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bichigusoさんのLOVESICK PUPPIES -僕らは恋するために生まれてきた-の長文感想

ユーザー
bichiguso
ゲーム
LOVESICK PUPPIES -僕らは恋するために生まれてきた-
ブランド
COSMIC CUTE
得点
63

一言コメント

ジグザグ青春ロード

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

↑OPソング"Happy! Puppy!"とターボレンジャーEDのイントロがそっくりというだけの話。
実際青春してるけどスカッとしてない、じめっとしてる。
シリアスとまでは言わないが、全体的な雰囲気が"真面目"すぎて固い。
もっとインスタントにイチャラブだけを期待していたので、その他の部分が不純物に感じた。
ハッキリ言って期待外れのため感想は不満が主な内容になるが、60点台は佳作評価の域だし『WLO』よりも高得点である。
関係ないが最先端PDAフル活用とか2003年に企画したのかと思ってしまった。
ソラリスが主人公のPDAにだけインストールされた理由と目的、仕掛け人など回収して欲しいことが放置だったのは残念。

まず共通は相変わらず掴みが弱くて面白くないし暗い。
『家族計画』みたいに傷付いた負け犬が寄り集まって生活するのかと思っていたが、該当するのは織衣とまるなのみ。
『WLO』で反省したのかサブキャラのエピソードを入れてこないので長さは常識の範疇。
ヒロイン全員揃って表面上ようやく仲良くなったと思ったところで個別へ分岐するので楽しい同居生活の雰囲気は味わえなかった。
個別ルートは付き合うまでが冗長、イチャラブは量が不足しているが瞬間最大風速があるので及第点、しかし基本的に〆がお粗末。

『WLO』ではWLOの指導する内容だけが唯一絶対の恋愛真理であると主人公にダメ出しを続けるところがかなり不快だったのだが、本作もまた別方向で説教臭い。
主人公母の朝ごはんだけは必ず全員顔を会わせなければいけないとか、生徒会長が織衣に対して紅茶になぞらえて語るとかサブキャラまで一々説教臭い。

主人公は自立していて黒田祐樹とは全然違うタイプ。
良い言い方をすれば言葉を尽くす、悪い言い方をすれば口先の男。
相手を説得や納得させるためにとにかく言葉で畳みかける。
「恥ずかしいことを言ってる」自覚はあるようだがペラペラとその口は止まらない。
俺の/お前のわがままがどうとか会話がねちっこい、ごちゃごちゃうるさい。
あと共同生活してる風呂場でセックスするとか管理人が聞いて呆れるわ。
恋人出来る前は風呂入る順番すら異常に気を遣ってた癖に。
こればっかりは妹がキレてもいい。
一番気になる部分は、飴をいきなり人の口に入れるのマジでやめろ。
ビックリして息吸った拍子に気道に詰まる可能性がある。
これがちょっと気の利いた行動みたいに描写されているのが嫌。
事故起こすまで危険性に気付かないんだろうな……。
主人公が叔父にボコボコにされた過去は鍛えてもらった思い出みたいに語っているが、怪我の程度が骨折やら靭帯断裂やら、紛う方なき児童虐待だろそれ。
後遺症が残らないように破壊したとでも言うつもりか。
連れまわして日本にいなかったぽいが、いたら普通に捕まる。
実親も知ってて知らぬフリしてたんだろう。(さすがの叔父も怪我させた報告はしてるだろうと信じたい)
まるなのとこより酷いかもしれんぞ。
それと主人公ではないが、同じくいい話にしようとしているのだろうがどこかズレているシーンがある。
灰皿一杯になるまで窓を閉めて煙草を吸っていたタクシーに風邪引いて瀕死のまるなを乗せる場面。
エアコンで外気と循環させていたとしても乗せたくないでしょう。
自分は安堂こたつ氏の感性とはどうも噛み合わないようだ。
氏がメインライターの作品は少なくとも暫くはやりたくない。

妹キャラウザいと思ったのは久しぶり。
最もなんだこいつと思ったのは、外見が気に入ったというだけで住んで欲しくないとソーニャに言う場面。
それ今までの入居者全員に試してるの?親戚の商売そうやって邪魔してるの?
そういうことを言う彩乃が好きだというソーニャの方が不自然で気になったが。
キャラが自分で喋っているのではなく、セリフを言わされてる感ね。

気に食わないのでレイプしたいのは千景と雛瀬。
和姦したいのはデコ会長です。
担任はセックスダイエットとか言えば簡単に騙してやれそう。

システム面。
まずオートが遅いのが不満。
基本ウェイト0.0ms、一文字あたり0.0msの速度でなければ最速設定の意味がない。
勝手にウェイト入れないでプレイヤーに選択させなさいよ。
選択肢間が長いのにスキップが遅いのも面倒くさい。
吉里吉里2には選択肢ジャンプ機能付いてるのに。
回想シーンにて、右クリックで終了になるのがイライラ。
本編中と操作感が変わるのも嫌だし、第一ショートカット設定で決められてるボタン無視するなって。
メッセージボックス消そうと思ったら選択画面に戻ってまたやり直しとかチンコ萎える。
そのHシーンは回数の多さで評価に加点したかったのだが、無能な働き者によって顔アップが多用されて(特に織衣のシーンで顕著)大変使いづらいのでプラマイゼロ。
モブ男女の音声振り分けがバラバラ。
それに集合音声は問答無用でその他男に分類されてる?
最後にContinue機能が半端な点。
QS→タイトルロード→スロット選択で3クリック。
セーブ→スロット選択→Continueで3クリック。
どちらも同じで手間が変わらない無意味機能になっている。
何もせずにゲーム終了してもそこからContinue出来る素晴らしいゲームもあるが、最低でもQSとContinueを紐づけて2クリックにしてこそ便利だと言えるのではないだろうか。

・まるな
映画館前で初めて見たとき目が4つに見えた光はなんだったのか。
まるな叔父の「顔に父親の面影があり見ていてイラつく」という言葉、実は本作で一番心に響いた台詞かもしれない。
イラつくというベクトルではないが気持ちはよくわかる。
問題は千景えもんが解決。
主人公達がまるなの父親も叔父も非難しないのが消化不良。
君たちないの義憤の念とかさ。
芸術家だから当然人間性はクズなんですという有無を言わさぬキャラ立てかもしれないけども。
まるなの問題だから本人が許したのであれば口出しするべきではない、というのであれば子供を捨てた母親を他人のまるなが叱るのも大きなお世話ということになる。

・勇
飄々としていてセルフコントロールに長けている棗が乱心という意味不明の終盤。
何がしたかったのかわからないし、あれで納得したのかもわからない。
強権発動して好き勝手していたのも、決闘イベントで悪役を演じるための役作りという苦しい言い訳を捏造。
茶番を演出するためだけに虐げられていたのか!?と、本当のことをバラす以上に評判悪くなること確実なんだが。
これは迷惑かけられた主人公の嫌がらせと見るべきか。
ともかく、裏工作が得意で千景レベルの策士という評価までされていた棗が、底が浅く感情的で小さな男というダメ人間に格下げされたルートであった。
勇自体は声が他の新鮮味のある人であれば身体つきのエロさだけで上位ヒロインに食い込めたと思うが……。

尤もここまでの二人は消化試合。
全く期待していなかったので問題ない。

・ソーニャ
家賃いくら払ってるんだろう。
織衣は半額にしてもらったがソーニャは通常価格だろうか。
それとも叔父の知り合いの娘だからタダなのか。
ずっと住んでる志穂は通常価格だろうから、どの道不公平感が出る。
ソーニャに後ろ暗いところがないので、その役を志穂が担う。
火のないところに煙を立てるイベントに白けた。
志穂の茶番受賞は誰も損してないと思うのだが、創作者でも表現者でもない自分には怒る気持ちが理解出来なかった。
矜持や尊厳は理屈としてはわからないでもないけど潔癖すぎないそれ?って。
確かに利用されたかもしれないが、金は入るし名は売れるし実績も付く。
作家としてのランクを上げるきっかけ・踏み台としては十分過ぎる。
虚を捨てて実を取る強かさもないからこれまで(恐らくこれからも)三流作家なのだというキャラ付けならブレてはいないのか。
周りの連中も志穂が傷付いているから悪いことだと怒るならわかるが、出来レース=悪事と短絡的に決め付けて反発する。
お前らクリエイターでもないのに本当に理解してるの?っていう。
雰囲気に流されてるだけちゃうんかいと。

事務所とソーニャの関係については描写が足りない。
情報が全くなかったため、ソーニャが学生だから顔出しをNGにして事務所が守ってくれているものだと思っていた。
ちゃんと所属タレントのプライベートのこと考えてるんだなって。
なのにその方針を敢えて足蹴にするのは「ムカついたから約束破って嫌がらせをする」という子供の反抗にしか見えなかった。
エピローグで"そういう契約であった"ことは語られるがそれだけでは片手落ち。
そもそも何故顔出しNGなのか、どんな事務所なのか事前にしっかり提示しておくべき。
ソーニャ側からのお願いなのか事務所から言い出したのか、事務所は覆面声優という売り出し方で将来にどんなビジョンを持っていたのか、そこまで書かなければ顔出しNGの強制力や禁を破ることに対する大事(おおごと)感が湧いてこない。
背景を描かずに、一側面のみで業界の闇だの大人は汚いだの批判めいた流れのシナリオが乗り切れなかった原因の一つ。
芸能界はドロドロした世界であくどい事務所相手に正義を貫いたという話で終わりたいのであれば、独立した葵に前の事務所から嫌がらせがひどいとか干されて大変だくらいは言わせないと。
仲違いして辞めた葵に何もしてないと考えると、別に向こうは悪じゃなかったのに空回りしてソーニャ・沙織・葵がクビになっただけという後味が残る。
本当はソーニャがゲーム屋で見たPVのようなエロゲの仕事が嫌だったから早く辞めたかったのかもしれないが。

・有希
髪型のせいだろうか地味でヒロインオーラを感じず、共通ルート途中まで非攻略対象のサブキャラかと思っていた。
個別入ってから10話までは要らない。
言ってみれば全ルートそうなのだが、このルートは特に延々と付き合わない言い訳をしていて非常にダレた。
12話まで作らなければいけないがカリユのことは共通でやってしまっているので尺稼ぎに苦労した印象。
主人公がペットロスの傷を未だに抱えているのは有希にしか関係ないのだから個別に回してしまった方が良かったと思う。
散々キスもセックスもしたくないと言っておきながら突然クルッと手のひら返したのは、モノローグで嘘吐かれていたような裏切り感がある。
付き合ってからは甘くていいのだけど、そこからが短い。
終盤はとっくにカタが付いている織衣の恋心を雛瀬によって蒸し返すなんて余程ネタがなかったんだろう。
最後の集合写真CGのクオリティが低い。
結んでないリボン無しの髪型の方が断然いいが織衣とイメージ被るからダメなんだろうか。
終わってみて改めて見てもやっぱりモブ顔で損している。

・織衣
"拒絶女とストーカー男"の構図がすっごい嫌い。
嫌な女と異常者の絡み見てて楽しいかね。
しかし最後に回したお陰で共通ルートからかなり時間が経っていることと、まるなと勇の後に飽きて暫く放置したのがプラスに作用して、そんな序盤のことはすっかり忘れて別人として向き合うことが出来た。
とはいえ期待通りそのままストレートに可愛いソーニャと違って、ギャップで可愛いのが織衣の売りであると思う。
滑舌の悪さがネックで好きになれるか不安だったが付き合ってからは一番良かった。
Hシーンも思ったよりちゃんと喘げている。(フェラは案の定ド下手だったが)
棗が副会長の方に立候補するというご都合や、怪文書の犯人に報復はすると言った主人公がむしろ手助けしてしまうという終盤のダメさはこのルートでも貫かれていた。
誰も可能性を与える/与えられたなどと言っていない、前提から素っ頓狂な織衣の演説もなんのことやら。
「あなたには可能性があります」てのは与えられたということになるらしい。
それただの曲解、あるいは言葉遊び。
能動的に自分を磨きましょうって後半部分だけで良かったのに。
「あなた達に可能性などありません」からの文化祭で選挙結果どうなったと興味を持続させる小細工使った挙句滑った感が恥ずかしい。