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black777さんのデュエリスト×エンゲージの長文感想

ユーザー
black777
ゲーム
デュエリスト×エンゲージ
ブランド
プラリネ
得点
77
参照数
2429

一言コメント

黙ムコの口直しにちょうどいい

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

1月に黙ムコという地雷に引っかかったため、体験版前までは結構及び腰でしたが、いざやってみるとストレートな萌えゲーとして良作でした。
タイトルに「デュエリスト」が入るだけに各ヒロインが武芸を身につけていて(例外いますけど)シナリオの要所ではデュエルがあるわけだけど、ヒロインだけがデュエルするわけではなく、とりあえず主人公である征斗も素人ながらご都合主義的な特訓によりしっかり闘います。

シナリオは全般的に王道といえばわかりやすい展開が多く、目立って目を引くような点はありませんが、逆に言うとそれなりのポイントは抑えています。
原画が結構良かったので買ってみましたが、3月発売予定が軒並み4月以降に延期していたため、さしあたってやるものがなかったという状況もプラスに働いたと思います。
共通は6章までで、7章から12章までが個別√+クリア後に1話相当のアフターストーリーがあります。
共通√は各ルートへの分岐のために各所に選択肢がありますが、それぞれの選択によって征斗の気持ちが少しずつ動いていっているはずなのに、共通√内ではその辺の心理的な動きが必ずしも管理できてない気がします。
つまり5章までで誰かを選択したときの個別パートではそのキャラを良く思うような流れを描きながら、6章の獅子神祭で他のキャラを選択するとそれまでそのキャラを思っていたかのように見えるところがあり、不自然さがありました。
もちろん好感度が溜まってないので、直後にBADエンドになりますが、この辺のつなぎが少し残念ですね、共通√の選択肢ごとのパートを作りながらそれがパート以降にどう影響するかという部分にもう少し気を使う必要があるような気がします。

以下、個別√ごと感想

ヴィオレッタ
体験版では高飛車感が結構あるヴィオレッタですが、右手で髪いじりながらテレる立ち絵がマジ萌えるあたりから想像していたとおり、デレたあとがすごいキャラでした。
ヴィオレッタ√は、剣では無敵のヴィオレッタが、征斗との出会いで恋する気持ちを知りそれゆえに弱くなってしまう。
そして案の定現れたフィアンセに一度はさらわれてしまい、結婚式へ殴りこみをかけるという。最早テンプレとも言っていいぐらいの王道√ですが、ヴィオレッタの性格も剣士らしい凛とした部分と、猫にデレるところを始めとしたデレっぷりを併せ持つリンデレ(そんな単語ないか…)のバランスが良い感じでした。
でもヴィオレッタからデレを引き出す征斗の鈍感ではありつつも、さりげなくいい男っぷりが同時に良かったんだと思います。

ラストデュエルは、ヴィオレッタvsクラウス 弾丸すらはじき返す覚醒ヴィオレッタは流石の無双ぶり。タイトル絵にもでるウェディングドレスでのデュエルはこのゲームを象徴する一戦です。

エーリカ
ヴィオレッタのライバル的ポジションながら、実際のところは空振りキャラという位置づけのエーリカ。
共通√上でのエーリカは4章の登場で征斗をさらうシーンと、初登校の際に征斗にアイスを買ってもらう一幕ぐらいでしか征斗とのからみがないため、獅子神祭でエーリカとお祭りに行く際に、エーリカが征斗と結婚する気な宣言をしてるのはともかく征斗がそれを受け入れている感じになっているのが違和感がある。
個別√に入ると共通√時のウザさが大分減り、素直年下キャラになってきていい感じなのだが、征斗の気持ちの変化についてはやっぱり分かりにくかったですね。
エーリカ√のクラウスですが、ヴィオレッタ√とは違って基本は嫌なやつなのに最後は部分的に和解したようで、この辺も違いが大きかった。

ラストデュエルは、エーリカvsヴィオレッタ 本来実力的にはヴィオレッタに勝てないエーリカのこれまでのデュエルの積み重ねがただ一度の勝利をもたらすという展開は悪くなく、ご都合主義全開でエーリカ覚醒・無双とかでなかったのは良かった。
しかし、スズキさん序盤から名前出てるのにメッセージウィンドウでは最後まで「黒服A」とか不憫ダナー
そしてED終了後のエピローグでヘリからダイブして直接受け止めるとか無理すぎる!とか思ってたらヴィオレッタの舌打ちワロタ

モナ
コラングレイン籍がなく、結婚=さよならカフェ・ソレイユという設定のため、どう展開するのかが見えないので期待の√でした。
説教好きorテンションが高い系の幼馴染ってのは、声優次第では果てしなくウザさを感じるところですが、夏野こおりさんのためその辺も問題なし。グリザイアの果実の時にも思ったけど、ホントこの人同じキャラクターでも年齢ごとに演じ分けるのとかうまいですね。
モナ√は全般的にモナの心理的葛藤というか、心の中で征斗ラブだったり、一人で部屋にいるときに色々とかわいすぎる。
というか、元気系幼馴染ってデレるまでひたすら素直じゃないタイプが多いし、モナーも征斗の前ではその傾向があるんだけど、モナ一人のときとか女子同士の会話のシーンで気持ち出しまくってるせいで不快感がほぼないのが良い感じです。
しかし、モナ√は表向きヴィオレッタの婚約者として振舞わなきゃいけないのに後半は露骨に見え見えすぎて、約束完全に忘れてるよなぁ

ラストデュエルは、モナvs征斗 武器がチャンバラ用の剣だし、実質は剣の勝負というより征斗とモナの気持ちのぶつけあいで、これまででは一番盛り上がらないデュエルだった。

椿
声優がピカリンというだけでエロ期待が高くなる椿姫√、前3√でその正体と目的はすでにわかってしまうので、最初に攻略するのがいいかもしれないと後で思いました。
個別序盤から結婚準備に入るという他√に比べて順風満帆系な進行を見せているとこですが、デュークとの密会(?)のシーンあたりから徐々に山場…としたかったんだろうけど、正直ネタが読め過ぎてあんまり山場にはならなかったかも。とりあえず新聞部、というか千代子がウザすぎる。
そのデュークだけど、案の定征斗と椿の交際を知って反対に…というのは予想通りなのだが、態度の急変といい、その直後の椿との会話といい共通√での颯爽としていた空気感の欠片もない。
ここまで順調一遍できていた√だけに、デュークがウザく見えるのはこの急変にあるのでしょうね。
そして、最後のデュエルへと物語は展開するのだけど、ヴィオレッタとの特訓の際に学校の道場に掲げられた「死して屍拾うものなし」に初めて気づいて微妙にツボった、学校の道場に掲げる言葉なのかコレw

ラストデュエルは、椿vs征斗 予想では征斗が勝利して、元サヤ的展開かと思ってたので、椿が勝利するとは思わなかった。
そして椿は正式に花京院の養子となって、コラングレイン籍がなくなり…?? これだけ征斗の問題がベースにありながら、それはないだろうJKと思いました。

ヒナ
最後に残った後輩の雛菊、舞台設定から見て一番ありえない選択であり、共通の流れからもどう考えても辿りつかなそうな√ではある。
何故かと言えば、征斗は根本的にコラングレイン籍の取得のための結婚を受け入れているし、そのために立候補しているヴィオレッタや椿の魅力を全く否定していない。
エーリカに関しては特に肯定的な発言がないまでも否定はしてないし、部外者感があるモナには幼馴染属性があって、生活環境からも身近にいるし展開そのものはまぁありえる。
でもヒナに関しては、生活環境や物語的にも征斗との接点が薄く、新聞部の先輩後輩という設定があるものの征斗自体が事実上の幽霊部員だけにここでも物語の発展性が薄い。
現にヒナ√に入る選択も、それ以前の他のキャラのフラグを潰しまくった結果、獅子王祭で何故かヒナを選択した場合に√突入という、流れの分かりにくい展開である。
とは言え、立ち絵では一番お気に入りキャラなので、気にせず進める方向でOK!
と思ってたら個別√に入って早々ヒナの母親の再婚から、ヒナにコラングレイン籍が舞い込んできて、遅れてきた候補になるという… なんという後付け感のある設定だ。
もはやおなじみの聖堂のひと夜は二人が小川に落ちたため、お約束の裸で暖めあう展開と流れるが、翌日朝の寝ぼけ顔のヒナがかわいすぎる!
その後ヒナとの登下校生活を経て、竜神パークでのデートとなるわけだが…やっぱり新聞部がウザい…
順調に順調な展開でどう山場を作るのかと思ってたら、まさかの兄弟ネタktkr!!
そして最終デュエルとなる決闘裁判によりこれを認めさせようというあたり、タイトルに見合う展開ともいえる。

ラストデュエルは ヒナvsヴィオレッタ 流石に剣技によるデュエルではなくチェスによるデュエルとなったが、元々のデュエルの性格を考えるとコレありなのかは疑問ではある。
デュエル直後のヴィオレッタのセリフに「…何ともしまらないラストだな」とあるが、ヒナ√をラストに選んだ結果で見ると妙にこのセリフがしっくりきた(台詞はデュエル直後のヒナの鼻血に対するもの)。

以下、点数内訳
【シナリオ】27/35
デュエルという要素を取り入れるためのコラングレインという国の設定はまぁ良しとしつつも結局のところデュエルの解釈が大らかすぎるのがマイナスですね。
騎士団から発祥したデュエルとして、特に共通√でのデュエルの扱いから見るともう少し厳格なものの方が物語に一本の筋が通ったと思う。
最もそうするとヒナ√な無くなりかねないので悩ましいところではあるけど…
共通√内での選択肢とのその後の征斗の内心が微妙に一致しないところなどはちょっとマイナスであるが、全体としては王道萌えゲとしては及第点です。
夏ノ雨のときもそうでしたが、前評判でそんなに過剰な注目がない中で以外に良かったという意味での良作って気がします。
私は夏ノ雨が好きだったので本作を購入したクチですが、それ並みの期待にはこたえてくれたと思います。

【原画・塗り等】30/35
原画はお二人いるようですが、顎のライン辺りで担当が分かりますねwどっちもいい感じですが、
今回は特にヒナ・ヴィオレッタが立ち絵・一枚絵を併せて好みでした。
ただ、乳がちょっとデカすぎるかも… というのもあり、本作ではヒナが一番好みにヒットしたのです。
前髪が目に掛る部分の透過処理とか、細かいところに仕事が入っているのは良かった半面、7章で森に入る征斗にアルマンが仕込み杖を渡した直後のアルマン立ち絵がまだ杖を持っていたりした部分に一部マイナスがありました。
まぁこれは絵の問題ではありませんがw

【音楽・歌・ボイス・ムービー】16/20
OP・ED曲ともにDucaというのは、まさに俺得状態でgoodです。特にOPの「snow wish」が良かったです。
BGMは36、少ない方に入るかもしれないですね、デュエル中の戦闘曲にそんなに外れがなかったのでとりあえず良しってことで。

【システム】4/10
システム周りはちょっと厳しいですね、設定できる項目が少なすぎるし、本作の一枚絵のいくつかはウィンドウ透過度を変更できないのがかなり痛い面がありました。
レジストリを直接変更することで設定可能とは言え、この辺は今後なんとかしてほしいところです。
またクリック時のボイスカット設定など、昨今の他作品でのシステム環境一般を見るとちょっと厳しい点数を付けざるを得ないです。
セーブは90か所+オート5、クイック5、ちょうどいいぐらいかと思います。

【総評】
個人的には1月に黙ムコに騙された分がこれで補填された気もするし、3/28発売予定の新作が軒並み4月下旬以降に延期されたという状況にも助けられた点はありました。
ベタと言えばベタな面が多いながらも、デュエルという設定を活かしつつ全体的にはまとめることができているので、買って損はない作品だと思います。
特に私と同じように黙ムコにやられた人にはおススメしますw
ブランド処女作でのあるので、今後に期待したいです。