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bichigusoさんの運命線上のφの長文感想

ユーザー
bichiguso
ゲーム
運命線上のφ
ブランド
Lump of Sugar
得点
68

一言コメント

「楽しいゲームを作って遊んで貰おう」というより、「楽しくゲームを作りながら遊んでしまおう」

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

出来るだけ事前情報を入れないでプレイするので、最初は世界観が把握出来ないところがあった。
カレイドバニーのラジコンロボット説でまず引っかかり(超速で精密動作する人型ロボットの技術を誰も無理だと思わない)、モルダー捜査官似の警察官がオカルトに傾倒しており、言霊という超能力の存在で大体傾向が掴めた。
そこからは剣豪編の前半(学校の真似事)以外は面白かったし、バッドEDが多いゲームは好きだし、エロもランプにしては多めで嬉しいし。
さて4人クリアしていよいよ謎を解き明かすまとめルートかと思いきや、ケムコの移植版『悪魔の招待状』パロディで〆
いやいやこれグランドルートが欲しいタイプのゲームでしょう。
何故"言霊"が生まれたのか、主人公が4つの異なる人生を歩んでいるのはどうしてなのか、リーニャの本当の能力は何か、本作のシステムと絡めて説明してくれると期待してたわけですよ。
システムとストーリーが融合して面白さへと昇華していた『マジチャ』の感動を再び、とね。

探偵編と剣豪編は、5年前そこにいた主人公・凪咲・久遠母・紫乃の記憶が"凪咲と久遠母"の繋がり以外鎖された同一の過去と考えることが出来た。
剣豪編の瑩山が言っていた「招待状を持たない主人公がどうやって島に来たのかわからない、特殊な例だった」というのは凪咲との約束を守るための嘘だろう。
旅情編も、記憶を失った主人公が欧州へ流れていったその後だと考えられなくもない。
しかし執事編だけは凪咲を知らない父親の存在があり、どうしても繋がらない。
この辺りどうまとめてくるのだろうと楽しみにしていたのだが、単なるパラレルストーリーだったのいうのは大きな肩透かしだった。
ここまで作ったのだから、一本筋が通る話でピシッと締めなかったのが勿体ない。

オマケで立ち絵鑑賞モードはあるが、ポーズが限定されているし本編で使われた裸立ち絵も入っていない、本作を象徴するような中途半端さ。
立ち絵といえばななろば華氏の水着立ち絵の下半身がヤバい。
小学生の女の子が書いた漫画の絵みたいだよ。
あゆや氏は少々野暮ったいがまだマシ。
萌木原氏は勿論問題ない。

総評として、紙芝居ゲームの可能性模索とタブレットの特性を生かして何か作れないかという挑戦的な面が見えるがアイデア先行で、色々詰め込んだはいいがとっちらかってまとまりに欠けてしまった。
まあ少なくとも、いつまでも過去作の栄光を追いかけて二匹目のドジョウを望んでいる自分のようなユーザーの依存心を"斬"ることには成功した。
新しい物を受け入れようというメーカーからのメッセージだったのかもしれない。