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bluedishyokoさんのイブニクル2の長文感想

ユーザー
bluedishyoko
ゲーム
イブニクル2
ブランド
ALICESOFT
得点
75
参照数
829

一言コメント

メリハリという点ではちょっと物足りない。駄作ではないが名作かと言われるとちょっとなぁと思う。ただ、「買って損した」と感じるような作品ではないよ。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

シナリオの大筋は悪くなかったんだけど、燃え展開に持っていくための演出は弱かったかなあ。前作のフェルトン皇子みたいな清々しい悪役がいなかったせいかな?
その割に、ネタの部分は多くなってたりして、メリハリが無かったような印象。ギャグ路線で悪ノリ多めなのはアリスっぽいけど、そっちに力点置き過ぎて肝心なところが弱かったような。しかも古いセルフオマージュが多い。爆猿王は見た目のインパクトがあるからまだ良いとして、ガイアロードとか誰がわかるのよ(笑)。中途半端に出すと、単なるネタが伏線みたいに感じられちゃうから、次回作で余計な不満が出そうな。
喜怒哀楽でいうと、喜と楽に偏りすぎて、怒と哀が弱い。前作はグリグラ関連でシビアさを出したり、クロア関連でヘイト貯めたりとかしてたのですが、今回はそのクラスの話がなかったなと。終盤で真の黒幕を出した時も、ちょっとショッキング要素が弱いように感じた。
ラストダンジョンでの流れも前作とまったく同じ。もうちょっと工夫が欲しかった。
あと、シナリオ関連ではQDのスタンスが変わってないんだよなぁ・・・。前作ラストで壮大な計画をブチ上げたのに、本作で一歩も進んでない。この世界観では、QDはルド世界でいう一級神くらいの存在だと思うんですよね。ALICEとクエルプランを足したような。下位神の位置にドラゴンがいる感じで。そんな御方が前作で創造神ブッコロスみたいなこと言ってたわけですよ。
ちょっとぐらいこの辺でハッキリした進展があっても。結構肩透かしが多く感じたのよね、今作は。
明るくバカで楽しめるようなRPGというコンセプトから考えると理念に沿ったストーリーなんだろうなぁ、とは思う。思うんだけど、微妙に物足りないなぁという気持ちが残ってしまう。

ライターはよーいちろ一、ヨイドレ、犬丼各氏。ヨイドレさんはランス終ったのにハードだね(笑)。やたらと「子宮があぁぁ♡」みたいなエロテキストが多いと思ったら、風麟チームの犬丼が混じってるのね。

絵師は前作同様、八重樫南がメイン。ルナリア、奄美の新メンツも、双方外注メンバーかな。大体誰がどのキャラ担当したかは判るけど、アリスではめずらしい外注複数原画体制。今後もこのシリーズでは社外の人材を積極起用する方針なのかな?前みたいなヤバいレベルの作画崩壊は無かったけど、誰おまは若干発生してるのが残念。
地味に織音さんが参加してるのが嬉しい。ランス終ったし、今後はこっちに本格参戦かな一。イブシリーズは漢成分が足りないので、イブ3は間違いなく出るだろうけど、存分に注入してほしいところ。やっぱり無駄に暑い(☓熱い)展開があってこそアリスだと思うのよ。

ヒロインはそれなりにいい味なんだけど、今回はサブの方がクセが強いかな。やっぱり前作のグリグラ、キャスは強かった(笑)。そんな中、健闘したのはツッコミ役と見せかけて安心安定のポンコツチョロインぶりを発揮してくれた力ノ。彼女はもっとイジメて欲しかった(爆)。

ゲーム自体は悪くなかったと思う。難易度自体は高くなっているけど、それほど極端に難しくなったとは思わないなぁ。回復の縛りをきつくして戦闘の緊張感を保たせるやり方はランス10と一緒。BPとメディカが切り離されている分、クエスト毎のHP管理を戦略的にやらなければならなくなったけど、前作の回復アイテムが無くなったというだけで、実際には大してキツくはなってないんじゃないかな?むしろ戦闘外での回復に融通が利くようになった分楽になってるとも感じたぐらい。チャプターボス前には回復ポイントもあって、クエスト単位の難易度をちゃんと逆算して調整していると思えた。
そもそも、アリスお得意の時間制限がないからレベル上げればいいだけだし、逃走成功率も低くはないし。まあ、逃走をスキルから切り離しても良かった気もするけど、そこまで逃げる機会も無いしなー。雑魚戦の戦術はちょっと考えなければならないけど、正直前回とあまり変わってないですよ?火力は上がってるっぽいけど、「やられる前にやれ」はこのメーカーの基本思想ですし。レベル上げれば基本的に勝てるけど、ゴリ押しマンセーというわけでもない。大体、ターン数はかかってるかもしれないけど、一戦あたりの所要時間はそこまで長くないはず。この辺、うまくできてると思ったけどな。

率直に言って、エンカ率に関してはランダムエンカ時代の鬼エンカを経験した人とシンボルエンカしか知らない人で水掛け論になるだけじゃないかなー。あの時代はデスルーラなんて言葉があったくらいで、本作みたいにプラチナが落ちても全滅しなければ即脱出可能なだけで天国なんですよ(笑)。実質見ると、シンボルエンカのゲームと必要戦闘回数ってあまり変わらないんじゃないかな?RPGのエンカ率は数値的な成長を調整する要素でもあるから、少なすぎてもダメなわけで、決して調整がおかしいとは思わなかったけどね。

病気の発症も最初はペース速くて戸惑うんですが、慣れてくるとバステ付きの強化サブクエという感じ。源流のランスクエストで禁欲モルルンというのがありましたけど、それをいじったような感じかなー、と。レベル上げついでに撲滅してくとあっさり打ち止めになるし。結構ネタ病気だったり、逆に有利になったりするので、よく優先順位を考えながら対処してけばそれほど負担にはならないんじゃないかなぁと。
ただ、撲滅クエスト自体が数押しで単調だとは感じた。人によってはテンポ悪いとか飽きるとかの思うのも否定できないかな。ドラクエ程マップが広く無いし、同じ素材を数集めなければならないわけでもないから、あっちの鍛冶素材集めと比べてかなり楽なはずなんだけどね。数減らして、もうちょっとしっかりしたクエストにした方が良かったような気もする。百景やいちゃらぶと合わせると、結構な移動量にはなりますね。

古参向けの調整に見えるけど、シナリオクリアだけならレベル上げすればいいだけのシンプルな作り。ここは完全初心者向けだった前作と同じ。エロもアリスにしてはハードさが控え目、ノリの軽さが許容できるならやっぱり初心者向きかな。
ランス6とか8と同じで、レベル上げと探索を楽しむゲームだと割り切ってやるべきでしょうね。
この系統のゲームが古臭いとは思わないなぁ。現にスマホアプリでレトロのフィールド探索RPGが売れてるわけだし、同人のツクール系がそれなりの売れ行き保ってること考えると、今でもこのジャンル求めている人って少なくないはず。9割ノベル、残りもユーザーの顔色見て新しいモノを作れないような業界事情考えれば、この会社ぐらいは自分たちのやりたいことをやればいいと思う。それで30年持ってるんだしね。

まあ、現代風云々は置いといて、少なくともシナリオさえ良ければゲーム性なんていらないっていうシナリオゲー原理主義者にはおススメできない。そもそもそういう人はアリスゲーに手を出すべきじゃない(それが悪いとは思わないけど)。このブランドは高度なゲーム性あってナンボ。手を出すからには、それなりの手間と時間がかかることを覚悟してやるべきよ。仕事の余暇利用して1か月ぐらい楽しむべきだと思う。10時間そこらで時間かかりすぎるだのメンドクサイだの愚痴言うくらいなら買うべきじゃあないよ。大体、このブランドは泣きとか暗い話一辺倒っていうのを極端に嫌うし、そういうストーリーならもっと上手いライターさんはいっぱいいるだろうしね。

出来としては、名作とか神ゲとか思わないけど、普通に良作の部類だと思う。
手間とか難易度だけで言えば、まあ比べるのが間違いだろうけど、ドラクエ11と大差無いと思う。むしろマップ広くて3Dな分、あっちの方がよっぽど面倒じゃないかな?
ただ、シナリオで魅せきれてない分、手間が強調されてしまった感が強いなと。
RPGはどう工夫しても面倒さが消えないジャンルなので、その苦労を快感に昇華させるだけのシナリオは必要だと思う。本作のシナリオにそこまでのクオリティがあったかといえば、疑問に思えてしまうのよね。
ダークやサイコなシナリオ全盛の時代に極端なギャグ寄りの話で売るのって難しいだろうなぁ。なろうだの同人臭いだの言われるだろうけど、もともとギャグ系のライトファンタジーってこういうものなんだけどね。あくまでコンセプトの問題だと。この辺をブランドのカラーとして割り切れるか、不真面目な素人臭いksシナリオと捉えるかで、かなり評価は分かれるんじゃないかと。

完全な蛇足:おまるはこの時代グロよりヤバいっすぜ(よーいちろー兄貴やりやがったなw)。