完成度の高い同人ゲーム。細かいところに気を配っている。
コスパを考えると信じられないほどの完成度。一枚絵の多さもさることながら、BGM、挿入歌やEDの豊富さにも舌を巻く。フリー素材だろうが、背景の枚数が多いことも非常に好印象だった。 絵に関しては、画風として好きかと言われればそこまででもないのだけれど、量も考えると、同人商業にかかわらず、十分である。公式サイトの絵をみて、ビリビリくるような方はエッチシーンも含めて確実に楽しめると思われる。また、立ち絵の演出が素晴らしい。それぞれが向き合うようなかたちや身長差を考えた配置は一枚絵を見ているようで気持ちよく、文字だけをおいがちになるデジタルノベル式のゲームでこのように画面に注目させる工夫ができるのはとても良い。ラストの戦闘シーンの演出も良く、文章との融和がうまくできていた。CGの使いまわしは確かに存在するものの、少しずつ変化を加えることで飽きさせることはなかった。というか一般で公開されているUIでこれほどまでに演出に凝れるのだな、と感心した。
プロット、ストーリーについてはそこまで凝っているものではないし、人によっては超展開気味な話についていけなくなるかもしれない。その点は確かに認めざるを得ないが、それを補ってまでの演出とラストの最大風速であったため、そこまでマイナスとは考えなかった。ハリウッド映画などで、ストーリーは薄っぺらいけど、CGや演出で魅せまくるというものがよくあるが、それをノベルゲームで行ってしまったという点に凄さを感じた。世界観は良く練られているため、もっとストーリーを掘り下げ、ボリュームも増やせば文句はなかった。
本作は選択肢の存在しないデジタルノベル風のゲームだが、日記や手紙などを本編とは違ったところで見せる最低限のゲーム性も存在していた。そこらへんの細かい配慮や演出が本作を楽しめた最大の要因だろう。