせてもらうけど、エロゲーにおける「妹」の強みって、それまで産まれてから長い時間、主人公と過ごした時間、思い出なわけですよ。
そこがポッ出のヒロインとは違う、妹の(まあ姉でもいいけど)唯一無二の特徴なわけです。
幼馴染キャラとかも近いけど、それでも同じ家で同じ立場で過ごしたからこそ、楽しいこと、辛いことを共有して、助けたり、助けられたりして生きてきたっていう背景が妹キャラの強力なアイデンティティなわけです。
本作はそれぞれ異世界の兄、妹ということで世界線が違うだけで同一人物かもしれない。でも過ごしてきた思い出はお互いに違う。これは妹キャラとしての意義を失っていると言ってもいい。

もちろん、ある日突然再婚で妹になる義妹シチュや隠し子的な妹シチュも私は好きですよ、でもそういったシチュエーションは知らねーやつが急に兄、妹になるっていう戸惑いと期待感が大事なわけですよ。
急に知らん異性が家族になるって言われても普通はすんなり受け入れられないわけで、そこをどう距離を近づいていくか、少しずつお互いを認めていくイベントが起きる、家族としての思い出ができるわけですよ。
でも本作は出会った途端恋人になれ!ですよ。じゃあ別に妹じゃなくていいじゃん。異世界からやってきた女の子と恋に落ちました!それと何が違う?

もっとひどいのは選ばなかった女の子とは引き続き「兄妹」であり続けるはずなのだが、ルート外の妹の扱いが色々ひどく、ルートによっては「○○(選ばなかった妹)のことなんてどうでもいい!それより○○(選んだ妹)だ!」と兄が本人の前で口にするシーンがあり、ギャグシーンながら、妹に対して「どうでもいい」と言い放つ兄は正直きつかった。どうでもよかないでしょ、恋人じゃなくても兄妹なんだから。

なんだかんだいって妹キャラが出てくるのは嬉しい。どのキャラも可愛いので総合的には楽しめたが、上記の点は見過ごせなかった。


以下、ルート別。ネタバレ配慮しているつもりだが、大まかな流れさえも知りたくない紳士はブラウザバック!!




睦土美
正妻(正妹?)ポジションを気取っているだけあって一番手のこんだルートだった。とはいえ全般的に無難な流れが主で、ルート全般的に先が読める展開が多かったので他のルートとは違う意味で少しだれてしまった。とはいえ睦土美可愛いので全ては許される。

霞空
ストーリーとしては一番おもしろかった。元々の兄に対する尊敬や信頼が大きい故に葛藤や反発を見せる霞空はむちゃくちゃな設定のメインストーリーに最もマッチしたうまい展開だと感じた。他のルートでは妹に任せきりなものもあるのに対し、こちらは兄の方から一緒に解決しようという姿勢が強く、それに対して霞空の方も協力しながら徐々に心を許していく描写はただ恋人だけではない、家族や兄妹の絆のようなものが見えて非常によかった。もちろん恋人のようなイチャラブもあり!

凜火
凜火の場合はルート前から(ある意味他のヒロインもそうだが)好感度MAXで終始好き好き攻撃を受けており、たいへん微笑ましい一方でルート通して緩急が少なく、少々ダレた印象だった。凜火ルートの強みとして、無垢な妹にいろいろと教えて…げへへ…という展開を期待するわけだが、その割にはあっさりエッチしちゃうのもちょっともったいない気がした。でも凜火は可愛いのですべてが許されるだろう。このルートでは唯一複数人の妹たちと共闘するシーンがあったのでそこは地味に嬉しかった。

千風悠
共通ルートのめちゃくちゃなノリをそのまま続けたルート。ルートに入るとダレやすい他ルートに対し、話の展開が比較的次々変わってぶっ飛んでいくので悪くなかった。しかしヒロインの中では一番妹である必要があったのか感が強い。そしてついに解き明かされる"妹スパイラル"のその真意とは。。

水那
正直一番印象が薄いルート。どんなルートだったか思い出そうとしても、あまり印象に残っているシーンが少ない。逆にチーズケーキのようにさり気ないくだりがよかった。でも最後はこのゲームにしては珍しくシリアスな別れシーンが強く印象に残っている。

色々書いたがこのクオリティで妹専門ゲーを作ってくれるブランドは珍しいので、妹スキーとしてはものすごく応援したい。が、残念ながらまかろんソフトのホームページは2013年11月を最後に活動を見せていない。妹スパイラル発売後わずか二ヶ月程度である。当作品はブランド最初で最後の作品となってしまった。あんまり売れなかったのかなぁ…。
妹○○シリーズは株式会社XEROの関連ブランドから、ブランドを変えながら発売しているので、関連新興ブランドがまた出してくれるのを祈りたい。しかし今は2018年なんだよなぁ…もうダメかもわからんね。