ストーリーとか演出は意外にしっかりしてる。ゲーム面はこれでいいのかな?というくらい過保護。RPGっぽい雰囲気だけ味わえれば良いという人向け。
このブランドの作品は本作と、後発の「メリトクラシー」「イデオローグ」をプレイしておりますが、共通して純愛系ルート、娼婦系ルートどちらもストーリーに力が入っている印象を受けます(すばらしいとは言わないけど)。
とりわけ本作は後発2作品と比べて、正当防衛であれミッション上の必要性であれ、「殺人」がヒロインに与える影響を強調する演出がなされている点で好印象。また、ゲームの小目標として「借金を返済して家を再興する」→ダメなら娼婦堕ちするという同人らしい分かりやすい方向性付けがされている点でもコンセプトに沿ったお話ではないかと。
エロの部分にもかなり力が入っていると思います。ゲームのコンセプト通りほぼソフト凌辱系又は売春とセクハラ。長身、爆乳、某対魔忍ゲームのようなちょっとガッチリした体格で肉の線の書き込みを細かく描くスタイル。汁とか断面図も中々いい感じです(好みはわかれるでしょうが)。
なお後発作品と異なり子宮改造ネタが無いのでボテ差分はありませんが、BADエンドでHR要素があります。
他方、RPG形式をとるゲームとしての「ヌルさ」が気になってしまう。
まず戦闘バランスが「初見で全ての雑魚を無視して」「初期装備で」ボスに挑んでも普通に勝ててしまう程度の難易度であり、敗北凌辱イベントを見るには2周目から使える自爆コマンドに頼る等の必要があります。
いや、その必要すらありませんね。どのエンディングでもクリアしてしまうと全てのCG・シーン回想が解放されるというセルフネタバレ仕様なので、ストーリーを見る目的が無ければ周回する必要はありません。
戦闘面でもう少し細かいところに突っ込むと、特殊攻撃がチャージ式とMP消費式の二本立てになっているのですが、このようにする意味がわかりませんでした。通常は回復系スキル等と同一管理にして道中のHP管理に制約を設けることでゲームのハードルを調整するものだと思うのですが・・・。回復系に融通が利きすぎてハードルが極端に低くなっている印象を受けます。
ルート分岐のフラグもほぼ単純にクエストの成否で決まるようなものであり、執事が最初に提示してくるメインクエストを淡々とこなしていれば純愛ルートに入ってしまうような程度です。一応隠しクエはありますが、エロ回収以外ではほとんどやる必要が無い。クエスト選択の順番に罠くらいあるのかと思いましたが、そういうこともありませんでした。
なお、ストーリーの真相については純愛系ルートを辿れば大体語りつくされてしまいます。
後発作品でもこの傾向は全く変わっておらず(戦闘バランスには多少の試行錯誤が見られますが)、調整ミスではなく、こういう指定なんだと思います。制作側としての推奨プレイは「初周は気合を入れて書いた燃えシナリオをノーストレスで楽しんでもらい、2周目以降で自爆コマンドを使いエロ系ルートを見てもらう」というところなのでしょうか。
何の予備知識も無い状態だと、このように進むと思います。
この辺は完全に好みの問題かもしれませんが、こういう敗北凌辱とか売春・羞恥調教などにも力を入れつつストーリーも十分に堪能してほしいという作品であれば、最初は娼婦ルートに誘導するような調整の方が消化試合感を感じず無駄が無い気がします。実際、先にワザと娼婦ルートに入った人も多いのではないでしょうか。
先に述べたように、本作は娼婦ルートも気合入れて書いている印象を受けます(さらに言えば、本作「令嬢」は後発作品と異なり、悪落ちルートが娼婦系における救済ともいえる部分があるので、そちらにも入る価値が出てくる)。
であれば、先にヒロインを酷い目に合わせた上で、では幸福になるにはどうすれば良かったのか、という流れにした方がプレイヤー側の取り組み方も変わってくるような気がします。
(しかも性的経験だけは引き継がない仕様なので、そこを考えても1周目はエロ堕ちさせた方が周回は楽だったりする。)
例えば初見殺し的な罠を仕込んで置くとかでもいいし、せっかくの借金という設定を活かすならメインクエだけでは返済しきれず、隠しクエを発生させないといけないみたいな方法でも良かったような。
まあ、そもそもそういうストレスの掛け方が嫌いなディレクターなのかもしれません。であればプレイする方が間違いなのでしょう。
ちなみに、自分は「イデオローグ」→「令嬢」→「メリトクラシー」の順でプレイしたのですが、「メリトクラシー」でついにめんどくさくなり、分校ルートはやらずにシーン回想だけ見て済ませました。まあ裏事情みたいな話はあったみたいなのですが・・・・。
キャラ絵などもかなり肉感的で好みの作品、エロの方向性も好きなタイプでして、ゲームの色々な「パーツ」がとても良いと感じる作品・・・なんですが、なんだか作り手側の意図するところと出来上がった作品に微妙なズレがあるような印象が拭えません。周回前提で、それぞれに展開が異なるのに周回のモチベを下げるようなシステムにしてみたり、2DRPGなのに画面の隅々まで探索させることに無頓着だったり、妙にチグハグな印象が否めませんでした。
以上、長々と語ってしまいましたが、このブランドの中では一番好きな作品ではあります。それだけにもったいないなと。
RPGっぽい雰囲気だけ味わえれば良い人には向いてるだろうし、「バランス」が気になる人にはちょっと物足りないだろうな、と思います。