CS版プレイ・未プレイで評価が分かれる(7/4修正)
本作は1999年発売のPS用ソフトのリメイク作品です。
リメイクの特徴として、PS版開発時に当初のシナリオ構想(通称「玉藻前構想」)がソニーの検…ゲフンゲフン、諸事情により、かぐや姫をモチーフにしたシナリオに差し替えられたという経緯があります。
その元々の構想に立ち戻って、改めてリメイクしたのが本作になっています。
去る2010年の1月にXUSEホームページにリメイクのバナーが出ているのを発見して、さらにはFOGの掲示板で元シナリオライターの方が心の内をぶっちゃけてしまうなどのイベントから始まり、約1年半を経てようやく完成してくれました。
当然リメイク作品なので、前と何が違うのか?ということがあるのでまとめてみると…
【シナリオ】
原作 かぐや姫物語をベースに平安、元禄、幕末、現代の4時代
シナリオは平安・現代を加藤氏、元禄・幕末を小林氏が担当
新作 玉藻前構想によるシナリオの採用により、神代、平安、元禄、昭和、現代の5時代
神代からの流れを汲むシナリオの採用で平安は書き直しになり、また、1月騒動により、小林氏の担当分のキャラなどが使用できなくなるという事情が発生し、元禄は時代は同じでも書き直し幕末の代わりに昭和を採用することに
【原画・絵】
原作 岸上大作氏
新作 TEAM KUON(作画監督:まさはる氏)
基本的には原作の原画を活かして、新規分も同じタッチで作画されています。
【BGM】
原作 風水嵯峨氏
新作 風水嵯峨氏、蔦石奈耶氏
久遠の絆といえば、風水氏のBGMの雰囲気がとても良かったのですが、残念ながら氏が既にお亡くなりになっているので旧作の音楽を採用して、新規曲は蔦石奈耶氏が作曲されているようです。
本作は、CS版プレイ済みの原作からのファンと新規の方とでイメージが大分変ると思いますので、先にCS版未プレイの方向け&ネタバレ少なめでの感想から
リメイクに当たり、原作シナリオライターの1人がエロゲ化に反対し、その部分が使用できなくなったなどの事情を見ると、シナリオやばそうな臭いが漂いますが、執筆しているのは原作のライターである加藤氏ですし、構想も元々あったものを復活させるものだったということで、CS開発時に急遽差し替えられたかぐや姫物語よりも練られている…はず?
と感じてプレイしてみましたが、確かに「玉藻前構想」の中心になる神代~平安については、尺も長くいい感じだと思いますが、その半面差替えられた元禄や昭和はかなり短めな印象です。
プレイ時間は最初の1周目で約20時間、2週目以降はスキップを使えるのでそこまではかかりませんが、プレイ時間は長めなので、時間のあるときにゆっくりやりたいですね。
また18禁化することに伴い、エロシーンが追加されることになりましたが、旧作はCS版ということで事後シーンがあったり、元禄時代はヒロインが吉原の遊女という設定があったので、ことさらリメイク18禁化でエロ化したというより、元々そのようなシナリオだったと言えます。
とりあえず結論から言うと
「そんなに数多くないし、抜きゲーじゃないから物語上のエロが中心だけど、あればあるでいい感じ」な仕上がりでした。
スカだのグロだのはありませんので、その辺も問題ありません。
原作の原画を担当されていた岸上氏について、所属会社の問題か今の活動状況の問題か、リメイクにあたって参加できないことが最初から判明していました。
久遠の絆の絵はいわゆる萌え絵ではないので、昨今の絵師でその雰囲気を出せるのかという議論がありましたが、結局原作絵の流用+同じタッチの絵をTEAM KUONが描くという発表があり、TEAM KUONは特定の誰かということではなく、旧作絵の雰囲気を継承することになりました。
絵の感じからして、XUSEのまさはる氏が描いてるのかな~という気はしますが、結論的には旧作の雰囲気をそこそこ継承できているし、全く別の絵師になるより良かったんじゃないかと思います。
ただし、CS版で仕様したイベント画などをがんばって流用している部分では、逆に新規絵と合わない部分は確かに出てきてしまっています。
CS版未プレイの方は一部原画に違和感を感じる点があると思います。
また、背景についても原作背景を使用しているので、ちょっと古い感じはします。原作プレイしてる人は見慣れてるでしょうけど、新規の方にはちょっと古い感じがするかもしれないです。
BGM関連は元々いい曲がそろっていた原作の曲を使用しているので、基本的には問題ないです。鳶石氏の新曲も雰囲気を合わせてあるので、良かったと思います。
ただし、元々のOP・ED曲が良かったものをそのまま使用しているため、OP・EDともに歌はありません。もちろん挿入歌もありません。
久遠の絆は、所謂「転生モノ」ですが、原作が12年前とは言え当時は評価の高かった名作のリメイクでもあり、今回のリメイクに当たって、原画、音楽、シナリオなどを原作の雰囲気をとても大事にして作られてます。
そのため、シナリオ、原画、BGMとそれぞれに難点がありながらも全体としてはいい感じに仕上がっていると思います。
粗を探そうと思えば、いくつか上がってきますが、私は敢えてそれを差し置いても、このゲームはプレイする価値があると思います。
ただし、このゲームは所謂萌えゲー・抜きゲーではないので、シナリオを楽しみたい人におススメです。
ここから先は、ネタバレありの感想です。未プレイの方はご覧にならない方が良いです。
今回のリメイクにあたって、玉藻前構想を持ち出すのが加藤氏の参加条件だったようですが、流石に神代・平安はそれに見合うように作りこまれているし、新規キャラの追加もありました。
でも元禄と、幕末の代わりになった昭和については、尺の短さもあってちょっとやっつけ感が出てしまった感じですね。
第三章現代は分岐によりプレイ時間が異なってくるので省略するとしても、それ以外のプレイ時間を見ると
第一章現代 約2時間
第一章平安 約8時間
第一章神代 約2時間(2週目以降解放)
第二章現代 約1.5時間
第二章元禄 約2.5時間
第三章昭和 約1.5時間
物語の軸になるのが平安なのは確かなので他の時代より長いのは良いんですが、流石に他の時代の3倍近くあるとは予想外でした。
また、原作のイベント絵を使いたかったからなのかわかりませんが、場面のつなぎに疑問が残ることがそこそこありました。
例えば、平安の終盤で、羅生門での戦いで子・雅仁は火の中に残り、寿子も神剣を胸に抱きながら重仁に看取られてるはずなのにラストバトル後の顛末の中では史実に合わせてあるのか、しっかりと生きてたりしました。
神代では玉葉と武日照の泉のシーンの絵と事後の原作絵の差が半端ないし、そもそも原作事後は蛍の髪型なので、玉葉の髪型とあってないとか、この辺は特に目立つ所でした。
エロについては、私は抜きゲー以外のエロゲのエロは雰囲気とシチュがシナリオの中でうまく合ってるかを重視してます。
その意味では、真言立川流の儀式に偏重しがちだったとは言え、悪くはなかったと思います。
ただし、一部のアンチ凌辱に配慮したのかどうかは知りませんが、第一章平安の「狐対鵺」で連念の玉藻前レイプの可能性が、原作の道満対蛍のシーンと比較して選択肢ごとカットされているのはちょっと残念でしたね。
ここは原作でも一番その流れが見えるシーンだっただけに、選択肢+BADEND直行のレイプがあってもおかしくなかった。
あとは、心操術にかかった鳥羽院の妄想が何故ないんだ!! 身もだえる鳥羽院の台詞だけとは…そりゃないだろJK
宣耀殿の乱交妄想シーンや、元禄の由布レイプも入れてるんだからもう一声欲しかったです。
色々とマイナスな点を上げはしましたが、全体の印象は、CS版がある意味うまくまとまっちゃってることと、リメイクに当たって旧作の要素を無理に取り込んだ部分のチグハグさがでていることもあるので、CS版に比べると全体の完成度は少し落ちるとは思いますが、それでも十分以上の良作だと思います。
CVについては、発表の段階では万葉にあうのか疑問だった一色さんがORIGINの万葉としては合ってたと思います。
とは言え、CS版に声を…と考えると未だに一色さんは疑問ですがw
それ以外もメインヒロイン達は、無難すぎるベテランを選んでるだけあって、みんな合ってたと思います。
ただ、唯一残念だったのは絵理役の佐々留美子さんですが、声質が第二章現代(後半)の対決→死亡のシーンに致命的にあってなかったと思います。
男性陣は、演技的には幹久が微妙な感じでしたが、全体的には悪くない感じでした。ただ、みんな声がおっさんすぐるw
以下、点数内訳
【シナリオ】28/35
各章の尺のバランス、一部の設定の不整合などはありますが、元になるプロットは流石に名作のリメイクと言える仕上がりだと思います。
かぐや姫版のCSとは別物と言っていいものですし、完成度は一歩譲るものの久々に良いシナリオゲーだと思います。
だが、何故万葉Trueが削られたのだorz
【原画・塗り等】29/35
CS原画の雰囲気を大切にした、心意気を大きく買います。
新規絵の感じを見ると全部新規で書き直した方がバランス的には良かったのかもしれませんが、いくつかのイベント絵は原作絵を使用したことで、これが久遠の絆なんだということをきっちり認識できたので良かったです。
お気に入りの原作絵は、True ENDの石舞台のシーンの万葉絵と万葉√の太祖戦終了後、消えゆく万葉との別れの絵の2枚は特に好きです。
【音楽・歌・ボイス・ムービー】17/20
久遠の絆と言えば、美しいBGMは外せない。原作から再収録した風水氏のBGMは言うまでもないですが、鳶石氏の新規曲も雰囲気にはあってて良かったと思います。
流石にOPムービーはちょっと古い感じがしたのと、背景絵が原作背景と新規背景で差が大きかったのはちょっとマイナスですね。
【システム】7/10
セーブ50か所は勘弁してください。最低100、できれば200ほしかった。
あとは、「前の選択肢に戻る」があるなら「次の選択肢(又は未読)へ飛ぶ」が欲しかったかも
【総評】
発表から1年半、工作板・公式を追いかけてきたので色々と想いはありますが、結論的にはいいリメイクだったと思います。
このゲームだけはFDが想像できないのですが、初回版SPの転生彩画帳のインタビューなんかに書かれてると期待しちゃうじゃないか!
とりあえず発売日から通しでプレイし続けてきましたので、まとまりのないレビューですが、細かくはまた落ち着いたら補記・修正したいと思います。
(7/4追記)
万葉(初回)→万葉→TRUE→栞→沙夜とプレイした後で、全クリから改めて万葉√とTRUEをプレイしましたが、やはりCS版の万葉TRUEがないというのは、原作ファンには痛いですね。
特に今作でも万葉√には、太祖戦後の別れのシーンがありますし(私は「清水回廊」と並んでこのシーンが原作では1・2を争うほど好きでした)、あそこで、万葉を取り戻すために黄泉へ武が乗り込んでいくところが見たかったです。
俺たちの戦いはこれからだ!ばりに後引き見せられてもモヤモヤが溜まりまくって折角の今作のTRUEを素直に喜べない。
多分、長い久遠の絆の物語を見ている中で、自分を武に重ね合わせて感情移入していればいるほど、自分視点で万葉を救いたいという想いが募り、逆に万葉達に救われるという今作のTRUEがしっくりこない気がするのではないかと思いました。
THE ORIGINとしては蛇足なのは承知の上ですが、今後FDが出るならば、ORIGIN本体へのアペンドとして、万葉√の続きを入れてほしいと思います。
そういえば、思い出しましたが、CS版をプレイしているときは、太祖戦の後、万葉が黄泉に落ちたら武もすぐに黄泉へ追いかけたと思うんですが、黄泉の万葉がいきなりアレになってたので、「なんでいきなりミ○ラ!?」と思った記憶があります。
私が設定抑えてないだけかもしれませんが、個人的には今作万葉√の最後のように脱出してから改めて万葉を探す旅(?)に出て、黄泉へ辿りつく展開の方が時間的にはしっくりくる気がしました。
だからというわけではありませんが、頼むから万葉√の続きください!! あの別れのシーンの万葉の告白を聴いて、そのままで終わるとかTRUEがどうとか別にして耐えられないです><
あ、だからといって本作がおかしいとか、〆がなってないとかそんなふうに思っているわけではありません。アレはアレでいいと思うんですが、それでもね…という思いがあるだけです。
粗を探せば勿論色々とありますが、CS版とは別作品として評価する分には良い作品だというと思いは変わりません。
頼むよFD、ブレザースリーもデロスランドも削ってるし、本編で各ヒロイン現代のエロも薄かったし、FD出す要素はいっぱいあるんですから…
期待して待っています。