オリジナリティは至高の価値
ただでさえ独自路線を走るTOPCATであるが、その中でも際立って異色のタイトルである。
この独自性はなんとも表現しがたい。雰囲気ゲーと言ってしまえばそれまでであるが、それだけでは終わらせない思想が存在している。
シナリオの部分的な破綻(正確に言えば跳躍性)についても故意によるものではないのかと思わせるものがある。
全体がエレクトロニカのような浮遊性で満ちているので、確かに過度に補足するような描写等は蛇足だったのであろう。
これらの破綻性は例えるならグリッチ感として機能しており、全体に緊張感を持たせるための貴重なアクセントとなっている。
音楽も素晴らしい。何が素晴らしいのかというと、何よりも音楽に頼らない点である。
メロディを多用せず、コードとテクスチャをメインとする音源構成は実にミニマムである。このストイックさはシナリオに確実にフィットしている。
キャラクターデザインでまず敬遠されてしまうことが多いと思われるが、内容も然りと言えよう。
独自性に満ちた超個性派タイトル、デビューユーザーにはお勧めしない。
これは余談であるが、手毬花の花言葉は「約束を守る」「華やかな恋」、そして「天国」というものも含まれているようである。
これを作中の内容と絡めると様々な要素が見えてきて面白い。
私たちが本来「手毬花」としてイメージするのはアジサイであろう。このアジサイというものは言うまでも無く梅雨の花である。
ところが、作中において『雨』とは絶対的にタブーとされている禁忌である。この部分を掛けているのは偶然ではないだろう。
この矛盾を考えると、エンディングにおいて現実への帰還が重視されていることにも納得のいくところである。
タイトルにおいて天国を提示しておきながら、シナリオにおいてはその絶対性を見事に打ち消している。
群雲学園はどこまでいっても仮初の宿に過ぎず、モラトリアムを許さない強さを教える学校なのである。