ErogameScape -エロゲー批評空間-

boggie433さんの白昼夢の青写真の長文感想

ユーザー
boggie433
ゲーム
白昼夢の青写真
ブランド
Laplacian
得点
95
参照数
564

一言コメント

凄く心を鷲掴みにされました。あるシーンで、もうゲーム辞めてしまおうと思うくらいには。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

エロゲ媒体じゃなければもっと世に知れ渡る作品だと思いますが、物議を呼びそう。エロは作品の要素の一部分でしかないけど、エロゲじゃないと出せないだろうなとも思える。

作中作はCASE1→CASE2→CASE3の順に良かったです。
自分が30代後半なのと離婚経験があってまだ立ち直っていないので、有島の姿に自分を重ねてしまって、CASE1は本当に心に刺さりました。逆に、CASE3は自分には眩し過ぎて遠すぎて…ある種の感傷に浸り、自分にはあんな綺麗な思い出は無い事に空しさを覚えました。CASE2は純粋に物語と割り切って楽しめました。お手本のような純愛の物語で、ロミオとジュリエットのオマージュとしても素晴らしいと感じました。個人的に最も涙腺を刺激されたのはCASE2のラストです。

CASE0についてはあまり言葉に出来ません。考えに考え抜かれたであろう設定・世界観・人物像・伏線・死生観・倫理観など、文句のつけようもあるはずがありません。感無量でした。
一言感想で書いたシーンは、プレイ済の方なら恐らく思いを共有出来るのではないかと思いますが、世凪を連れ去った遊馬が行った非人道的な手術のことです。どう転んでも幸せな結末が訪れないのが分かり、ゲームを先へ進めるのが嫌になりました。
遊馬には遊馬の過去と想いがあって、それも後に分かります。遊馬が何もしなくとも世凪の病状は止めようが無かったのも確かですし、そもそも2人の秘密であった能力を研究に転用したのは海斗です。世凪の悲鳴を聞いていながら耳を傾けなかったのも海斗です。ただ、仮に海斗が中層へ上がらず世凪との生活を最優先に選んでいたとして、世凪は忘れるよりも前に身体が動くことを辞めていたかもしれない。結果として作品のラストのような結果が、最も世凪と同じ時間を共有出来るものだったのかもしれない。生身の身体と仮想世界と、何をもって人間の生とするのか、何をもって個人を識別するのか。善悪と正誤に相関関係は無く、ただそれぞれの想いと信念に添っただけ。
許しはしないが、恨んでもいない、と遊馬に言った海斗の台詞が、とても心に残りました。

エピローグは賛否が分かれそうですが、個人的にはアリです。
最も泣いたCASE2の後の展開がまさかあんな事になろうとは思いもよりませんでした。作中作だからと言ってしまえば、本来の役割も終えているし、本編中にはしゃぐ出雲と世凪の様子からも想像出来る範囲かもしれません。幸せになれたからこその、と思えばもう文句はありません。「秒で出る」「精液が出ただけ」は本当に笑わせてもらいました。

数多のエロゲをやってきましたが、素晴らしい作品に出会えました。
本当はこんな歳になるまでやってるとは思わなかったけど…。