信者補正は否定できないけれど
この作品に高得点をつける場合でも、「29年続いたシリーズの最終作だから」とか、「万人受けはしないけど」とかのお断りをしている人がほとんどだろうし、正直に言って手放しで賞賛できる作品だとは思いません。
ただ、オンゲでもないのに800時間やり込んだゲームって他にあったかなぁ、というのも実感としてありまして、まあTADAさんも最後の最後で随分灰汁の強いモノを出してきたなというのが結構肯定的なユーザーでも大多数の認識なんじゃないかと。
まあ、所詮点数は個人の裁量だし、100点つけたかったらつければいいじゃんというノリでそれでレビューしていいんかいと言われるかもしれませんけどまあ良しですハイ(廃)、信者ですが何か?
さてこのゲーム、制作側も最終作だし難易度高いよーと言ってますけども、低CP時の立ち回りが戦力不足でつらいというだけで、実際にそこまで難しいゲームというわけでは無いように思います。要するに既存の周回ゲーと逆でハードモードからスタートするようなものでして、低CPだと毒睡眠0コス攻撃防御ゲーなんですが、「CPを貯めてしまえば」普通の属性+バフデバフを使った火力ゲーになります。ルート分岐フラグも単純なので、「先にバッド回収が推奨されていることがわかっていれば」10時間程度でCP5くらい貯めて取得時ランク+5を2枚と経験値50%アップ1枚か2枚にあとは部隊ランク上げて、2部解放まで30時間くらいでしょうか?フルプラのADVと同じ程度の時間ですかね。特定のクエストに難易度が紐付けされているので、ストーリーを見るか難易度を抑えるかの選択肢がプレイヤーに委ねられている、という点も面白いと思います。
「わかってしまえば」別段難しいゲームではないし、CPの効果を大きくする代わりにそれ以外の引継ぎ要素を無くしたことで周回ごとのゲーム性を維持することに成功しているわけなのですが、では何故とんがった印象になっているかと言えばユーザー側が快適にゲームを進めさせるための「配慮が不足している」または「配慮の仕方がズレている」のではないかと。
まず、成長要素の根幹をCPに紐づけているのですけど、この説明を何故先にしておかないのでしょうか?確かにマニュアルには「初周からクリアを目指すのはできなくはないけれど推奨しません。CPを貯めてください」みたいなことはちょこっと書いてあるのですけれど、それでは不十分だと思います。むしろ、オープニングの段階でアリスの部屋差し込んでも念押しするくらいでちょうど良かったのでは。10時間くらいやった挙句バッドエンド入って疲れたところにCP+1ですって言われても理解しきれない人が多いのではないかと。
周回ボーナス一つ一つの説明も足りてないんですよね。たとえば「取得時ランク+5」って要するに宝箱のカードが全部ランク5下駄を履かせた状態になるのでシンプルに総戦力が2倍くらいで推移する、2つ重ねると+10のボーナス取得状態なので戦力が5倍くらいになるという周回に必須のボーナスなんですけど、このネーミングだけで判断できる人はそんな多くないですよ?多分。よくわからないならとりあえず分かりやすい部隊ランクとっとけばいいやで進めたら、そりゃ周回ボーナスしょぼいって話になるでしょ。前半だと最初からおべーちゃん使えるくらいしかメリットないですもん。もっと悪いと「宝箱なんでもあり」選んで、これ要するに無茶苦茶モードなんで当然ネタバレ食らうということもありますわね。
あと、このゲームの戦闘ってスマホゲー的な属性+バフデバフで火力盛るのと同時に、相手の行動パターンを把握して対応するスキルを持ったカードを配置する、いわゆる詰将棋的なバランスなんですけど、低CPだと戦力不足でそのまま進んだら毒睡眠ハメ0コス防御ゲーでキムチさんとエレノア引くまでリセマラってなりますわな。そうなってる時点で周回足りてないから大人しくバッド回収したほうが結果的に数十時間単位で時短できるハズなんですけど、そういう意識付けするような誘導してないですよね?これ、単純な方法で解消できる話で、アナライズ持ちを初期メンバーに入れとけば済んだのでは?クレインって最初からいても設定上問題ない人じゃないですかね?少なくとも、ジャハルッカス戦前に入れておけば相手の行動パターンが把握できるので、「ああ、そういうゲームなんだ」って簡単にわかると思うんですけど。
もうひとつ、全般的に説明に関する字が小さい。これきつかったなぁ。情報量がフレーバー併せてやたら多いゲームなのでポップアップをもっと大きくしたり、他に設定説明画面なんかはズームアップ機能を付けられなかったかなぁ。ヌヌハラの概説はネタの部分が大きいので、説明文そのものをもっと読みたかった。
こういった配慮に関してはザルって言っても良いのに、一方で「余計なお世話」はものすごく多い。
細かいところ言えば、例えばゼス2魔人クエのストーリーでなんでメディウサ戦直前に健太郎に素振りさせたの?あそこって散々ヘイト貯めた後シィルが負傷しながらランスを救出してキレたランスがランスアタック連発してお仕置きも考えずにトドメを刺すって屈指の名シーンなのにそこで健太郎見せたら毒ハメで倒しちゃうよ使徒に誘拐させるなりで離脱させれば誰も勘違いしなくてすむじゃん、てまあそこは本当に細かいところですけど、ゲーム自体で大きすぎるのはなんでウィリスとかミカンのカード入れたのでしょ?ランク上げ徹底的に縛って戦力足りなかったら大人しく周回してCP貯めてねってゲームですよね?救済用のつもりだったのかもしれないけど、このカード引いたら「ああ、そういうゲームなのか」って勘違いしてランク上げ始めますよね。結果、周回始めたらランク引き継がないのはなんでだって話になりますわな。1周の時間が跳ね上がりますもん。時間の無駄ですけど。
このゲーム、CPさえ貯めてしまえばサックサク進むし、引継ぎ要素が少なくてもその時のカード取得状況で配置考えたりクエスト攻略順変えたりして繰り返し楽しめる作りになっている。レベリングもいらないから作業要素も本質的には圧倒的に少ない。一方で例えば凍えパーティのフル・サイゼルみたいな属性火力ゲーで爽快にするための必要カードがほとんど固定配置になってたりしてて、運に頼らなくても今周回はコイツを取得して進めようみたいな計画を立てながら進められるわけで、全体を把握してしまうといくらでも遊べる。何より宝箱取得率に影響する形でワンラウンドキルとかオーバーキルみたいな得点要素付けてるのが抜け目ないですね。同じ敵でハメ攻略みたいなチャレンジ攻略でもいいけど、よりスマートな勝ち方を追求するインセンティブが大きい。高難易度でまそーさんが1200万ダメ叩き出したときは思わずうなりましたもん。これ味わっちゃうと完全に中毒化します。
ちょっと脱線しますけど、RPGの周回ゲーは引継ぎ前提で構成されてることがほとんど全てだと思うし、それに慣れてるとこのゲームの方式って違和感あると思います。でも、そういうゲームって大体2周目以降のゲーム性は崩壊してます。難易度選択できるようにしてテイスト維持しようとする努力はしてますけど、要するに敵の火力耐久力を理不尽に高めてるだけなので、じゃあ引き継ぎ無くても同じじゃね?って話になりかねません。挑戦ボス入れたとしても結局周回無しでレベリングさせる方式とやることは変わらないはずです。これ、つまるところルート分岐つける都合上ストーリー回収を楽にする意味しかありません。楽したくなければ難易度上げればいいじゃん、そこを自由にするからいいんでしょ?という人も当然いると思います。でも、それで行き着く先は戦闘メンドイから戦闘スキップつけろって話になると思います。そこまで行くとRPGでやる意味ある?というところまで行っちゃうんじゃないかと。このあたり暴論かもしれませんけど、実際にそれを極端にした同人ゲームをやってるので。あれ、エロが悪かったらホントひどかった。同人ゲーの周回分岐はシャレで付けてるとしか思えん。
話戻すと、ランス10は何回でも遊べるゲームを徹底して目指して作っている。そういう意志みたいなのを強く感じさせるだけのものがあります。老舗のプライドみたいの見せられた感あります。
疲れるゲームだけど感動したから100点とかではありません。ごく稀に出会える、ハマると廃になる狂ったゲームの一つだと思ってます。マジで。
なのに、そうするためユーザーがゲームを気持ちよく進めるためにどう誘導すれば良いか?って配慮が何もないどころか明後日の方向を向いている。そこは正直致命的な欠陥と言わざるを得ないと思いますね。手探りにすれば良いってもんじゃないのです。これ、推測するに今の時代ファンがすぐwiki作るだろうからってところなのではないかなと。アリスのスタッフブログみるとTADAさん含めてオンゲゲーマーが多いっぽいんですけど、あの世界ってやったことがある人は経験があると思うんですけど、wiki前提なんですね。初心者向けギルド謳ってるとこに入ったとしてもチャットで流れるのはリアル社会の愚痴ばっかりで、ゲームのこと聞いてもまともな返事が期待できない。ガチ勢のギルドなんかだとwikiみないと普通に怒られます。でもエロゲユーザーというか買い切りゲームのユーザーはそうではないですから。独自性のあるゲームを作るならば、ゲーム内で相応の誘導をしないといけない。低評価しているレビューもそれはそれで正しいのではないでしょうか。
さてさて、レビューはまだまだ終わりませぬ。そんな千字そこらで終われるような作品じゃありませんね。
エロゲーなんでエロの話はしなきゃならないですけど、エロ薄呼ばわりされてるランスの中でも今作は特に薄かったなぁと。過去最低じゃなかろうか。
CVが無いとかそういうのを気にする人も多いとは思いますし、まあ自分はそこまで気にならないというか、あってもあまり聞いてない人間なのでどうでもいいし、声優さんのギャラがコストの大部分らしいんでコストを圧迫してストーリーとか中身が薄くなるならそれが業界の衰退の一因といっていいでしょうから無しでもいいんじゃん?と言いたいのですけど、やっぱり一般的には気になるところなんだろうなあとは思います。03が好評でしたしね。でも本質はそこじゃないのではないかと。
CG枚数は十分多かったと思いますし、シーンごとのエロテキストもかなり頑張ってたと思います。何よりBGMが良かったですね。この曲、9からでしたっけ?東ドイツ国歌はあれはあれでランスっぽくて良いのですけど、やっぱりネタ臭が漂っちゃうので、ランス君の鬼畜シーンを陰惨にしないためにはいいんですけど、和姦シーンとかには向いてなかったかな。クチュ音なんかもちゃんと完備されていましたし。
なのにエロ薄感がいつも以上に大きかったのはなんでかなぁ、と考えてみると、多すぎるキャラの中でも人気キャラを網羅しようとする意識が強すぎてストーリー上必要なエロが割を食ってしまったような気がするんですね。いつも以上にサービスカット的なシーンが多くて印象的なエロシーンが無かったような。
ここからは完全な個人的意見なので同じ考えの人は少ないと思います。それで構いません。エロシーンの全体の配分を考えるとき、やっぱり中心に置くべきなのはメイン、準メインのヒロインではないかなと。今作の場合だと、メインはシィル、サテラ、あとクルックーあたりなんでしょうけど、準メインて誰かと言えばホーネット含めた姫連中(当然、コパ含む)ですかね。まあ設定の話がありますのでクエルプランも入りますけど。この辺の連中のシーンがやたら少ない。良いシーンだと感じたのはいくつかあって、例えばメイン2人の決戦前のシーンとか印象的なエロだと思いますし、冒頭の香ですとか、ゼス2のマジックなんかは戦争に臨むにあたっての不安をぶつけてくるようなストーリーに直結してるがゆえに印象的になるシーンだと思うんですよね。クルックーのアレなんかでも、一人で悩みを抱えて、いつもどおりの御無体を受けた後でそれをランスが緩和してあげる、という流れがあるから印象が強かった。
じゃあ他の姫は?非常時で外見的に見せてないですけど、不安の中で責任を負ってる連中ですよね?この連中がランスを頼る話でしたよね?だったら「その話の流れ」で不安をランスがエロで取り除く話を入れるべきなんじゃ?シーラとかはエロありましたけど、ギャグでしたよね?あれはあれで面白かったけど。リアとかコパとかあれだけ貢献してるのにランスとのシーン自体ありませんでしたけど?子持ちとBBAはいらんのですか?魔軍レイプ入れとけばOKとでも?
ホーネットなんかはCG有りですけど、あのタイミングで正しいんですかね?この人、敗軍の将とか亡国の姫的な背景持ってて、自分は魔人だから、みたいな意地で拒絶してるわけですけど、だったらそこを解していく流れでエロに持ち込まないとキャラが無駄じゃないですかね。あのタイミングじゃ、特殊ルートクリアのご褒美以上の意味無いでしょ。まあ、ホーネットルートはスタッフが提案してTADAさんが拒んだっていう話ですし、サテラとの兼ね合いもある、もっというと今作ではヒロインルートが物理的に無理なんでしょうがないとも言えますけど、それとは別の話なんじゃないかと。
ランスに限ったことではなくて、非ADV系の作品はプレイしながら抜く気になれないからエロ薄で良いでしょ、みたいな感想は多いと思うんですけど、それってエロゲとしては詭弁ですよね。抜きゲでないのは間違いないので、そこまでは要求しませんけど、エロシーンが印象に残らないってそれどうかと思うんですよね。エロ薄というか印象薄なんじゃないかなと。鬼畜系シーンについては、まあリズナのアレなんかは結構グロに入り込んでますけど、過去作のヒロイン一人潰してまでやった力の入ったシーンだと思いましたし、もともと初心者お断りの看板立ててる作品ですからキツめのシーン入れること自体おかしいとは思いません(この辺はコンシューマの微エロ勢とか萌えゲ勢に新規開拓狙ってることが明らかなイブニクルとはまったく別)。ただ、鬼畜系の作品であってもこの手のストーリー重視の作品なら「ヒロイン」との和姦にも気を配るべきだったと思います。鬼畜シーンてビジュアル的にインパクトが強いので印象に残りやすいんですけど、ヒロイン対象だとあまり多用できないでしょうし、必然的にヒロインのクローズアップがやりづらくなる。この姫連中は大体過去作のヒロインなんで掘り下げはそこまで必要ないですけど、少なくとも各クエスト中で引き立たせる必要が無いのかといえばそんなことないでしょ。例えばハウレーンとかセシルなんかは鬼畜王ファン向けのサービスでしょうけど、その理由しかないならリアとかコパ切ってまで入れる必要無いです。新規キャラですらありませんし。
まあ文句ばっかり言ってますけど、当然悪いところばっかりではないです。上でも言った通りゲーム自体遊びやすい部類ですし、何よりやり込みの質が他社ゲームとは全然別の方向で優秀ですから。何周しても別の発見があるのって正直すごいと思う。
あと、端的にアゲたいところって演出ですね。演出っていうと普通はカットインみたいな視覚効果のことを言うんでしょうし、CVの件もですけど、キャラゲーに標準装備みたいなモノが一切ないので絵的に物凄く地味です。まあ、この辺のって割と飽きるんですけど。
ただ、戦況報告画面ですね。ターンエンドで流れるやつ。これ本当にすごいと思った。しつこく繰り返されてるはずなのに何度見せられても飽きないですもん。すっごいシンプルで地味なんですけど、勇壮なBGMが流れて、プレイヤーがアドベンチャーパートでやったことがすぐに、ダイナミックに表現される。これ、ゲームの緊張感保つうえで重要だと思うんですよね。何もしないと人類軍がゴリゴリ削られて不安を掻き立てられる。一方で魔人倒すと大げさなくらいドカーンと敵が減って爽快感を得られるわけです。こういうとこキッチリ抑えるのは流石だなと思いますね。
同根の部分だと勇者フェイズですね。コイツ何なんだ、みたいな不気味さを出して、条件満たすとかなりキツいペナルティを突然出してくる。タイムリミットがあるゲームですので、こういう不気味さの演出も重要なところ。ただ、人類死滅率の各段階でどういう効果が発生するのか、左側に書いてあるんですけど見づらかったのが難点ですかね。もっと各段階で大きくアナウンスしても良かったような気がします。
ストーリーの厚みもすごいですね。ラノベ10冊分らしいですけど、フルプラのADVと同じ分量入れたら、そりゃ読むのに時間かかりますわ。
今回、ちょっといつもと雰囲気が違うのはランス君が好き勝手してる印象が乏しいところですかね。最初からラスボス級が大挙して攻めてきてるって筋ですので、ところどころで不安が垣間見えたり、妙にシリアスなところが多かったように思えます。通常ルートでは魔人戦をほとんどイベント戦みたいにして、鬼畜作戦とか搦め手を表現しながら、周回こなすと力攻め、さらには所謂二枚抜きが可能になるのもストーリー上の演出とチャレンジ要素を兼ね備えた上手いやり方だと思います。2部前提の話で整合性とるのにかなり難があったのも事実ですけど。
あと、食券イベントとカードのフレーバーですかね。これ、猿玉なんかと同じでメインストーリーでキャラの掘り下げができない分の補完要素ですけど、メッチャ良かった。コンプ要素のモチベ維持にもつながりますし、新規キャラも無駄にしないぞってライターの意地を感じます。ただ、食券イベントの方で惜しいのは食券システムに経験値ボーナスつけるのと微妙に相性悪く思えたとこですかね。どうしても主力優先になりますから。食券乱用をアプデで付けざるをえなかったのが物語っている気がします。ここはランクが上がれば自動的に開放されるスタイルの方が良かった気がします。キャラクリっぽくなるけど。まあ、エロにつなげられればなお良かったですけども。ここは無理かな・・・。
さて、2部の話です。私、率直に言って2部の方が話は好きです。2部無かったら100点とか絶対につけなかったぐらい。
まあ、ガラッと雰囲気変わるというか、ゲームそのものが変わるわけで、1部がADV+RPGにSLG風の味付けをした感じですけど、2部は完全な単線ADV風になるので、味気ない印象も強いと思います。戦況報告とか勇者フェイズも無くなりますし。ただ、非アドベンチャー系が常にアドベンチャーゲームより優れているとは思わないんですよね。プログラミング技術とか視覚的な部分とか没入感みたいなところは非ADVが優れてるとは思いますけど、ストーリーをしっかり読ませたい場合はADV≧RPG>>>>SLGだと考えてます。SLGで整合性のある話作るのってかなり難しいですし。
それと、1戦闘あたりのゲーム性については2部の方が1部より優れてると思いましたね。このゲームの戦闘って詰将棋的なバランスを重視して、局面に応じてカードを入れ替えながら対応していくのが本質だと思うんですけど、2部は主人公が異世界転生モノ主人公的な万能キャラになっていて、他のメンツが非常にクセの強いスキル構成になっている。ただカード毎2スキルの制限があるので、必然的に主人公を起点にしてどのカードにするかによって他のメンバー全体の配置を見渡していかなければならない、というユーザーに悩みを上手く提供するゲーム面での好循環につながっているわけです。まあ初期ロットではlv72が取得できずに途中で詰む人が出たという調整ミスがありましたけど。
話自体も、1部が積み重なった設定の総決算的なところもありましたので、掘り下げる余地はほとんどなかったわけですけど、2部は新規キャラですのでライターが伸び伸び書いてる印象です。正直こっちの方がライターの個性が出て楽しめる。バファムーンの下りとか腹抱えて笑った。何より、流れがいつものランスの流れなんですよね。ゆるーく好き勝手やって(もちろんランスのものとは質が違いますけど)、そこから一気に展開が進む基本的な流れですね。
あと、2部は主人公というか、視点人物というのが正確なのかなと。要するに闇堕ちランスを見る話だなと。別に一本作れば良かったみたいな評価もちらほら見かけたんですけど、闇堕ちランスの話一本見たいんですかね?確実に気が滅入る筋になると思いますんで、このスタイルで良かったんじゃないかな?まあ、それはそれとして、あのエンディングと併せると実際は何も変えたところはないんだ、という話になります。これ後ほど。
もう一つ余計なこと入れますと、2部はエロが1部より薄いまたは無いに等しいみたいな言われ方しますけど、個人的には2部の方がエロは良かったですね。枚数はアレですけども。1部はシーン数こそ多いけれども、配分がグズグズだったわけでして、印象に残るシーンが薄かった。2部は闇堕ちランスの話ですから、まそーさんガッツリ書くだけで逆に印象が強くなったと思います。メス豚はアレですけども。ランチルの寸止めとか別にどうでもいいですわ。
欲を言うと、ママンズが山の麓までノコノコ来てたわけですからこっちの冷たい凌辱アゲインは入れてほしかったですかね。上でも言ったとおり、この人たちが準メインですし。BBAですけども。あとランス派魔人レディースと。くどいようですけど、2部はあくまで闇堕ちランスの話ですので、ヘイト高めるシーンでも入れたほうがユーザーの切迫感を煽れたような気もしますし。
まあ、あのエンディングは正直ずるいと思いましたわ。闇落ちランスをどう救うか、という縦糸の部分が解消されてクエルプランも戻っていつも通りガハハしてメデタシメデタシの後ランス君大往生まで書かれてエンディングロールが流れてあのメドレーが流れてあれでこれですーっかり忘れてたところに、横糸の神異変の真相でアレが来るんですもん。異世界転生モノ主人公みたいなチート主人公でたらたらと家族旅行続けて何なの?みたいなところで、ストーリー全体を伏線にして一気にひっくり返すという。お前が正体じゃ納得せざるをえないですわ。
当然のように「人には好みがある」という逃げ口上は使わせてもらいますし、オタ心理的には神殺しみたいなほうが良かったのかもしれませんけども、まあ良し悪しを置いとくとこのオチってランスじゃないと書けないですね。ラノベどころか、古典とか神話の類でもちょっとこの類の話はなかったんじゃなかろうか。まあ、まず間違いなくラノベとかゲーム作品じゃ書けないです。
まずクルックーというキャラをヒロイン級で作る段階でそもそも無理。こういう難しいキャラ出しちゃうと、下手すれば作品自体滅茶苦茶に叩かれるでしょうし、実際ランスクエストは中途半端に書いて叩かれたわけですけども。やろうと思っても、書いているうちに多分ドラクエ11のベロニカみたいな鉄板泣かせキャラになっていっちゃうんじゃなかろうか。まあ、よくこんなキャラ書ききったと思いましたわ。
それと、上で書きかけたところですけど、もともとランスシリーズは一人称の感情移入型では無くて「神の視点」でランス周辺に起こった事件を見るタイプだとか古参ファンの間じゃ言われることが多いと。流行りの言い方するとナラティブ体験は考えずストーリーテリングに徹しているみたいな言い方になるのかな?
ところが2部から主人公を変えて、妙に感情移入要素を入れてくる。あのストーリー展開上無意味な選択肢だったり、視点を固定したりですわね。一方そのころでランスの現状とかクエルプランの過去とか差し込んできて、ラストは復活したランスの活躍をクローズアップして〆、と思いきや、あのオチが来る。アレはユーザーの隠喩だ、とかファンサイトで前から言われてましたけども、2部のスタイルは感情移入型に変えた、と見せかけて今までと何も変わってない「神の視点」で事件を見ていただけという強烈なカウンターが来るわけです。まあ、よく考えられてるわ。
必ずしも独自性が良い方向に進むとは限らないですし、トータルで考えてこの作品は非常に粗っぽい作りなのも事実だと思うんですけど、ウケの良し悪しを超えてこの作品は独自の立ち位置にあるんだろうなぁと。到底手放しで賞賛している意見にも同調できないような作品ではありましたけど、じゃあこれと同じ位置づけの作品がこの先出会えるかというと、ちょっとどうかなぁ。
まあ、「好みは分かれるけどね!」というお決まりの言い訳を繰り返しつつ、不真面目この上ないレビューを〆たいと思います。