この物語の登場人物はみんな非常に魅力的である。だが、その魅力は一般的な他のアダルトゲームのそれとは少し違うものだ。では、その違いは一体どこから生まれるのかと言われたら、それは多くの登場人物たちが自立しており、決して他人から傷つけることができない信念や誇りを持っていることに起因するだろう。
普通のアダルトゲームの登場人物における重要なファクターは「萌え」と言われるものであろう。この「萌え」はなかなか定義が難しい代物だが、私は愛玩動物に向けられる愛情と似通っており、その上で読み手に自分本位な妄想を抱かせるものだと思っている。一般作品であれば、どれだけその作品の同人誌が作られたかが、そのパラメータになるだろう。そして、どれだけ萌えられる登場人物を創り、それを際立たせるストーリーを生み出させるかがアダルトゲームの世界において非常に重要な要素となっている。
しかしんがら、このアルテミスブルーにおいて登場人物にそのような「萌え」の感情を抱くことはあまりないだろう。登場人物の多くは自立した大人であり、表面的な記号と与えられた存在ではなく、芯からしっかりキャラが立っているからだ。それ故、もしこの作品が一般作品という形で発表されてヒットしたとしても、ほとんど同人誌が作られることはないだろう。登場人物に妄想を抱く余地はないのだ。
(もちろん6歳のアリーが萌えると言う人はいるだろうが、そのような小さい子供に対して愛玩動物に近い感情や保護欲を抱くというのはとても自然なことであり、性欲のはけ口としての妄想を抱く人は多くはないだろう。欲情したとしてもそれはペドフィリアという病気であると自覚してほしい(笑)。)
そして、登場人物の「芯」の基盤となるものが、仕事への愛着であったり、自身が持つ技量であったり、家族の愛であったりするのだ。その基盤がしっかりしてるからこそ登場人物たちの信念や誇りが際立ちキャラクターに魅力を与えるのだ。
このように、アルテミスブルーの登場人物の魅力は、多くのアダルトゲームのそれとは異なるものだ。さらにストーリーも恋愛至上主義が幅を利かせている現状において異端となるだろう。そういった意味で、このゲームは非常に人を選ぶかもしれない。ただ、もし昨今のアダルトゲームがつまらない、飽きたと思っている人はぜひとも体験版をプレーしてみて欲しい。