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bichigusoさんの蒼の彼方のフォーリズム Perfect Editionの長文感想

ユーザー
bichiguso
ゲーム
蒼の彼方のフォーリズム Perfect Edition
ブランド
sprite
得点
62

一言コメント

『恋チョコ』からの方向転換は当たり

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

が、エロに手を抜きすぎているため点数は低くなる。
H2回っていつの時代のゲームのつもりか。
しかも体操服(ブルマ)や水着でのHはなく、FCユニフォームですら莉佳が1回だけ。
少しでもわかっているメーカーならそこは絶対外さないはず。
挫折した元天才の主人公が男女混合競技でヒロインのコーチになるという設定は『ワルロマ』に似ているが、エロゲたる部分では圧倒的に負けている。
非18禁版の追加シーンが入っているらしくただでさえ冗長になっている上に、それらしい雰囲気になっても何もせず終わるのが更にストレス溜まる。
みさきルートだけ点数が突出しているのはH5回の影響が大。
他のルートでも本番1回ごとに+5点してもいいくらい。
長ったらしいピロートークなんかどうでもいいからもう一回戦しろと。
いいところの声優集めているのに宝の持ち腐れ。
みさき以外もH2回追加してから完全版を名乗るがいい。

FCのルールが理解しやすいため、話に入りやすい。
だが競技中にわざわざ「行きます」なんて口に出して相手にタイミングを知らせるのはどうかと。
特に背後から仕掛けようという時に言うのは間抜けの一言。
それも含めての三味線が一つの戦法になっているかもしれないが。
FCで男女の有利不利はないという説明だったが、競技の性質としてはそうでも生理で体調や精神バランスを崩しやすい女子の方が大変なのは疑いようもない。
作中の女子選手はそんな素振りは1mmも見せはしないけども。
後は骨密度が低くなりそうなスポーツだな、と。
陸トレも欠かさないように。
乳酸を悪玉扱いしているのは書かれた年を考えるとしょうがないが、古臭さが否めない。

ストーリーは突き抜けて面白いわけではないが、所々で心が熱くなる瞬間があった。
特に青柳部長絡みが多い。
目立たないが作品を支えてくれた名脇役だった。

明日香以外のヒロインは共通ルート時点では主人公にデレておらず、その分個別ルートに入ってから恋人になるまでが長い。
また3人揃って厄介(面倒)な性格をしており、分岐前は落としたいという意欲があまり湧いてこない。
それは個別ルートでギャップ萌えとなって返ってくるので良し悪しではある。

システム面で改善して欲しいのは2点。
最初の選択肢から分岐確定するまでそれなりに長いので、シーンスキップや章スキップなどがあればプレイが楽になる。
それと頭の悪いオートモードが使いづらい。
文章は一括表示で、1文字あたりの待ち時間を設定する仕様にしてくれないと。

・共通ルート
出来てから10年そこそこのスポーツで20年に1人の逸材とか言っちゃう葵は只者ではない。
最初は丁寧に停留所で離着陸していたのが、話が進むと自由に飛んでいるように見える。
把握していないルールがあるのか、書く人がめんどくさくなってしまったか。
我如古繭の声を聞いた途端に嫌悪感が駆け巡りボイスオフ。
『ガンナイトガール』の荒川教官/イレブンが頭によぎったので同一人物かもしれない。
どんなに細やかな片鱗でも、嫌いな物には敏感になるものだ。
単に嗜好の問題であって声優が悪いわけではないが、プレイ記録として書き残しておく。
出番が少ない脇役で助かった。(これは本作の車の人にも言える)

・莉佳 53点
鍋を持ち両手が塞がっている状態で、どうやってドアチャイムを鳴らしているのか。
キャラ的に一旦鍋を地面に置いたりはしないだろう。アゴ?
肉好き女は体臭が気になる。
ワキガかどうかはわからないが、少なくともウンコは激臭で固くて真っ黒だろう。
ところで片方がグラシュの機能を停止した様子もなく空中で肉体的接触が出来ているのは何故か。
背中に手を添えながらの指導からの手繋ぎ飛行からのキス、共通ルートで学習したことと違う。
ストーリーに話を移すと、ボスキャラがイマイチであり決着も弱い。
ルール破りする相手には、そんな小細工は通用しないと真っ向から力で叩き伏せる展開が好み。
精神攻撃で改心させても達成感が薄い。
後から考えれば、才能を前に絶望した主人公やみさきがそれでもFCを続けた姿の一つが黒渕霞であったのか。
話に入り込めなかった理由は他にもあって(というかこちらが主)、中々セックスしないのでまさか1回だけじゃないよな、2回だけじゃないよな、とずっと不安が付きまとっていたため集中出来ず。
さすがにエピローグには3回目があるだろうという希望も打ち砕かれ、そっち方面はやる気がないことが判明し、本作の評価は最初にプレイしたこのルートで大方決まってしまった。

・真白 51点
ギャグテイストが濃い。
何も起こらないのに7章がめっちゃ長い。
友達であり手頃な対戦相手である虎魚と試合をしない、同級生の保坂とも絡まない、一目置かれた佐藤院との因縁もない、視力が悪くドッグファイトに不利という設定はスピーダーに転向後は使われない。
その辺りの要素を拾わず、ルートの骨子はみさきを部に戻すという一点。(+主人公とくっつくまでのグダグダ)
わかりやすさという意味ではいいのだが、ボリューム稼ぎの贅肉の部分が目立つしょーもない話。
本作で一番退屈なルートだった。

・みさき 81点
みさきのような"腫れ物ヒロイン"は苦手で、みさきのせいでFC部も雰囲気が良いとは言えなかったが個別ルートでは別人。
「今日は練習来るだろうか」「FC辞めると言い出さないだろうか」と顔色を伺う必要がなくなるのはありがたい。
少人数の部活でこういう部員がいると本当士気下がるからね。
スポーツ特待生というわけでもなし、スパッと辞めてくれた方がお互いのため。
それはともあれ、告白シーンの「助けてくれ」はとても印象に残る場面だった。
舐めプしてる乾を出し抜く形で真の実力を発揮させないまま勝利したのは不完全燃焼ではあるが、ボスが被っても面白くないのでやむなしか。
とか言いつつ明日香との対決内容は勝ったこと以外もう覚えていない。
Hシーンが多かった、重要なのはそこ。
そのためにエロゲやってるんだから。
タイプキャストであれば、明日香とみさきの声は逆になっていたかもしれない。
しかし本作のキャスティングは、飄々とした言動の裏にあるみさきの弱さや繊細さを表現出来ていてハマっていたと思う。

・明日香 63点
最も好きなヒロインは明日香。
それだけに中途半端でスッキリしないのが惜しい。
イリーナの姉さまって誰?意見の対立とは?どうやってアヴァロン社に重用されるようになった?結局何を目的としているのか?
FC界を一手に牛耳りたいアヴァロン社と利害が一致して手を組んでいるのだろうという想像は出来るが、「FCを変える」という手段が成ったとき、イリーナは何を果たせるのだろう。
金が欲しい・有名になりたい・偉くなりたいという功名心ではないと思うし、もしそうだとしたら本作最強の敵としてはあまりにスケールが小さい。
掘り下げるためにイリーナの過去話が必要なのに、語られる内容はあまりに断片的で「姉を見返したい」程度しか読み取ることが出来ない。
敵方の負けられない理由がはっきりしていれば、試合がよりスリリングで面白くなる。

主人公側も、幼少の頃二人が出会っているという設定が機能しきれていない。
お互いに"あの時の相手"だと認識して現在に繋げなければ意味がない。
その当時のことと今恋人として成立していることは完全に切り離されていて、じゃあ昔会っていた設定っているか?という話になる。
小道具を使ってプレイヤーにはわかるように匂わせているが、そもそも冒頭で声出して誰だかわかっているので無意味。
ともかく物語の一番最初に持ってきた重要部分を未消化というのは腑に落ちない。
最終戦は緻密さが足りないと感じる微妙なところがいくつか。
まずイリーナが乾に「バードケージ・バージョン2です」という指示を出すと、味方勢は"バージョン2"とは何か想像して様々な反応をする。
……お前らそれ盗み聞きと違うんか?イリーナそんな大声で言ってるか?
外野はまあしょうがないとしても、対戦相手セコンドの主人公は駄目だろう。
セコンド同士の距離、セコンドと観客の距離の規定がないのだろうか。(佐藤院とセコンドしている同士でルールの会話をした記憶があるが詳しく覚えていない)
プロリーグがある競技でスパイし放題のルールはないわ。
次に、欧州トップクラスの3人相手に特訓していた乾がペンタグラムフォースをはじめとする技で翻弄されていた場面。
その3人まとめてより明日香1人の方が強いというパワーバランスの崩壊で、試合を真面目に捉えるのがバカらしくなった。
最後は、真白がバランサーを入れ忘れたくだりが1回だけならピュッホドジっ子エピソードとして紛れたかもしれないが、2回目で「あ、これバランサー切って戦うな」とその時気付いてしまった。
伏線としてはミエミエで、逆転劇の意外性がなかった。
まあ実際使うまでは、危険飛行としてレギュレーション違反になるのかもしれないという考えもあったが。

FINALEは、4ヒロインの誰も特別扱いせずコーチしていたという状況からノーマルエンドの続きと考えていいだろうか。
葵への恋心のくだりは要らない。
あれのせいでしまりが悪くなってしまった。
いや無くても変わらないか?
主人公が選手に復帰したから葵も救われたというのを見せたかったのであれば他のルートでも自動的にそうなっているわけで、グランドフィナーレ感が薄い。
師弟関係のピリオドという体だろうか。
それが作品の主題というわけではなかっただけに、やはり蛇足感は否めない。